初秋の信州 海野宿2

続きです。

 国道18号線の「海野宿入口」という信号から山の方へ行くのかと思っていましたが、逆でした。千曲川の方向へ曲がってすぐの所にこの宿場がありました。

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 千曲川の上流小諸市方向。ゆるやかに蛇行しています。

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 下流上田市方向の流れです。ススキの穂がきらきらと光って見えました。

 千曲川の流れを見ているうちに、中学3年生の頃、担任の国語の先生にたくさんの詩を教えてもらったことがふつふつと蘇ってきました。中でも藤村の「初恋」「小諸なる古城のほとり」は初めて教えてもらった詩です。一生懸命暗記したのを覚えています。 教科書に出てくるものを丁寧に教えようというよりは、たぶん国語にもっと興味を持たせようというお考えがあったのだと思います。詩やリズムのある文章を教えてもらい、いい刺激となりました。その先生は、アラビア語を勉強していらしてその後まもなくイランへ留学してしまいました。

 年寄りは、思い出話が多くなって困ります。もう先が短くて過ぎ去った年月の方が長いので仕方のないことかと許してもらえればと思います。

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 南側から入るとすぐの所に「白鳥神社」があります。海野氏や真田氏にゆかりのある神社です。

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 「エンジュ」の大木です。神社にある樹としては珍しいと思いました。

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 こちらは御神木の「ケヤキ」です。樹齢は700年だそうです。

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 東側から見た街並み。

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 西側から見た街並み。

 用水が引かれ、東西650mが保存対象になっているようです。

 ご覧の通り、この日は平日でしたから、駐車場もガラガラでしたが通りを行き交う人の影がほとんど見当たりません。神社からすぐの右手に資料館がありましたが、お客さんが少ないので受付にいた女性はとても丁寧に案内してくれました。

 聞かせてもらった話を元にこの宿のことを簡単に紹介します。

 江戸時代三代将軍家光は、佐渡の金を江戸に運ばせるためにこの北国街道(ほっこくかいどう)の整備をさせたそうです。上田宿と隣の田中宿の間にできたのがこの海野宿だとか。上田宿の方が大きいので、金沢から参勤交代でこの街道を使った前田藩のお殿様は上田に泊まられ、格下の大名がこの海野宿や田中宿の本陣を使ったとか。何せ2500人もの行列だったそうですから参勤交代にぶつかれば、長野の善光寺参りの旅人も泊まるところを見つけるのはたいへんだったような気がします。

 隣の田中宿が川の氾濫で被害を受け、海野宿が栄えたそうです。

 江戸時代は、この街は旅籠屋で栄え、明治期に入ってからは、もともと盛んだった養蚕を生業とし財をなした立派な家が多く残っていると聞きました。蚕の病気が出にくい気候も相まって蚕の改良育種が盛んだったそうです。

 資料館になっている家も旅籠屋造りの家ですが、のちに養蚕をやるようになったため中庭や裏手に蚕室だとか農機具を収納する納屋などが残っていて見学ができるようになっていました。

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 資料館になっている隣に大きな袖ウダツのある家がありました。受付の方に「お金持ちだったのでしょうね。」と口ずさむと「今でもお金持ちですよ。」との返事。こんなりっぱな袖ウダツを私はみたことがありません。

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 よく見ると、瓦には鯱も上がっています。

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 資料館は、典型的な旅籠屋造りの建物です。窓には、桟がありますが。これは「海野格子」といわれる独特の格子です。

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 別の家のものですが、特に2階部分の格子は、出格子といって1階部分より飛び出しています。こうすると、旅人が旅支度をするときに役にたったと書いたものがあったので庇の役割をもっていたのかなと思いました。

 格子は、長いものが2本、次に短いものが2本の繰り返しになっているのがお分かりになるでしょうか。これが「海野格子」の特徴です。

 もう一つは、2階の屋根の上に付いている小屋根です。囲炉裏を焚く茅葺屋根にはもっと小さなのが付いているのは見たことがありますが、大きな小屋根の付いたうちは見たことがありませんでした。 養蚕に業が変わった時に、蚕を寒さから守るために火を焚くようになりました。そのため煙を逃がす小屋根をつけたのです。これもこの海野宿の変遷を知るいい材料です。

