秋田の紅葉 その5

「桃洞の滝」からの帰り道です。

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 その日ここへ来ていたのは、ご夫婦が一組、あと男性が2人それに私だけです。ほぼ独り占めと言ってもいいでしょう。東京近辺ではなかなか考えられません。

 タクシーのお迎えの時間があるので、あまりゆっくりもしていられず、一番後に着いたのに、一番早く退散することになりました。いいカメラがないので、長居しても始まらないのです。

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  太陽の日差しが木間から射してきました。

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 林が明るくなってますますブナの葉が美しいオレンジ色に輝き出しました。

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 ふかふかの落ち葉の中に木の芽が出ていました。こんなに小さくてもはや紅葉しています。今からこの森は深い雪に閉ざされるのに、こんなに小さくて生きて行けるのでしょうか。ちょっと心配です。

 向こうからくる男性に出会いました。ヘルメットをかぶり、ビニル袋を手に持っています。一人の気安さで声をかけてみました。予想通り、キノコ狩りをしている方でした。ここから車で40分くらいの白神山地の方から来たのだそうです。向こうでキノコを採っていると「また来たのか。」と知った人から声がかかるのが面倒で、こっちへ来てみたのだそうです。

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 額の汗をぬぐいながら、どんなキノコを採っているのか見せてくれました。

 「ムキダケ」というのだそうです。シイタケくらいの大きさです。匂いを嗅がしてもらいましたが、シイタケやマツタケのような特別な香りはなく、ブナシメジなんかに近い感じがしました。やはり鍋に入れたりして食べるのだそうです。今の季節はナメコが生えていると言っていました。

 「時間があれば食べさせてあげるんだけれど・・・」と言ってはくれたものの、まだ採っている最中でしたからここでお別れ、残念ながらお味見はできませんでした。

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 そばのブナの木にこんなキノコが生えていましたが、これは毒キノコだから気をつけてと言われました。キノコは外見が似ていても毒キノコというのが結構あるので、知った人としかキノコを採ることはできません。

 ついでに白神山地の方は、ユネスコの自然遺産になってから観光客がたくさん訪れてブナの根っこの痛みが激しいという話も聞きました。世界遺産だとかレッテルを貼ってもらうとどっと観光客が押し寄せる傾向がありますが、そんなレッテルがなくても素晴らしいところがたくさんあるのに・・・せめて日本国内では観光業者のツアーに乗っかるだけじゃない自分の旅をしてほしいものだと思います。

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 鳥獣保護センターに戻ってきました。木の香りがする広々とした空間に大きなブナの木(化学処理されたものだと思います)が立ち、この森にいるクマゲラが巣穴から顔を出しています。本当のクマゲラはすごく用心深い鳥だそうなので、遠くからしか見ることはできないと言われました。一番大きなキツツキですから、そのドラミングの音も大きいそうです。せめてそのドラミングだけでもと思いつつ、・・・また再訪できるかどうかそれが問題です。

 タクシーは、午後1時半のお迎えかと思ったら午前中タクシーの御用がかからなかったということでずっと駐車場に停まっていたそうです。

 帰りの車の中でカメムシのことが話題になりました。運転手さんは、普段は1ヘクタールの田んぼを耕作していて農閑期の午前中だけでいいからと運転手の仕事をしているそうです。減農薬で耕作しているし、一人では機械を使ってやっとだとか、保護センターにいたカメムシがお米にもついてそれを退治するのが大変だと話していました。カメムシがコメのエキスを取った跡が残ると等級が下がり当然米の値段も下がるのだそうです。

 息子さんは、後を継がないと言っているので、自分の代で農業はおしまいだと寂しそうに話していました。ほかの物に比べて米価が安すぎます。これで外国から安いお米が入ってきたら、ますます農家は少なくなっていくでしょう。

 昔高校生の頃、地理の学習で米価の逆ザヤについて調べるよう、宿題が出たことがありました。その時に永田町の政府刊行物センターまで行って資料を見つけ、その逆ザヤが何かがわかりました。

