映画 「小さき声のカノン」-選択する人々

 私は、映画が好きでフィクションの映画もよく観ますが、

時々しっかりと現実を直視するノンフィクション映画を見ないと

いられなくなるのです。

 

 政府や企業にとって不都合なことがあると、

テレビや新聞などのマスコミでは報道されません。

 日本では、まだ映画や本では取り上げることが可能なので、

自分で選択して、自分の立ち位置を確かめるのです。

 

 先日見たもう1本の映画は、

福島県二本松市原発放射能汚染から

子どもたちを守るために行動を起こした

お母さんたちの映画です。

ミツバチの羽音と地球の回転」を撮った鎌仲ひとみ監督の作品です。

 

 二本松でも、原発事故は、

家族がバラバラに暮らすことになるけれど避難するのか、

放射能汚染に子どもさらしているのではないかと

思い悩みながら故郷にとどまるのか、

選択を迫りました。

 

 二本松のあるお寺の住職さん家族を中心に、

その活動は始まりました。

 西日本の門徒さんたちから送られてくる野菜などの援助物資を

ほかのお母さんたちに呼びかけ、みんなで分け合って行く中で 

近隣の孤立していたお母さんたちが結びついていきます。

 

 25年前のチェルノブイリ原発事故で被ばくしたベラルーシの子どもたちは、

ヨーロッパ各地や日本にまで受け入れ態勢のあるところに

一時的な「保養」をすることで、

内部の放射線量を下げました。

 

 福島のお母さんたちは、このことにヒントを得て、

ベラルーシの時にもボランティアとして活動してきた人たちにお願いして

子どもたちを「保養」させる取り組みを始めます。

 

 一時的にしても、放射能汚染されていないところで

思い切り砂いじりをしたり、はだしで歩いたり、自由に遊べます。

 

 そして放射能汚染のない食べものを口にすることもできるので

子どもたちは、心も体も元気を取り戻します。

 

 嘆いているばかりではいけないと気付いたお母さんたちの小さな声や

ベラルーシからのお母さんたちの声が集まり、

共鳴して次へとつながって行く様子を

カノンという言葉で表したのは、まさしくこの映画の内容を

言い当てていると思います。

 お母さんたちが変容していく姿を

しっかりと撮りきっている優れた映画だと思いました。

 

 この映画では、2014年の映画なので新しいデータが載っていますが、

表土を取ったから大丈夫なんてのんきなことは言えません。

 私たちは、記憶の彼方へ追いやってしまわないよう、

注視していかなくてはならないでしょう。

 

 上映後、ピーター・バラカンさんと鎌仲監督のトークがありました。

 やはり、マスコミが原発のことに不信感をもっている記事を

のせることはすごく困難な状況のようです。

 独占企業にもかかわらず、東京電力は今までもたくさんの宣伝費を新聞社に払い、

政府は、国策として原発継続を進めているので、

利害の絡む大事な報道はされていないと考えてよさそうです。

 原発に関しては、常に自分でアンテナを張って情報を取り込んでいかない限り

本当のことはわからないのです。

 

 ピーター・バラカンさんは、ニューヨークタイムズだの

日本ではジャパンタイムズが、意外とちゃんと報道していると

言っていたのが印象的でした。

 といっても、英字新聞では、ハードルが高すぎます。

 

*この映画は、22日までシネマJack &Bettyで上映