6時間半の人間ドラマ

ジョルダーニ家の人々

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  監督は、シャンドルカ・マリア・タヴァレッリ、脚本は、サンドロ・ペトラリアとステファノ・ルッリ。1960年代から40年間の激動する人々と社会を描いた「輝ける青春」に続くイタリアの長編作品。

 物語ローマに暮らすジョルダーニ家は、技術者の父、元医師の母、外務省で働く長男(アンドレア)、心理学者の長女(ノラ)、建築を学ぶ二男(ニーノ)、高校生の三男(ロレンツォ)と、一見不自由のない家族に見えた。

 しかし、三男の不慮の事故死をきっかけに家族は、心に秘めていた問題や、困難に向き合う中で、一人ずつ家を離れていく。彷徨える者たちが運命のように出会う人々、不法移民の女性とその娘、不治の病のフランス人、戦場で記憶を失った大尉等・・・

 一本の川が大河となるように、この家族の運命と人生は、再び織りあわされて、血のつながりや民族を越え、より大きな家族を形成していく。ラストシーンのジョルダーニ家の開け放たれた窓のように、更に豊かに、開かれた未来に向かってー。(映画の案内より)

   三男のロレンツォは、ガールフレンドのうちから帰る途中交通事故で亡くなります。

 この事故をきっかけに、母親は、精神を病み、自らこの家を離れたいということで、郊外の病院で療養生活に入ります。父親は、仕事で外国へ。

 長男アンドレアは、外務省に勤めるエリート公務員ですが、独身。不治の病とは知らずにフランス人男性との生活を始めます。

 長女ノラは、食堂を営む夫との間に子どもも生まれ、幸せなはずだったのに、記憶喪失の大尉のカウンセリングをしているうちに恋をしてしまい、夫を愛せなくなり悩みます。

 二男ニーノは、内向的で潔癖で、父親の他の女性との密会を目撃してから父親に心を開けなくなり家を離れていきます。そのニーノもやがて、大学の担当教授の妻との出会いの中で、恋をして揺れます。

 この家族の中にイラクからの難民の女性シャーバが深く関わってきます。見つかれば不法移民で、即、送還されてしまうはずなのですが、心優しいニーノが助けたのをきっかけに、アンドレアやノラの協力もあり、この女性はローマの留守宅にかくまわれ、家族の再生に大きな影響を与えていきます。

 最後に父親と母親にも子どもが知らなかった事実が隠されていたことが表に出てきます。

 この家族の状況を一つ一つ丁寧に描いていることで、主人公たちの心に同化していく自分を見出します。三人の主人公が折にふれ散歩をしたりベンチに座ったりするテヴェレ川の河岸、サンタンジェロ城へ渡る橋など、どこをとっても絵になるローマの街並みが映画を彩ります。 

 6時間半以上の長い映画なのに、どんどんとドラマの中に引き込まれていくので、長さを感じない映画であり、今朝になってもまだ船酔いのように映画の揺れに身を任せていたいような気分になります。

 この映画は、神田神保町岩波ホールで9月14日まで13:40~21:15まで一日1回のみやっています。(途中、3回の休憩を挟んで4部構成になっている)チケット(当日券3000円)を買っても、当日、座席指定券と引き換えないと見られないので、要注意です。金曜日だったので、当日でも座席はまだ空いていましたが、土日は問い合わせて出かけた方が良さそうです。