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知らなかった学資ローンのこと

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 前の本は、2007年に書き起こしたもので、このⅡは、2010年に発刊されたものだ。

 プロローグは、009年1月20日、抜けるような青い冬空へのびる、白い「ワシントンモニュメント」の周りの200万人もの群集で埋め尽くされていた。というオバマ大統領の就任式会場のルポから始まっている。

 家を力付くで追い出され、トレーラーハウスに住む女性、

 保険制度を変えてくれるだろうという期待を持ち、人員が半分になった州立病院の勤務医、 戦争を終わらせてくれるだろうと期待を寄せる黒人の帰還兵、

 グアンタナモ収容所の閉鎖をうたったことを喜ぶアムネスティインターナショナルの職員・・・・ 現状を変えてくれるだろうと いかに多くの人がオバマ大統領に期待を寄せたか。

 だが、その後どうなっていったのだろうか。

 2008年のリーマンショック後、アメリカ政府は、7000億ドル(70兆円)の公的資金を金融機関救済のために投入。

 「テロとの戦い」というキーワードが国中に出回るとともに十分な議論もなしに成立した「愛国者法」(一般市民に対する電話盗聴、電子メールの傍受の権限をFBIに与え、関連があるとされた人を令状なしに拘束、国外の収容所に移送し、拷問しているという報告がアムネスティになされている)

 「落ちこぼれゼロ法」 (教育改革により激化した競争は、過剰労働とプレッシャーで心身を病む教師を急増させ、教育予算の削減が加速させた学費の高騰が学生を苦しめてきた。)

 

 知らなかったのは、この教育予算の削減によって、学資ローンを借りて大学へ入った学生がとても悲惨な状況に置かれているということだった。

 1990年以降、公的教育予算の削減が 大学の経営悪化に追い討ちをかけた。

 大学は競争に勝ち抜くための自助努力を求められるようになった。

 多くの大学は、レベルの維持に授業料で対抗。

 年々学費の上昇率は加速し、1990年以降は、毎年5~10%というスピードで上がり始めた。

 毎年2%というインフレ率の上昇に伴い上がっていくのをはるかに追い越していく学費の上昇になったときから中産階級の家庭を直撃し始めた。

 1995年と2005年を比較すると、10年間で59%上昇というデータがある。

 知名度の高い教授を獲得できない大学は、設備投資でアピールしようとしたが、高い学費は敬遠され、学生は、授業料の安い大学へと流れる。

 うまく時流に乗れなかった大学は競争に敗れて消えていく。

 学費が足らなくて学資ローンを使う学生は全体の4/3を占めている。

 連邦教育ローンやベル奨学金といった公的なものもあるが、額が少なくて毎年のように値上げされる学費を払うために、結局は、サリーメイを始めとする民間の学資ローンを借りなくてはならない。

 そのローンだが、一月でも延滞すれば、利子がふくれ上がる恐ろしい特徴を持ち、9ヶ月になると債務不履行となり、法的手続きが取られ、どこまでも追いかけてくることになる。

 職場しかり、親、親戚しかり、ご近所しかり、毎日のように督促の電話がなり、結局は職場も追い出されてしまう悲劇的な取立てだとか。

 消費者保護法からもはずされているため、どこにもこの不満をもっていけない。

 住宅ローンは、自己破産した場合は、借金残高免責もあるが、この学資ローンはそれができない仕組みで、たとえ死んでも追いかけてくるといわれているローンだ。

 学位がなければ、まともな職につけないとマスコミはあおる。

 軍隊へ行かなくてはならないほどの貧困家庭ではない。

 中産階級の親は、自分たちが大学へ行くときは、授業料も安く、公的な奨学金があったので、現状が悲惨な状態だということに気付いていないという。

 サブプライムローンは、リスクに疎いアフリカ系やヒスパニック系の低所得者層の人にもマイホームが持てるという夢を持たせ、そのターゲットとしたが、

 この学資ローンは、中産階級といわれる人たちに、学位をとれば未来は開けるんだという夢を持たせ、そのターゲットとした。

 ところが、学位をとったとしても、不況の中、まともな職に就けないで結局は、マクドナルドやレンタルビデオなどで働くしかないので、昼も夜も休みなく働いてもローンが払えないという人も多いという。

 サリーメイというローン会社は、一方で 政府を動かし自分たちに都合のよい制度を作らせ、各大学の理事たちに賄賂を送り大学の窓口でサリーメイの学資ローンを勧めるよう圧力をかけ、他方で 事情を知らなかったたくさんの学生の血と涙を吸って 短期間で大きく成長した企業として有名になった。

 結局のところ、オバマ大統領は、戦争も継続し、医療保険も皆保険とはかけ離れ、民間の保険会社が損をすることがない制度にしかできなかったし、教育は、一部の裕福な家庭の子どものみが将来を約束されるような教育改革しかやっていない。

 仕方がないのかもしれない。彼の周りにいる人たちの顔ぶれが、ブッシュ大統領の時とたいして変わらないのだということなのだから、選挙のときのスピーチのように歯切れよくはいかないのだろう。

 私の子どもも、社会人となり、のど元過ぎているので、日本の事情がよくわからないが、やがて孫の世代になれば、同じような状況がやってくるやもしれないとひそかに心配している。