バレンタインデーにちなんで

西洋諸国お菓子語りf:id:yporcini:20130215110359j:plain

バレンタインデーに因み、チョコレートの話を少し

 チョコレートが西洋のお菓子の歴史に登場してくるのは、スペインのお姫様がフランスに興し入れの際もたらしてからのことですが、その前の歴史は、アステカ人の住む旧メキシコが発祥といわれています。

 16世紀に入り、スペインがメキシコを支配、カカオはスペインを通してヨーロッパに流入したそうです。始めは、ドリンクとして飲まれていたものを、オランダのヴァン・ホーテン氏がカカオバターを抽出し、絞りかすを粉砕したものがカカオパウダーに分離することに成功。1842年イギリスのキャドベリー社が製品化、今の固形のチョコがこの辺りから生まれてきたというわけです。

 この本「西洋諸国お菓子語り」は、先日銀座で個展があったときにいただいた焼き菓子のお店が「プールミッシュ」、そのオーナーが吉田菊次郎さんというところから知ったというわけです。たくさんの著作がおありの方です。  

 興味のある話はたくさんありましたが、そのいくつかを紹介します。  

 まず、フランスです。

 英仏100年戦争(ジャンヌ・ダルクが登場する)の後、フランスは、ブルボン王朝が治め、次々に王様は、周囲の国からお嫁さんをもらい、国の安定の基盤を固めていくわけです。例えば、

 アンリ2世: メディチ家からマリー・ド・メディシス姫が嫁してくるときに、マカロン、プティフール、フィンガービスケット、シャーベットをもたらす。ついでに、マイナイフは持っていたけれども、あとは手づかみだった食習慣にスプーンとフォークが取り入れられたとか。

 ルイ13世:スペイン王室より、アンヌ・ドートリッシュ姫が嫁してくる時に、チョコレートの技術が入ってくる。

 ルイ15世:ポーランドからマリー・レクザンヌ姫が嫁してくる時には、パイ生地の器の中に山海の美味入りのソース・ペシャメルを詰めたヴォローヴァンを。

 ルイ16世:オーストリアハプスブルク家よりマリー・アントーワネット姫が嫁してくる時にクロワッサン、クグロフを持ち込む。

 この後、市民革命の勃発で、宮中から市井に究極の食文化が散らばったということ、また、アントワーヌ・カレーヌという料理人がこの時代の料理について本に書き残したという歴史も加わり、フランスのお菓子は今のような発展を遂げた言われています。

 現代になってこんな話も出てきます。  

 ミッテラン大統領が社会主義政党から大統領になったということで、労働時間の短縮が公約でした。今、よく言われるマニフェストということでしょうか。 

 お菓子職人は、その当時多種少数のお菓子を作る必要があったため労働時間がとても長かったので、何とかしなくてはと考えたようです。そこで出てきたのが、急速冷凍の技術だったのです。作ったときに一気にマイナス40度くらいの冷気を吹きつけ冷凍しておけば、後は必要な時に取り出し、店に並べれば作りたてと同じ状態で食べられるということになりました。 

 これで、一日5,6種を一週間分作ればいいということになり、お菓子業者は、時短をクリアーしていったという話です。公約とはこういう風に実行ができなければ絵に描いた餅、今の政治家にも聞かせたいです。ムースなどの空気をたくさん含んだお菓子が飽食の時代のデザートとしてももてはやされ、普及していきます。

 次にイギリスでの話です。

 ビスケット

 スペインが海上の覇権をにぎっていた頃、イギリスは、圧倒的に劣勢だったにも関わらず、宗教戦争の様相もからみ戦いに挑みます。正面から戦えば負けることは分かっていたので、長期戦に持っていくことが必要になりました。そこで、イギリスにあったビスケットが船に持ち込まれます。bisというのは、2度という意味、cuitはフランス語で焼くという意味で、2度焼いたものなので、旅に出るときなど長期保存が必要な時に使われたということで、決しておいしいとはいえなかったものの、この戦いに有利に働き、7つの海を支配したスペインからその覇権はイギリスに移っていったのです。

 もう一つ、プディング

 長期間船で旅をする時に、いろいろな素材の断ち落としやパンくずや肉の脂身の余りに小麦粉、それに岩場で採ったかも知れないかもめの卵等々、ありあわせの材料をかき集め、それをナプキンに包みひもで縛って蒸し焼きにして、チーズを振りかけて食べたらしい・・・というのが、現在のプディングの始まりと言われています。

 イギリスでは、今もクリスマスにはフルーツやナッツなどを入れて作ったプラム・プディングを食べますが、必ず、ケンネ脂(牛の腎臓を包む脂)を入れて作るのは、この時の名残ではないでしょうか。

 それこそ今ヨーロッパの西洋のお菓子の原点のようになっているフランスをはじめ、ドイツ、イタリア、イギリス、スペイン、ポルトガル、ベネルクス三国、北欧の国々、旧東欧の国々それに、江戸時代の日本の菓子についても、その歴史、レシピなど書かれています。

 食も文化の一つ。その国の宗教や政治などの歴史と非常に関係が深いということが具体的に分かって、これからお菓子を食べる時の楽しみが増えました。

 写真が横向きで失礼しました。