 その頃は、農家から政府は米を高く買い取って、消費者には安く売る仕組みになっていたので、それを逆ザヤと呼んでいたのです。戦後の食糧難から米を増産させるためそういった政策を取ったのでしょうが、時代を経てそれがなくなったのです。

 コメの消費は伸び悩み外国産の安いコメが流入しいよいよ農家は後継者がいなくなってやめざるを得なくなってきているのが現状です。

 どの国も食料の安定供給のため、補助金を出しても農業を保護しているのになぜ日本は主食を含め大事な食料に無頓着なのでしょう。

 ちょっと脱線しましたが、旅先でいろんな人と話ができると世の中のこともわかりいいものです。

(旅は、続きます)

秋田の紅葉 その4

 いよいよ今回のハイライトの紅葉です。

 翌日は、写真で見た滝の形のユニークさに惹かれて「桃洞滝(とうどうだき)」を目指すことにしました。

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 森吉山荘からタクシーに約30分乗り、「森吉山野生鳥獣センター」まで行き、そこからはブナの原生林の中を4.2キロ歩きます。この一帯は、国設鳥獣特別保護区となっているところなので、開発などから守られているところです。

 着いた時は、管理人さんが壁やら窓に張り付いている小指の爪くらいの大きさのカメムシをペットボトルの中に落としている最中でした。何でこんなにいるのかと思うほどすごい数でびっくりです。ちょうど岩手から来たという青年と一緒になりました。4時間ほどかけて滝の写真を撮りにきたと言っていました。

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 管理人の女性に「昨日の晩、雨が降ったようですが、滝までの道は大丈夫でしょうか。」と聞いたところ、「さあ、何とも言えないので自分で判断して気をつけて行っていらっしゃい。」とのこと。ちょっと突き放されて不安になりましたが、車が2台ほどすでに駐車してあるので、一人ではないと思って出かけました。

 裏手の道を進むと一面ブナの林です。

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 こんなに広いブナの原生林を歩くのは初めてなので、ブナの落ち葉をルンルン気分で踏みしめながら歩いて行くと、立会川の流れに出くわしました。まず水の量を確かめましたが、落ちても流されるほどではないと思って滑らないように慎重に石を渡っていきました。

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 東京近辺だと茶色に変色するような気がしますが、ここのブナはそろってオレンジ色になります。顔の色もオレンジ色に染まりそうです。
 

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 水の溜まっているところもあるので、深いトレッキングシューズを履いてきてよかったと思いました。

 ただただどこまでもブナの林が続いています。同じような景色なので分岐点などには案内板がありましたが、管理人が「よく案内板を見て進んでくださいよ。往きは、桃洞の滝。復りは、鳥獣センター方面ですよ。よく見てね。」と2回もいうので、よほど頼りないと思われたのだなと思いました。でも、その案内板がないと迷って遭難するかもしれないほど、一面ブナ林が続いているのです。f:id:yporcini:20191026094952j:plain

 まず一つ目の分岐。赤水沢は、足首くらいまでの深さの川を歩いて滝をめざす「天国の散歩道」と名付けられた素敵な沢歩きができるのだと聞いています。ガイドさんが必要なようだし、距離も長くて私にはちょっと無理な気がしています。

 今日は、直進です。

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 だいぶ歩いたところに案内板がありました。「桃洞横滝」です。

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 落差は小さいですが横一列滝になっています。これもなんだか不思議です。どうして横一列が同じように削れているのでしょうか。

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 さて、ここから1kmとの表示であと20分だと思うと気分も軽やかです。

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 水は流れ込んではいませんでしたが、昨日の晩は水が上がっていたんだろうなと思う脇道を進みます。

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 右岸から左岸へ渡る飛び石へきました。脚の長さが足りなくて渡れそうもない箇所が見受けられました。こんなところで脚の長さを自覚しなくてはならないとは思ってもいませんでした。そこで水深を見て、あらかじめ靴を濡らしてでも川の中を歩こうと無理に跳びませんでした。変な転び方をして返ってけがをしたらまた7月の二の舞です。

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 ちょっと落差も出てきて何やら大きな音も聞こえ出しました。時間も時間、そろそろかなという期待に胸が膨らみます。