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 上の写真は本陣跡です。本陣らしきものは残っていません。

 通りを挟んだところにある玩具館へ寄ってみました。ここには、個人で集めた全国の民芸玩具が寄贈、展示されています。そこでもお客さんがいないので、受付の女性とおはなしさせてもらいました。ちょっと2階部分が低いので、やはり蚕室だったのかと聞いたところ、ここは遊郭だったと教えてもらいました。

 向かいが本陣ですからその隣には脇本陣もあっただろうし、昔の宿場に遊郭があったのは当然といえば当然なのでしょうが・・・・

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 ポストがあるところが玩具館。両隣3軒だけ屋根が低いのです。(まわりも一緒に撮った写真がないのでわかりにくいですね。)中2階の高さしかありません。これも聞いてわかったことですが、南側の屋根が低いと通りの反対側にも太陽の光が注ぎ、積もった雪も解けるというわけで、本陣の前だけ屋根の高さをわざわざ低くしたそうです。忖度したのか命令でそうなったのかはわかりません。いつの時代も権力者の影響力はすごいものがあると思いました。

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 宿場ですから、当然馬もやってきます。荷物や人を運び、疲れた馬のために塩を入れておいた入れ物です。ここで次の馬を調達して先へ進むのです。

 

 この宿場には現在60件ほどの建物が残っているそうですが、半分の家は住んでいるけれども後の半分は人に貸して食堂やカフェ、お土産屋さんになっているところがあるため、仕事が終わると帰ってしまうので夕方になると暗い通りになってとても寂しいと聞きました。

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 資料館のすぐ近くに句碑がありました。(夕過ぎのうすのコダマの寒さかな)と読むようです。通りが暗くなると人通りも絶えた海野宿の情景が浮かび上がってきました。

 

 

 おまけ

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 この日、上田の農産物直売所に寄って求めた「サクラシメジ」です。うちへ帰ってから撮った写真ですので、色が褪せていますがピンク色をしたしめじです。香りがだいぶ飛んでしまいましたが、帰った翌朝料理しました。

 

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 一つは、けんちん汁です。ごぼう、ニンジン、こんにゃく、油揚げ、豆腐、しいたけ、それにサクラシメジ、長ネギ、すだちを垂らした醤油味の汁ものです。

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 もう一つは、炒め物。なすといっしょにオリーブオイルで炒め、塩で味付け、すだちを垂らしました。

 きのこは、鮮度が大事です。残念ながらだいぶ香りが飛んでいましたが、味シメジといいますからまあまあというところでしょう。

 上田市では、小中学校の給食にマツタケが出る日があるようです。マツタケご飯とマツタケのお吸い物が献立になるそうです。直売所でもたくさん売っていましたが、やはり5000円には手が出ず、450円のしめじになりました。

 おしまいです。

初秋の信州海野宿

 9月27日から29日までまたお誘いがあったので信州へ行ってきました。

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 運悪く秋の長雨にたたれ3泊したうち2日は雨で、1日だけきれいに晴れた日がありました。赤いコスモスが青空にくっきり映えました。

 昨年の9月は「イワインチン」と「オヤマリンドウ」がちょうど見ごろだというので湯の丸高原へハイキングに行ったのですが、その時に見つけた「海野宿」が気になっていたので、そこへ行ってきました。

 もう一つ去年からの懸案がありまして、東御市にあるという「そば小屋つちや」さんを探してそばを食べることにしていました。私たちにとってはこちらの方がメインだったかもしれません。何せ食いしん坊ですから。

 そのそば屋さんは、住宅街の中にあってわかりにくいので誰かに聞いた方がいいとアドバイスされていたので、しなの鉄道の田中駅の観光案内所まで行って聞いてみました。市内の飲食店の地図を渡してくれて、やはり近くに行ったら誰かに聞いた方がいいと言われましたので、ちょうど配達していた郵便やさんに聞いてみました。郵便の配達をしている方はやはりよくご存じで丁寧に教えてくれました。地方へ行くと、本当に旅人には優しく接してくださる方が多く、そのことだけで行った場所の印象がぐっと上がります。

 近くに大きなスーパーの駐車場もあったので、とりあえずそこへ車を停めてゆっくりまわりを見渡しながら探してみると、さっき車で通ったはずの道に1本旗が立っていることに気付きました。ありました。建物の裏側しか見えないので、その旗が風で翻っていただけでそこが蕎麦屋さんだということに気付けない仕掛けになっていたのです。

