南三陸の旅4(ラムサール湿地登録地・志津川湾ーコクガンを訪ねて)

27日日の出

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 2日目は障子を開けるとまばゆい光が差し込みました。それだけでいい一日が始まりそうな気がしてくるから不思議です。

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 朝ごはんを食べて戻ってみたら、もうだいぶ太陽は上って、昨日の午後コクガンの子どもたちと会った津の宮漁港がよく見えています。気温が低いのでまだ昨日の雪が日陰に残っていました。

 この日は、コクガンの観察ではなく植物の話があるということで、午後また「海のビジターセンター」へ行くことにしていました。

 午前中はこの辺りの砂浜を実際に見てみたいなと思っていましたが、宿のおかみさんは、手前は堤防工事、ここから先の浜はほとんど岩礁海岸で砂浜がないというのです。

 仕方がないので、津の宮漁港の一つ先の入り江まで行ってみることにしました。

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 目の前に見える「椿島」がずいぶん近くに見えます。この島は、タブの木とツバキがたくさん生えている島だそうです。ビジターセンターの紹介ビデオの受け売りですが、陸から離れているため、動物に実を食べられることがないので、ツバキの木が群生しているのだとか。誰もいないところだと聞くと冒険心が芽生えてきます。ビジターセンターからシーカヤックで行けそうな気がするのですが。

 この浜も小さな港になっていて突堤に鳥ガ集まっています。今日もコクガン?と思いきや残念でした。

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 なあんだ と言っては失礼かもしれませんが、うちの近くにもたくさんいるカルガモくんでした。 自分ではここを「カルガモ浜」と覚えることにしました。たくさんの浮きが浮かんでいるので、何かを養殖しているようです。

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 わずかに砂利浜がありましたが、石だけで海浜植物は何も生えていません。

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 やはり揚船場に海草はしっかりと生えていました。今日は、日曜日で人もいないしエサもあるのにコクガンたちは来ていません。帰りは、車の通りでなく、山に入る道を辿って行ったら、隣の津の宮漁港へ裏から入って行く道でした。

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 年のため昨日のところへ近づくと、ここにはやっぱりコクガンが来ていました。6羽とヒドリが1羽。

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 食べたり、毛づくろいしたり。天気もいいし日曜で静かだしコクガンからものんびりオーラが感じられます。(逃げられないように遠くから撮っているので、ボーっとしてます)

 

 この日参加したセミナーの内容です。

 海辺のセミナー ~7年目のいまだから、私たちの海辺を考えたい~

 東日本大震災から7年。海辺の景色や環境はどのようにかわったのでしょうか。そして、私たちは世代を超えて、自然の脅威に向き合い、豊かな恵みを共にすることができるのでしょうか。

 3回シリーズのうちの2回目の講演や交流がもたれることになっていました。

 この近辺に住んでいるわけでもないのにとは思いましたが、茅ヶ崎海浜植物とは違うのだろうか、どんな活動をなさっているのだろうか、三陸海岸の海辺のようす、海浜植物のことも知りたいと思って参加しました。

 その日の講演は、島田直明さん(岩手県立大学准教授)の「三陸海岸の砂浜 海浜植物と防潮堤」です。

 植物生態学が専門の先生ですから、私が学んできた海辺の植物の話が出てきてたいへん身近に感じながら話が聞けました。お話の中に茅ヶ崎辺りでは普通に生えているハマゴウという名が出てこないので、お聞きすると東北ではハマゴウは育たず、代わりにハマナスが一般的だと教えてもらいました。

 また、植物の種を取り、苗を育て、海辺に植栽する活動を岩手県でもやっているという実践のお話もありました。場所は、違うけれども活動の基本は同じなんだなあと思いました。

 交流会では、地域で活動していらっしゃる方たちから予想した通り、防潮堤が山からしみ出している水を遮断して砂浜に栄養分が届かないのではないか という話があり興味深かったです。

 午後4時で終了。

 私は、どうしても4時半のBRTに乗らなければならなかったので、タクシーを呼んでもらって会場を後にしました。

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 陸前戸倉の駅です。まわりには自販機があるだけでお店など1軒もありません。トイレと待合室があるだけです。

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 上り、前谷地駅行きのバスがきました。車両感応式信号の前で必ず停車します。鉄道と同じで単線ですから途中ですれ違いができません。すれ違うのは、こういうところのみです。行きに志津川へ行った時にあまりに長いトンネルなので、どれくらい距離があるのか運転手さんにきいたところ、出てきたトンネルは、3,8キロあるのだそうです。鉄道の時からの物だそうですが、幅が狭いので圧迫感があるせいかすごく長く感じました。

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 4人しか乗客はいませんでした。日陰の多い山の中を通って行くのでここはずっと雪道でした。この日私は、峠の一軒宿追分温泉に泊まることにしていたので、BRTに一駅だけ乗って陸前横山という駅で下りました。ここからは、タクシーか歩いて行くしかないので、宿の方が手配をしてくれたタクシーに乗って宿へと向かいました。

 貴重なイヌワシが1羽生息していると言われている南三陸との境の山の中に入って行きます。もうだいぶ薄暗くて道は凍っているはずでしたが、この峠道は雪が降ると一番に融雪剤が撒かれるので凍らないから大丈夫だと運転手さんが話してくれました。宿は峠を少し下ったところにあります。

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 これがお宿です。
 2012年の9月に一度来たことがある温泉ですが、その時は気づきませんでしたが、暮れなずむ頃の追分温泉の灯りは特別でした。オーナーがLEDとか蛍光灯とかは嫌いで、普通の電球を使っているのだと運転手さんが話してくれました。窓からこぼれるオレンジ色の灯りは本当に温かで心を和ませるのだと改めて気づかされました。窓枠もきっと彼独特の美学なんでしょう。昔の学校の窓のようです。

 夜空には冬の1等星たちが特別の輝きを放っていました。

 つづく。