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 この春から写真を見て憧れの滝だったし、夏は山でけがをしてもう来られないかなと半分あきらめていたのでとっても嬉しく思いました。朱色に染まった衣をまとって何とも素敵な桃洞の滝です。

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 上の方へは、ハーネスを使って登ることができるようですが、私にはちょっと無理そうです。落ちたら死にますからね。

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  真ん中部分です。甌穴もあって何やら桃の種のようにも思えます。

 この丸く分かれた形の滝は初めて見ましたが、皆さんはどうでしょうか。

 赤水沢の方へ行くと「ウサギ滝」というのがあるので、それも面白いと思います。

 長くなるのでここでストップします。

 (続く)

秋田の紅葉 その3

 太平湖の清水桟橋で船を下してもらい「小又狭」の散策へ向かいました。7月は初めてとはいえ、4人でしたし上流からの帰りのハイクの方が何組かいらしたので、不安はありませんでしたが、今回は一人です。

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 再びここへ来たのには自分の中では二つのわけがありました。

 一つは、もちろん紅葉の小又狭を見ておきたいという気持ちです。もう一つは、理由になっていませんが10月初旬にこの散策路で起きた事故に引き寄せられたということです。

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 この事故は、新聞でも報道され、同じ場所を歩いた私や友人にとってはかなり衝撃的な話でした。参加した私と同じくらいの年齢の女性とその方に付いていたガイドさんのお二人が亡くなられたのです。

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  事故が起こった日は森吉山へ登る予定だったツアーがその日悪天候のため小又狭に変更になったのだそうです。高低差もなく歩く距離も短いのに、増してベテランの山のガイドさんが付いていたのに と不思議でなりませんでした。

 そこで思い出したのが、この辺の川が一枚岩でできているという話でした。川の側面も川底も岩なんです。いったん雨が降り始めるとしみ込まないので、降った分がすぐに流れてしまうのでしょう。

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川の右から左へと渡る飛び石を渡っている時に急激に増えた水の流れに足を取られ、川へ落ちてしまったのではないかと思われます。

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 ツアーに参加された方は、早く遺体が発見されましたが、ガイドさんは下流の甌穴のの底に沈んでいたので三日後になって見つかったのだそうです。

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亡くなられたガイドさんは、7月に私がけがをした際に応急手当てをしてくださったガイドさんと同じ事務所の方で因縁を感じた次第でもあります。

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 この散策路には、落差が小さいけれどもいろんな名前がついた個性的な滝があります。が、何といっても、どん詰まりにある「三階の滝」がハイライトです。

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 落差は、三階分で20mくらいだということです。

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 これ以上覗くと滝つぼに落ちそうです。2段目の水量はかなり迫力があります。

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 もみじは赤いだけでなく黄色いのもくっきりはっきりとしています。

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 散策中逢えたのは、カワガラス二羽と小さなリンドウ。どちらも紅葉とは反対の青というか紫というか、おまけです。

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 そろそろ桟橋へ近づいてきました。1人だけなので船長さんが心配しているだろうからあまりのんびりもしていられず、予定より20分ばかり早く桟橋に着くと、ちょうど船が近づいてくるところでした。最後のツアー客をたくさん乗せて私が早めに戻ってくるのを見越して10分ばかり長く観光していたようです。

  散策中、だれとも逢わず、川底の甌穴や深い淵を眺めながらさぞ苦しかっただろうと思いながらのハイクでした。船が桟橋に着く頃、雨がぽつぽつ降ってきました。事故の後の散策でしたので空を見上げながら降らずによく持ってくれたとありがたく思いました。

 (続く)

秋田の紅葉 その2

 東京を7時36分に出発するこまち3号に乗ると阿仁前田駅に12時半ごろ到着します。1日目に少しでも北秋田を観光したいと思うとこの時間取りが一番です。

 7月と同じように森吉山荘からのお迎えの車に乗り、宿で予約しておいたタクシーに乗り換え太平湖まで行きました。太平湖は、ダム建設のため作られた人口の湖ですが、森吉山荘からさらに上ったり下ったり、途中熊の出没もある森の奥です。タクシーがとても慎重にゆっくり運転してくれるので「丁寧な運転ですね。」というと、「この辺りは携帯電話もつながらないところなので事故を起こすと大変なんです。」と返ってきました。救急車も警察も呼べないし・・・・唯一の手段は太平湖の発着所のグリーンハウスの無線だけだということで深く納得しました。