 開店の11時半に到着。

 そのお店は、4人が座れるテーブルが二つと4人座れるカウンターのみ。しかもそばは無くなり次第おしまいというところです。店の暖簾をくぐるなり「今日は予約が入っていないから大丈夫だけれど、今度来るときは、電話をしてから来た方がいいよ。」との店主のお言葉。とにかく食べられることになりほっと胸をなでおろしました。時間が遅かったり、予約した人が多かったりすると来ても食べられないというスリリングな蕎麦屋さんです。

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 店主が一人なので、一人で賄えるだけということで、それ以上何かわけはなさそうです。そばは、せいろ、ざる、かもそばの三種類、それにクルミとかもとか別注文のものがいくつかありましたが、種類も少ないです。7月に上田で食べたクルミだれのおそばが美味しかったので、もちろんクルミを注文しました。うわさ通り、小さなすり鉢とすりこぎが出され、クルミを自分で擦るように言われました。その間にそばの準備をするとのことです。

 クルミが擦れた頃、砂糖を少々と風味づけにお酒を少し入れてくれました。あとは、そばつゆで自分の好みで割って作ります。このクルミ、今年のはまだ干してあって使えないので去年のだけどいいかと言われましたが、もちろん構わないといいましたが、手作り感満載です。

 ついでにいうと、東御市(とうみし)はクルミの生産が日本一。道の駅の名前は「雷電くるみの里」といいます。(雷電というのは、力士の名前)だからクルミがよく使われているのだと納得しました。

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 これで出来上がりです。そばは、普通盛り、中盛り、大盛りとあるのですが、うちのは多めだけど普通で大丈夫かと一応聞かれましたが、出てきたのを見て驚きました。たぶん首都圏で食べるせいろの3枚分くらいの量です。

 あとから来たビジネスマンらしき男性もせいろ普通盛りでしたので、男性でも十分な量なのです。私は、自称大食いですからもちろん食べられましたが、結構いっぱいいっぱいでした。大丈夫かといいうのは、多いけれど全部食べられるかということだと後からわかりました。おまけにゴボウのかき揚げは、サービス。

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 最後に蕎麦湯でこしらえた寒天がデザートで出てきました。注文していないのにと思いましたが、セットで注文してくれた人にはつけてくれるのだそうです。初めての体験でしたので、なんだかすごく嬉しくて仕方がありませんでした。

 もちろん、蕎麦湯も出てきます。

 これでおしまいですが、値段を聞いてびっくりです。せいろは普通盛り1枚で750円、クルミが150円、合わせて900円でした。

 ここのそば粉は、地のそば粉を使っていて、二八そばですかと聞いたら、87%だとのこと。九割そばというそうです。

 そば好きにはたまらないお蕎麦屋さんです。

そばのことで長くなってしまったので、「海野宿」は次回ということで失礼します。

 

 

 

お彼岸の頃

 9月の記事です。

 今年の夏は、暑くてお盆はお休みしてお彼岸にお墓参りをしました。

 生きている自分を優先したのです。

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 寺に着くと日陰に咲いていたヒガンバナが1輪、美しく咲いていました。

 鎌倉のお墓参りは、ちょうどお彼岸のお中日。お墓へ行ってみると、隣近所のお墓は、もうすでにきれいに清掃され、きれいな花も飾られていました。

 夏に行っていなかったので、草が生えツルが絡み、柘植の木の枝も金木犀の枝もだいぶ伸びていたので剪定と草取りから始めることになりました。

 金木犀の花が咲き始めていたので、いい香りがあたりに漂っていました。

 横浜へ越したばかりの頃は、時間を見つけてはあちこちの仏様を拝顔するのが楽しみで始終出かけていたものですが、近頃はご無沙汰です。

 お墓参りに来ると材木座にあるカレーとベジ料理のお店「香菜軒寓」へ行くことにしています。暑い夏にカレーが食べたかったけれども自分で煮込み料理を作るのは気が進まずずっとカレーが食べたくて仕方がなかったのです。

 

