蓮の花咲く伊豆沼 (宮城県栗原市の旅その1)

 9日3時過ぎ宮城県の北部にあるくりこま高原駅に到着しました。

 栗原市にある伊豆沼へはここ2年続けてきています。10月になるとシベリアからやってくるマガンの群れがここへ渡ってくるからです。マガンだけでなく、オオハクチョウヒシクイやたくさんのカモたちもやってきて冬の間中伊豆沼はたいへんにぎやかです。

 今回は、伊豆沼を覆うように咲くという蓮の花を見に来たのです。このハスの茎(レンコン)は、冬にここへやってくるオオハクチョウの大事なエサになるのです。

 伊豆沼のそばにある「ウエットランド交流館」(宿舎)にいつもお世話になっているのですが、そこの夜勤の男性が夏は蓮舟をやっているからというので一度夏にもやってきたいと思っていたからです。

 この日は、台風が近づいて大荒れだと聞いていたので、駅へ下りた時に雨は少し降ってはいたものの、風は吹いていなかったのでこれで宿舎に着くまでは大丈夫だと安心したものです。

 伊豆沼のまわりには歩いて買い物に行けるお店は一つもないのです。バスなどももちろんありません。宿舎では夕飯を食べるお客さんが二人以上いると食堂をやっている方が出張してきてくれるのですが、こんな日ですから客は私一人。夕飯はでないことを聞いていたのであらかじめレンタカーを借りておきました。

 

 そこで、夕方6時ごろ、伊豆沼の東の端にある「くんぺる」というレストランへ行ってみました。歩くと1時間以上かかるところです。そのレストランも個室にお客さんが一組いただけであとは、私一人、広い館内は閑散としています。ここは、伊豆沼のまわりで生産される農産物や畜産物を材料にして提供してくれるところです。

前菜             サラダ          メイン

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スープ            デザート

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 ディナーコースです。本来私は、お肉を食べないようにしているのですが、この日は選べるメイン料理の魚が作れないというので、仕方なくここの加工工場で作っているソーセージやベーコンをメインにしました。何せ、ボリュームがすごくて本当にお腹がいっぱいになりました。ライスとコーヒーも付いて2000円でした。前菜に出た赤いのが気になり聞いてみたら、思った通りホヤの燻製でした。ホヤは皮ごと燻製するのだと教えてもらいました。やりたがり屋は一度やってみたいと思ったのです。

 

 翌朝の宿舎の窓から見た伊豆沼です。

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 もちろん、前の晩は晴れるように祈っていましたが、こんなに見事に晴れるとは思ってもいませんでした。水面にバラ色の雲や深い緑の木立が映り込んでいてそれはそれは美しい光景でした。

 夜勤の男性と朝の挨拶を交わし、朝一の蓮舟にのせてもらえるように頼んだのですが、「毎日順番があって、おれは今日は6番目なんだよ。もっと上手な人がいるから。」というので、仕方なく船着き場まで車で行きました。

 一番舟は8時出発だということです。モーターで動かす10人乗りくらいの舟が全部で11そう停まっていました。

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 右の方から1そうやってきました。沼の近くの人は舟で通勤なのでしょう。ところが待っている間に宿舎の男性があわててやってきて、みんなに「ウエットランドのお客さんだから、俺がいくわ。」と言いながら舟に乗せてくれました。ほかには乗る人もいなかったので「貸し切りだわあ!」と喜んでいるのもつかの間、数メートル進んだところで新しいお客さんが走ってきました。結局戻ったので乗客は3人になりました。

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 西の方は、蓮の生えていないところがあります。宿舎の方に聞くと、沼の水質が悪くなるので毎年一部を刈り取っているのだとのことでした。大きい葉は蓮、小さい葉はヒシです。ヒシの実は特にヒシクイの大事なエサになります。

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 さあさあ出発!一面ハスです。ハスの海を泳いでいくような感覚になります。舟はハスの茎や葉をひっかけないように細い水路を進んで行きます。

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 蓮の花って、中心部から光が放射状に出ているように見えて、バラの花とも違う美しさです。ハスの花の命は3,4日だと言われています。咲いて閉じて咲いて閉じて・・・最後は花弁がパラパラと落ちて花は終わります。花弁にしわしわができているのは、2日目とか3日目の花ではないかと思います。時間が経つとしわしわになるのは人間の皮膚も同じですね。わが身は、3日目当たりかと思いますが、あえて鏡を見ないように努めております。

 

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 花は、午前七時ごろから九時頃までが一番見ごろだそうです。午後になるとほとんどの花は閉じてしまいます。ちょうど来る前に調べた時は、7分咲きとのことだったので、一番いい時に来たのだと思います。

 この伊豆沼と隣の内沼では7月の20日頃から8月末までが「はす祭り」ということで、毎年舟が運行されています。

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 花粉がめしべに付き受粉が終わって役割を終えた黄色い雄しべです。ベトナムではこの雄しべを使い、お茶の葉に甘い香りをつけて「蓮の葉茶」として売っています。花が開いているわずかな時間にたくさんの雄しべを集める仕事は大変だと聞いたことがあります。一度日本で買って試したことがありますが、とてもいい香りです。

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 蓮の実です。蓮は捨てるものは何もないと言っていいほど役に立継植物です。できた種が大きくなったものも食べます。ほくほくしておいしいし栄養価も高いそうです。

 この伊豆沼に生えているピンクの花の蓮は、昔からある蓮で改良されていない種類です。できたレンコンは小さくて硬くて人間には食べてもらえないのですが、ハクチョウたち水鳥が食べてくれるのです。

 まわりの農家でも人間用の蓮を植えていますが、花の色は白くレンコンは大きく柔らかいのです。味をしめてしまえばハクチョウだって当然美味しいと思うだろうし、取られないようにネットをかけて栽培しているのを見かけました。

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 蓮の葉に乗っているコサギを何羽もみかけました。ダイサギアオサギは一羽もいません。「コサギは軽いから?」と聞いたら、その通りでした。コサギなら支えてもらえるけれど、それより大きくて重い鳥は、乗ったら沈んでしまうからだそうです。

 彼らは、蓮の葉のお立ち台から魚をねらって魚を独り占めです。水深は平均1,6ⅿくらいあるので、大型の鳥は水底に立つこともできません。一般的に大は小を兼ねるといいいますが、この場合小は大より勝るということになるのでしょうか。コサギは幸せ者です。

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 逆さコサギです。

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 蓮の葉にたくさん水玉ができています。

 蓮の葉の上で水がはじかれ水玉になるのをロータス効果というそうで、いろんなものに応用されていると聞きました。

 

 ぎっしりと生えた蓮の間を進む舟に揺られてお釈迦さま効果に酔いしれた30分でした。

 今まではこの夜勤の男性のことを気安く「おじさん」などと呼んでいたのですが、今回鏡を見ないおばさんと同じ生まれ年だと判明しました。「お互い健康でいましょうね。」「また来てくださいよ。」と言葉を交わして舟をおりました。遠い宮城県に友だちがまた1人できたような気がしました。

 次に続く。