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 太平湖は、ぐるりと鮮やかな紅葉で縁取られていました。

  桟橋を出たところです。この日は曇っていましたし、午後1時半を回った時刻でもあり、どよ~んとした空なので色が冴えませんが、紅葉の空気は十分漂っていました。

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 秋田の紅葉は、赤が圧倒的です。関東の観光地では、わざわざもみじを植えて、観光客を集めていると思われるところもありますが、ここは自然のままの紅葉です。自然そのものであるというところが東北の紅葉に惹かれる所以でもあります。

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 柱状節理の石と紅葉のコラボレーション。

 7月の時は、タクシーに乗り換える時に小さいリュックにカメラをつめ忘れたので、この日はそのリベンジ。撮り放題だったのに、何とも光が足りなくてきれいな写真は撮れませんでした。

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 ぼけている~ でも、いかにモミジが多いかだけはわかっていただけると思います。7月に来た時は、われわれだけ4人の貸し切りの遊覧船でしたが、この日は紅葉狩りの団体観光客でいっぱい。シーズン真っ只中でした。

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 反対側に森吉山のうっすら紅葉した山肌が見えていました。
 

 (続きます。)

紅葉の秋田 その1

 2か月ばかりご無沙汰していました。

 特にどこかが悪いわけではありませんが、万年ドライアイになってしまって夜になってパソコンの画面に向かって写真を上げたり文章を書くのが面倒になってきたのです。気力がなえてきたというのは年のせいかもしれません。

 時間が経つにつれ、7月に山で転倒した際に打ち処がわるければ深刻な怪我になっていたか、死んでいたかもしれないと思うようになりました。幸運なことにまだ歩けます。動けるうちに行きたいところに行っておきたいという気持ちがふつふつと湧いてきて止めることができなくなっていました。お世話になった宿の方たちにもお礼をしておきたいと思いでかけることにしました。

 近くで懇意にしている本屋さんの女主人に言わせると、「あなたは、ゴムまりのような人だねえ。」と言われましたが、痛い目に合ってもめげずにでかけるところはゴムまりかもしれないなと思いました。

 というわけで、10月の25日から再び秋田の森吉の森を訪ねました。

 森吉は、青森に近いところなので当然紅葉も早く例年だと10月下旬には散り始めている頃なのに、今年は遅くて11月上旬まで大丈夫だろうと言われていました。まさにどんぴしゃりのタイミングで紅葉を楽しみました。

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 角館から乗った秋田縦貫鉄道です。

 夏のアテンダントさんは、ポロシャツ姿でしたが秋は絣のもんぺ姿でした。写真を撮らせてほしいというと、「私でいいならどうぞ。でもカメラが壊れても知りませんよ。」と冗談を言いながら、いっぱいの笑顔を向けてくれました。このアテンダントさん、姿もチャーミングですが、案内の声がとても美しいのです。

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 「お昼の限定5食の比内鶏弁当はどうですか。」と勧められたのですが、朝昼兼用で食べたばかりだったので、比内鶏のたまごで作った焼きプリンとこれから歩く行動食にお土産の定番バター餅を買いました。お客さんが少ないので、数が売れなくて気の毒なようでした。

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 里を走っている時は、それほど紅葉を期待できないかなと思っていましたが、山にさしかかるとだんだん色づきは鮮やかになってきました。阿仁川の鉄橋を渡ります。この鉄道はこういう見どころでは必ず徐行して窓から写真を撮れるように配慮してくれます。

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 曇っていたので、ぼうっとしてますが、川筋はどこも紅葉した木々であふれています。阿仁と言われる地域はマタギの故郷です。

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 アテンダントさんが「この沿線で一番赤い子なんですよ。」と紹介してくれた木が真ん中に見えています。何でそんなに赤いのか木の種類もわかりませんが、鮮やかさが際立っていました。

  (続きます。)