 この日も帰りに寄りました。休日で駅前はすごい混みようだったのでわざわざ時間を外していきました。

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 いつもはマメか野菜のカレーなんですが、ちょっとおごってエビが入ったカレーを頼みました。エビは、養殖をしたものではなく、ニューギニアの海でちゃんと漁師が捕ったもの。単価は高いけれども旨みが違うのです。このお店で唯一の動物性たんぱく質、それがなんと5匹も入っていました。今日の野菜はナス。これも藤沢の農家から届いた無農薬の野菜です。ご飯は玄米か、五穀米かは選べますが、私はもちろん玄米、ちゃんと小豆も入っているので赤い色をしています。塩麹で和えた小松菜など、付け合わせもみんな素性が確かなものばかりです。久しぶりに美味しいものを食べられてほっと心が安らぎました。

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 デザートも頼みました。白ゴマのブラマンジェにマンゴーがのったものです。手作りですから本当に美味しいです。(ちょっと食べてから写したので見苦しくなりました。)

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 このお店に藤沢の農家「柿右衛門」さんから野菜が届きます。その中に「マコモ」がありました。とても珍しいので買ってきました。

 冬に東北へ渡り鳥を見に行くと、オオハクチョウが白い首を水の中に突っ込んで食べていたのがこのマコモの地下茎です。これは地上に生えている茎です。うちへ持ち帰って天ぷらときんぴらにして食べました。ハクチョウの大好物をまさか私が食べることになろうとは思いませんでしたが、特に匂いや味に個性があるものではなくシャキシャキした食感とどんな料理にもなじみやすいところがいいような気がしました。栄養価も高そうです。

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 鎌倉の道には、あちこちにヒガンバナが咲いています。赤もあれば白もあります。

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 材木座から裏道を歩いて行くと、大巧寺(だいぎょうじ)があります。今でこそ、バス通りの方が表だと思われていますが、昔は一見裏手に見えるこの道が小町大路と呼ばれ、本堂はこちらを向いています。材木座からの物資が運ばれるメインストリートだったからだと思われます。

 この境内を抜けるのが駅への近道なのでなんの花が咲いているかなと思いながら入って行きました。

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 まず、芙蓉。白い花と赤い花が同居しているので、これは酔芙蓉だと思います。朝は白い花が咲き、時間が経つにつれお酒に酔って頬を赤らめるかのようにピンクから赤に変わるという花です。

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 白いホトトギス

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 赤いホトトギス。これも紅白そろっていました。

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 コムラサキだと思います。残念ながら白はありませんでした。

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 その代わり、白い玉すだれ。

 よく手入れされた花を愛でながら境内を通り抜けしていく人をよく見かけます。

 ヒガンバナホトトギスも芙蓉も赤と白がそろってちょっとめでたい一日でした。

茅ヶ崎里浜の植物観察(9月)

 9月16日は、あいにくの曇り空。予報では雨は降らないとのことだったが、重たい雲が空を覆っていた。

 この日は、茅ヶ崎から初めて藤沢市へ入る。辻堂海浜公園の前の浜だ。向こうに見えるのは、江の島。

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 西の方向を見ると、砂浜に砂草がほとんど見られない。この辺りは、波打ち際から砂丘の上までの長さがおそらく80mくらいあるのではないかと思うのだが、砂がむき出し状態で、しかも車のわだちが続いている。このあたりでもかつてはアカウミガメが上がってくることがあったそうだが、こんなわだちがあると、ウミガメが余計なエネルギーを使わざるを得なくて海へ戻れなくて命を落とすこともあるという話を聞かせてもらった。

 

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 それでもところどころに緑がみえるところがあった。

 これは、ハマゴウの群落。草本でなく木本の植物だ。茅ヶ崎の有名な浜降祭にも昔から使われているこの土地の植物なのでできればもっと増やしたい植物だ。

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 ハマゴウは、7月に咲く花なのでほとんど花がないけれども、たった一輪咲いていた。ムラサキの花だが、葉で隠されていてよく見えない。

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 これは、ハマボウフウの若芽だ。春に芽吹くのだが、秋口にも発芽するのだとか。

 まだ少ないので、取って食べるわけにはいかないが、食べごろのやわらかい葉だ。

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 波打ち際からだいぶ離れていたが、砂浜の最前線を担うハマヒルガオコウボウムギがやっぱり生えていた。穴が開いているのはカニの巣穴だろうか。

