冬鳥の飛来地を訪ねてー伊豆沼・内沼その3

 朝食を済ませ、一休みしてから

伊豆沼・内沼の周辺のようすを歩いて見て回ることにしました。

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 内沼の前には、昆虫館があります。

 この地域に生息する昆虫の標本や映像、

それに研究者が集めた世界の昆虫標本もたくさん陳列されています。

 

 私が気になったのは、この地域にいるという「チョウトンボ」。

 トンボの後ろ羽が太く、光線の具合で紫色に見えたり、

エメラルドグリーンに輝いて見えたり、とても美しい色のトンボです。

 夏に来たらみられるのかと係の方に聞いたところ、

素人がすぐに見つけられるようなトンボではないようです。

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 子どもがお母さんとエサやりするのどかな風景です。

 昆虫館で100円で売っているハクチョウのエサ(お米を膨らませたもの)を持って

子どもでも簡単に鳥たちと交流できるようになっています。

 ハクチョウたちもだいぶ警戒心が取れたのか、土のところへ上がってきています。

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 バス道を歩きながら、キュルキュル、キュルキュルとガンの声が聞こえると

どうしても空を見上げてしまいます。

 彼らは鳴きながら飛びます。

 私もその度に上を見上げるので

回らなかった首が回るようになり、だいぶ楽になりました

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 時々、田んぼの畔を突っ切りますが、

この日は、風もない小春日和でしたので、

2羽で飛び交うチョウやペアーになった赤とんぼをずいぶん見ました。

 寒い冬に突入する前のこんな日には、最後の命の輝きを感じます。

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 朝、沼を飛び立ったガンたちは、こうやって刈り取った田んぼにやってきて

日がな一日落穂ひろいをやっているのです。

 サンクチュアリセンターで教えてもらったのですが、

ガンは、一日に6500粒の米、300粒の大豆を食べるのだそうです。

 ガンたちにとっては、こうした田んぼがまわりにないと、

越冬地になりません。

 この地域は、すでにラムサール条約で認定されているので

勝手に開発ができないことになっていますが、

もし、この地域で米を作らなくなったら、やがてガンは飛来しなくなるかもしれません。

 

 話は飛躍しますが、十月に生協から新米が届きました。

 偶然ですがその米は、この地域の有機栽培米でした。

 人間にとっても有機栽培米を食べられるというのは、ありがたいことなのですが、

渡り鳥にとっても化学肥料や農薬を使わないで作られた落穂は、最高のエサ。

 この地域のたくさんの農家の取り組みに改めて感謝したいと思いました。

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 伊豆沼の東側にあたる登米市迫町までやってきました。

 マンホールも郵便局の看板もハクチョウをデザインしたもの。

 1軒だけあるコンビニの名前もスワンなので、ちょっと笑ってしまいました。

 この伊豆沼近辺には、ほかのコンビニはありません。

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 在来の東北線の列車は、2両編成、新田駅もローカルな感じです。

 ここまで約3時間くらい歩きました。

 何せ、伊豆沼のまわりには、新田駅の周辺にしか食べ物を売る店も食堂もないと

聞かされていたので、車のない私は、昼ご飯にありつくために歩いてここまでやってきたのです。

 午後1時半、お腹もすいていたので

この駅の先にある農産物直売所とレストランへ急ぎました。

 

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  この地域の豚肉(赤豚)やハム、ソーセージをメインにしたメニューのレストラン、「くんペル」で

私は、この地域の伊豆沼から取り出した酵母で作ったピザを食べました。

 天然酵母の香ばしいピザ生地に、この地域の農畜産物や近くの牧場でできたチーズという組み合わせで作ったピザは、

たいへん満足感がありました。

 「くんペル」というのは、ドイツ語でなかまという意味なんだそうです。

 地域の生産者が手を携えて頑張っているのがピザ一つ食べてもよくわかりました。

 レストランの横の工房では、ハムやソーセージが作られ、申し込めば料理教室にも参加できるシステムになっています。

 

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  レストランのそばには、ヤギが飼われていて、子どもたちがエサをやることができるようになっています。

 私が歩いてそばまで行くと、このヤギさんは、エサがもらえると思って、柵の間から一生懸命首を出そうとしています。

 

  踏切を渡ると、サンクチュアリの淡水魚館があり、伊豆沼に生息する魚が展示されています。

  

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  ようやく伊豆沼の向こう岸へ渡る道へでましたが、日の入り間近です。

  ここで、朝車に乗せてもらった「Oさん」に出会い、いっしょにねぐら入りを見ることになりました。

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 前に見える田んぼでは、まだガンとハクチョウが食事中でした。

 この鳥たちがねぐら入りするのを目の前で見られるといいと思っていましたが、

なかなか飛び立とうとしません。

 ほかの鳥たちがあちこちから帰ってき始めました。

 結局この集団は、すぐ沼が近かったせいなのか、かなり暗くなってからようやく飛び立ちました。

 それも、三々五々という感じでしたので、ちょっと拍子抜けでした。

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  沼に下りたガンのおしゃべりの声と空高く上った三日月に見送られ、車で宿にもどりました。