8月の池の平湿原

 8月は、ほとんど予定がないはずだったのに、週二日だけ働き始めた友人がお盆の間だけ休みが取れたというので、急に3人で信州の上田市近郊へ行くことになった。今年で3年目になる。今回は、台風が近づき天候は不安定、しかも3泊4日と言ってもお盆期間と重なっていたので、高速の混雑を避けて往きは午後出発、帰りは午前中に出発という日程だったので、行ったのは海野宿と湯の丸高原にある池の平湿原だけだった。

 池の平湿原は、昨年の9月に行った湯の丸高原の駐車場からさらに車で10分くらい登ったところにある。高山植物の宝庫と聞いていたので前々からぜひ行きたいと思っていたところだ。と言っても、私だけが思っていただけで、今回は山登りをする予定でなかった。運動靴は履いていたものの山へ行く準備はしていなかったが、それでも十分歩けるところだった。

 駐車場を出てなだらかな坂を20分ばかり歩くと、前がパーッと開けて思っていたより早く湿原に出ることができた。

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 湯の丸高原へ上ってくる途中雲が出てきたので、雨が降らなければいいと思っていたが多少雲が流れていたものの心配するほどのこともなかった。

 ここは、標高約2000m。浅間山も近いので、火山活動の中でできた地形らしい。車で簡単に来てしまっていいのかと思うほど雰囲気のある湿原だ。

 赤い帽子をかぶっている子どもたちが休んでいるところがグリーン広場。私たちもここでお昼にすることにした。来る途中の道の駅で買ったお焼きとカレーパン。クルミ味噌の入ったお焼きがとても美味しかった。

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 天気も心配だったので、木道が囲む遊歩道を一周するルートにすることにした。

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 木道に沿って咲くノアザミがお祭りのぼんぼりのように色鮮やかだ。

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 黄色の花は、マルバタケブキノアザミとの共演で華やかさを増す。

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 夏の終わりはやっぱりヤナギラン。やわらかいピンクの花が初々しい。ここではワレモコウがそこはかとなくやってきている秋を知らせている。

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 木道をまっすぐに進んで右に曲がったあたりに池があった。鏡池という名前だ。この池の辺りだけは水がある。ワタスゲがないかと探してみたが、見当たらなかった。下山した際にビジターセンターへ寄って聞いてみたら、この辺にはワタスゲより小さなサギスゲが自生しているのだと教えてもらった。

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 木道を左に曲がってちょうど半周した辺りはそこだけ山が切れていた。 放開口と呼ばれているところだ。麓にあたる東御市小諸市などが見渡せる。まだ明るい空も見えているので雨は降りそうにもない。

 池の平湿原で見たそのほかの植物たち

 クガイソウ

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 シャジクソウ

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 イブキジャコウソウ

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 ウスユキソウ

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 マツムシソウ

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 エゾスズラン

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 戻る道々ご夫婦でカメラを向けている植物があったのでそばに行って「何を撮られているのですか?」と図々しくたずねてみた。まわりが笹の葉でパッと見てどれが被写体なのかはっきりわからない。(*ぼけた写真でもっとわけがわからなくてすみません。)私は、茅ヶ崎の松林の中で見た「ハマカキラン」に似ているのでランの仲間かと思ったら、「エゾスズランですよ。」とのこと。

 目が慣れてくると、歩いている道のあっちこっちにこの目立たない緑の花をつけたエゾスズランがすっくと立っているではありませんか。ちょうど花をつけた時期だったのが幸いしその場でざっと10本ほど見つけることができた。

 エゾと付くから北海道のような寒い地方だけに生えているのかと思ったら、日本全国の亜高山帯の林の下に生育しているのだそうである。調べてみるとラン科カキラン属だとわかったので、私の予想は全く外れていたわけではなかった。検索をかけると、高尾山にも生育しているとのこと。標高約600mの高尾山、亜高山でもないのに高尾山は植物の宝庫と言われるのもうなずけた。

 今年の夏は、山へ行くことが多かったので、高山植物の名前をたくさん覚える機会をもらった気がする。こうして名前を調べてブログに上げるのが私の脳トレになっているのかもしれない。

 

角館の病院を訪ねて(秋田旅行その4)