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 この広い砂浜にほんの一握りの砂草しか生えていない寂しい地域だ。

 このハマボウフウハマヒルガオコウボウムギも初めて出会ってから2年も付き合っていると芽を出しているのを見るだけでかわいいという感情が湧いてくるから不思議だ。風を受けても波をかぶっても砂に根を張って頑張りぬくところに惹かれてしまったようだ。

 

 この寂しい砂浜なので、帰りに波打ち際を歩いて貝殻や石を探して歩いた。

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 左の薄いピンクの大きな貝は「ワスレガイ」という名前で、あさりのようでもあり、ハマグリのようでもあるが、味はハマグリに近いそうだ。子どもときに、この浜の潮だまりでこの貝をみつけてうちへ持ち帰ると潮汁にしてくれたと教えてもらった。

 右側の渦巻き状の貝の名前は失念してしまったが、味噌汁に入れたそうだ。

 

 

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 打ち寄せられているものを見ていたら、目の端に何やら動くものを発見。砂に似通った色、ちょこまかと動き回る。それだけでチドリの仲間だということはわかったが、名前がわからない。

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 とにかく動きが速い。ちょっと離れたところを追いかけてみたが、ぼけた写真しか撮れない。

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 辛うじて正面の胸の色まではこれでわかった。

 茅ヶ崎にきて見たことがある鳥は、トビとカラス、それに時々カモメくらいなのでこれだけでも大収穫。

 今は、南へ越冬しに帰る鳥たちの渡りの季節。おまけに夏仕様と冬仕様の羽の変わり目なのですぐにはわからず、結局はうちで図鑑を見て名前を判定した。

 おそらく「シロチドリ」だろう。シロチドリは日本の各地にいるのだそうだが、北の方にいたシロチドリは、冬になると南下してくるのだという。

 このチドリ、この辺りを縄張りにしているチドリなのか、寒くなってきたので東北の方から南下してきたのか、たった一羽エサをついばみながら歩いていた。サーファーが数人歩いてきたのでパッと飛び立って行ってしまった。

 今年最後の観察会でお土産をもらった気分だった。

茅ヶ崎里浜の植物観察(8月)

8月の観察会は、19日。ちょうど17日から急に涼しくなった3日目でした。

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 集合場所は、7月と同じ浜須賀災害無線塔。

 手前の134号線は交通量が多いので横断歩道を渡ろうと待っていてもなかなか信号が変わりません。せっかちな私は、階段を上って歩道橋を渡ります。この日は、上に上り切った時に(わあー)と思わず声を出してしまいました。目の前の相模湾の海が水平線の彼方まで青く美しく見えたからです。右の端にうっすら見えるのは伊豆諸島の大島です。こんな日は、ここで深呼吸するだけで十分な気がします。

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 台風が過ぎ去った後でしたが、まだ波は高めでサーファーにとっては波日和。たくさんのサーファーが波と戯れておりました。

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 見ていると、1回だけでなく、寄せくる波を捕まえて、何回も乗りこなす人もいて見ているだけでワクワクします。

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 この日は、無線塔のある所から、東の方向(鵠沼海岸)へ向かって歩きました。竹で作られた垣根が砂丘とサイクリングロードの間に作られているのが見えます。この垣根は、「静砂垣」(せいさがき)と呼ばれています。サイクリングロードに砂が積もらないようにするのとサイクリングロードの後ろに植えてある黒松の防砂林を守る役目をしているのです。

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 ところが、このように静砂垣(せいさがき)が壊れているところがありました。手前に置いた棒が、指し示している方向は、南西です。冬の間、この浜には南西から強い風が吹くために垣根がこうして壊れてしまうのだそうです。冬は、南西から吹く強風で砂が舞い上がり大きく移動してしまうので、その砂を押さえる役目も果たすのも砂草なんです。

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 その南西から吹く風に乗ってやってくるのか、潮の流れが連れてくるのかわかりませんが、ヤシの実の落し物です。毎日ここを歩く人は、いろんなものが流れ着くのを見るのだと思います。島崎藤村の書いた「椰子の実」がちらっとよぎりました。

 この日見た砂草

 ツルナ マオリの人たちが食べていたのでニュージーランドスピナッチ、日本ではハマナ、ハマホウレンソウとも呼ばれている。食べられるが、シュウ酸があるのでゆでた方が良い。

