12日から、始まった平和映画祭の1本がこの「ミリキタニの猫」。
この映画は、2006年に作られた映画だが、観たことがなかった。
今回の上映は、特別編ということで以前に上映された「ミリキタニの猫」と
昨年作られた「ミリキタニの記憶」を合わせたものだ。
このフライヤーに描かれた猫は、見るからにかわいいといった感じはしない。
視開いた目は、冷静でしっかりと何かを見つめている。
それでも、猫は気になるし、
この絵を描いた画家であるジミー・ミリキタニも気になる。
彼が、ニューヨークのツインタワーが見えるソーホーの近くで路上生活していた頃、
猫の絵を買おうとしたリンダという女性と知り合い、ミリキタニの希望もあり、
写真を撮っているうちにミリキタニにの映画を撮ることに決めたようだ。
若い頃墨絵を描いていたこともあり、東洋の偉大なアートを紹介するんだと
息巻いてアメリカに渡ったのだが、路上ではあり合わせの紙に
ペンと色鉛筆のようなもので描いていた。
題材は、いろいろだが、猫の絵を描くことが多かったようだ。
原爆ドームや収容されていたツールレイク収容所を描くこともあった。
何でその絵を描いているのか、そんなことはいちいち説明はしない。
まさに自己表現の世界。
無名ではあるが、自分を「グランドマスター(巨匠)だ」と紹介するのだから
彼はりっぱなアーティストに違いない。
ミリキタニ(三力谷)と聞いた時、珍しい名前だと思ったが、
広島県に存在する苗字で、本当に少ないそうだ。
彼の背景:
ジミー・ツトム・ミリキタニ(これが正式な名前?)は、
アメリカのサクラメントで生まれたが、
生まれて数か月で母親に連れられ、広島へ帰って日本の教育を受けた。
18歳の時に父から兵学校へ行くように言われたが、
自分はあくまでもアーティストになるんだといって、再び叔父を頼って
「自由の国アメリカ」へ渡った。
彼がアメリカへ渡ると間もなく第二次世界大戦が勃発し
彼は、敵性外国人として収容所に入れられ、
ずいぶん長く点々と収容所生活を余儀なくされ、
市民権をも剥奪されることになる。
彼の言葉の端々から「自由の国アメリカ」の市民である自分が
こんな扱いを受けるのかという思いがあったことが察せられた。
戦争は、彼の夢を砕き、苦労の多い生活を強いてきたが、
彼は、いつもどの場面でも絵を描き続け、彼のまわりの人間に
生きるということはこういうことなんだと行動で示しているような気がした。
「ミリキタニの記憶」の方は、彼のことを知る三人と彼の親類などが
インタビュー形式で語ったり、手持ちの絵を紹介したりする
20分くらいの短編である。監督は、MASAさん。
*この特別編の映画、横浜では伊勢佐木町のシネマリンで18日まで。
*「ミリキタニの記憶」の監督をしたマサさんが上映後毎日トークで登場。
*館内のロビーでジミーの絵のミニ展示も必見。
*「丸木美術館」では、特別展としてジミー・ミリキタニの展示も行われている。