 急がないと八月が終わりそうで、この旅日記も終わりにしなくてはと焦っています。

 北秋田市から田沢高原への移動日。

 この日もとてもいい天気でしたが、昨夜の病院で角館に行ったら開業医でもいいから眼科で診てもらうように言われていたので、ほかの人も付き合わせることになってしまいました。

 駅からタクシーで近くの眼科の開業医へ行きましたが、結論として私のすごいお岩状態の顔を見てきっと引いてしまったのだと思いますが、診てもらえませんでした。

 翌日の水曜日に角館総合病院へ行くことになりました。というのも、角館の病院には眼科の常駐医はおらず、水曜日と金曜日に岩手医大から医者が出張してくるのだと聞いていたからです。

 お昼も過ぎていたので、武家屋敷方向を目指し、のてくてく歩いて行くと、西宮家というお屋敷を見つけました。

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 観光で有名な武家屋敷のあるところよりも西の方に在り、静かなたたずまいです。

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 食事処がありました。北蔵をリノベーションして作った大正ロマン風の建物です。秋田なので稲庭うどんかなと思っていましたが、ここはメインの名所から離れているためか近場の人がランチをするようで、限定の日替わりランチがあったので、それを頂きました。

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 この日のメインはオムレツでスープとサラダ、それにコーヒーもついて800円でした。きれいにカーブさせたオムレツでつい写真を撮ってしまいました。スープもちゃんと蓋つきの食器で供され、コーヒーカップも民芸風でなかなかおしゃれなレストランでした。

 食事をしてから屋敷内をめぐると、

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 ここは、母屋ですが今は喫茶室。ほかにもこのお屋敷で使っていた食器や長持、本などを展示した文庫蔵や民芸品が売られている米蔵、地元の食材を使った漬物を売っているガッコ蔵、コミュニティ空間となっている前蔵となんと蔵が5つもある屋敷でした。

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 庭には、ハンゲショウガクアジサイが静かに咲いていました。関東ではもうとっくに咲いてしまった花ですが、秋田はやっぱり北なんですね。角館は、4人とも訪れたことがあるところで特に観光はしなくてもということで、この日の宿「田沢高原ホテル」へ。列車は、ほぼ一時間に1本ですし、田沢湖駅からのバスも一時間に1本。そんなこんなで宿に着いたのは、午後5時を回っていました。

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 宿の窓から見た夕焼け。この日も天気はよかったし、明日もいい天気だと約束してくれるような見事な夕焼けでした。

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 突然翌水曜日の朝の秋田駒ヶ岳

 きれいな夕焼けの翌日でしたから秋田駒ヶ岳も快晴。3人の乗った8合目までのバスを見送り、私は田沢湖駅へのバスに乗り、角館へ。

 この日わかったことは、田沢湖線はほとんどの列車が特急こまち号で、朝夕を除き、普通列車の下りは九時半が1本。角館からの上りは午後の3時ごろの列車が1本。特急券が高いので、その列車に合わせるように行動しました。この辺りの人は、交通が不便なのでどうしても車での行動が多くなりますね。

 病院は、通りすがりの観光客なのに誠実に対応してくれて、岩手医大からいらした先生も丁寧な診察で面倒な横浜の病院宛の紹介状も書いて下さいました。

 二日間の診療なので混んでいるのは仕方のないことですが、「今日は、くすりっこだけでいいのかな。」なんていう看護師さんの言葉を聞いているとほっこりしてしまい待つのもそう苦痛でありませんでした。言葉だけでなく病院に流れている空気感が都会の物とは違うなと感じました。

 もう一つの山行、秋田駒ヶ岳には登れませんでしたが、けがをしたお蔭で秋田の人情にいっぱい触れることができて心に残る旅となりました。こういうのを「怪我の功名」というのでしょうか。

 3人は、前々日私が怪我をしていたので、無理をせず力に合ったコースと時間設定で無事戻って来ていました。私が誘っておいて案内もできず申し訳なかったのですが、怪我をしたのが私でほかの人じゃなかったというのは何よりだったと思っています。これも「怪我の功名」かもしれませんね。

 旅の記録はこれで終わりです。