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 オカヒジキ 生協の注文にもあるのでかなりメジャーな野菜になってきている。ここに生えているのは食用として作っているものではないので、茎も葉も太くてちょっと見た目が異なり、ずんぐりした葉である。

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 ハマニガナ 7月にものせたが、あえて載せたのはこれも食用になるからだ。出てきたばかりの若い葉を食べられるということがわかった。

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 砂草の中には、食べることが可能なものが多い。気候変動、天災、これからはなにがあってもおかしくない。知っているといいことがあるかもしれない。山に生えていれば、山菜。砂浜に生えていれば砂草。どちらも自然の贈り物だと思うがどうだろうか。

 

 ケカモノハシ 群生しているケカモノハシを初めて見た。丈は50cmくらいで穂が出ている。似ている名前のがついていないカモノハシは、湿地に生えている植物だそうだ。海岸のカモノハシは、強風と高温にさらされる過酷な状況の下に生えているのでが保護する役目を負っているのだそうだ。

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 花はすでに咲き終わって、実ができている。実の回りにもがたくさん生えているのがわかると思います。珍しいのは、この穂は1本じゃなくて2本がくっついて1本のように見えるというところだ。手前のは、開いて2本になっている。なぜこうなのかはまだ調査中。

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 「海と自転車」(この日の好きなスナップ。)

 真ん中あたりの水平線に大島が見えるでしょうか。夏に見えるのはすごく珍しい。

茅ヶ崎里浜の植物観察会

  

 7月の観察会は8日の土曜日だった。

 毎月場所を移動して砂浜の状態と植生の状態を観察している。

 この日は、浜須賀防災無線塔が立っているところに集合してそこから西の方を歩く。

 

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 この日も天気は上々。浜へ出てみるとたくさんの家族連れが波打ち際で遊んでいる。 どうも町内会のレクレーションという雰囲気だ。

 約束の時間よりずいぶんと早く着いたので様子を見ていると声がかかり、移動が始まる。どうも観光地引網のようだ。

 

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 集まった人たちは、漁師さんの指示で両側に分かれ、綱を引っ張って行く。なかなか本体は現れない。ひたすら引いていく。

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 やっと網がやってきた。昔は、網目があるものだったような気がするが、布の袋になった本体だ。黒いところはチャックになっている。

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 チャックを開くと中からあふれるほどの魚が現れ、歓声が上がる。それを漁師さんが網ですくって水色のポリ樽に入れていく。

 

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 ほとんどはアジだが、サバの小さいのやごくまれにカマスなんかも入っている。

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 底の方に入っていたのが生しらす。これはほしい人が手を出してそのまま食べていた。

 なにせこの日は大漁だったようでこの樽に10杯以上の魚が取れていた。1人何匹ずつかわからないが、分け前は十分だろう。とれたてのアジのたたきにしたり、焼いて食べたり、この日の家庭の食卓はさぞにぎやかだったに違いない。

 魚の観察に来たのではないがこんなハプニングも見ているだけで楽しい。

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 さて、本題に戻って、浜須賀あたりの砂浜は、漁港付近やハイランド付近に比べて狭くなっている。

 風や波の影響を受けやすいのか、砂浜が浜辺からすぐせり上がって形成されている。

 その最前線はやはりコウボウムギハマヒルガオとコウボウシバだ。こうやってみていると彼らがやっていることがよくわからないと思うが、

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 砂がえぐれたところを見てみると、その舞台裏がよくわかる。地上に出ている茎の長さの何倍かある根を縦にも横にも縦横に絡みつかせるようにして砂を押さえる働きをしている。一番過酷な場所を選んで砂の移動を防いでくれているのだ。ほんとうに縁の下の力持ちといってもいいだろう。

 こういう働きがある海浜植物は、東北大震災があった東北の海浜津波などの災害を少しでも軽減していく力があるのではないかと防災という観点からも見直されているのだと聞いた。

 このことは以前座学で聞いたことがあるのだが、こうして本物を見て感じるのとではずいぶんと納得の度合いも違ってくる。

この日観察できた植物

ハマボウフウの実 白い花がすっかり茶色く結実している。

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ハマヒルガオ はなは少ないがまだ可憐な花をつけている。葉はハート形。

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ハマニガナ ニガナはまだ結構咲いている。葉がイチョウに似ている。

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 海浜自然生態園でトイレ休憩と吸水。私はここは初めてだ。

 ここの庭には海浜植物がたくさん植えられている。浜辺の過酷な状況のところに生える強い植物なのに、今や人間が保護していかないと絶滅の危機に瀕しているものも多いという。ここは、その保護施設の一つ。そこに咲いていた花。

ハマゴウの葉ノカンゾウ           ハマエンドウ

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 最後にもう一つ予期せぬ出来事。

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 観察が終わって浜須賀の防災無線塔があるところへ戻ると、びっくりするほど大きな鯛がまな板にのっている。聞いてみると、地引網の二回目の網にかかっていたのだという。さばいている手元をじっと見ていたら、私たちの手のひらにそのタイの切り身をのせてくれた。思わぬプレゼント。醤油とワサビがあったら最高だった。

 

 

鮎そば

 東北旅行へ行く前日の4日に、八王子祭りの日が命日の友人の墓参りに行きました。 早いものでその彼女が亡くなってからもう4年が経ちました。

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 帰りにいっしょに行った友人が見つけてきた蕎麦屋さんに寄りました。6月に一度来ているので、二度目です。このお蕎麦屋さんは、実はかつて1年だけいっしょに働いたことがある人がやっている店でした。

 6月に会った時は、びっくりでした。顔と名前は覚えていたけれども、お互いにまだ若かった頃のことです。声には出さねど、これまで重ねてきた年月をずっしりと感じたものです。

 その頃から、彼は釣りをやったり、名古屋コーチンを飼っていたりと 一味違う趣味に生きていた人だったので、定年退職をしてから、趣味のそば打ちが高じて蕎麦屋を開くことになったのはわかるような気がしました。

 彼は、どこのそばが美味しいか日本全国そば行脚を重ね、自分のめがねに叶ったそば粉を取り寄せているようです。食べる直前に、粉に挽き、そばを打ち、ゆでて出す、いわゆる三たてのそばを出してくれます。三たてを看板にしているので、予約を入れておけばその時間に食べられるようにしてくれます。ふらっと行っても食べられますが、その工程にかかる時間を待つ覚悟をしなくてはなりません。

 儲けることだけを考えていたらそんな悠長なことをやっていられませんが、「暇なときは、趣味の釣りにも行きたいので、ちょうどいいんだ。」と言っていました。

 

 今回は、「鮎そば」という食べたことがない物を食べに行ったのです。初めて行った時に、「8月になったら釣ってきた鮎を使ったそばが食べられるよ。」という話がずっと頭にこびりついておりました。食べたい食べたいと思いながら待つこと2か月。

 これがその「鮎そば」です。

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 相模川水系は今年鮎が豊漁だったようで、その鮎を乾かし(ここのところを聞き洩らしたのでいい加減ですが、遠火で蒸すようにするのかもしれません。)それで出汁を取り、汁そばに仕立てたものです。

 本当にさらっとさっぱりした出汁なのにコクがあるのです。口に入れただけで幸せな気持ちになります。鮎の出汁だけで何もほかの物は入れていないと言っていました。

 これは、皆さんご存知の鮎の塩焼き

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 もちろん、彼が釣ってきた天然ものです。ちゃんと苔の香りがする鮎です。めったに天然物は食べられないので、これで鮎は香魚っていうんだということが納得できました。今は、柑橘類のいいのがないので、付いていたのはライムです。

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 後から出てきたのは、出汁を出すのに使った鮎をから揚げにしたものです。これがまた美味しいのです。日本酒を飲む人は、これを肴にするとお酒が進むだろうと想像できるお味です。もう一度鮎の出汁でそばを食べてみたいものだと思うけれども、あの時点であと10人分くらいで終わりだと言っていたので、今年は、もう1回というわけにはいかないようです。

 これは特別メニューで、2500円。普通は天ぷらそばが1500円(せいろ2枚と野菜中心の天ぷら)です。ほかにもメニューがあるのでしょうが、よく覚えていません。そばは、十割そばです。

 参考までに、店の名前は「川崎」といいます。場所は、町田市の大地沢青少年センターへ行く途中にあります。(八王子と町田の市境付近)