春うららの山下公園

 

 

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 山下町へマスクの布地を買いに行った21日のこと。とってもいい天気で、買い物に行ったついでに山下公園を散歩。

 ホテルニューグランドの前に咲くシダレザクラがもう満開。今年はソメイヨシノより早い。

 休日でもありいつもなら観光客がたくさん詰めかけているだろうこの日、犬を連れて散歩する人やジョギングする人はいるけれど、記念写真を撮っている人の数は少ない。やはりコロナウイルスの影響で皆さん外出を自粛しているからだろうか。

 

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 海の方にはいつもの氷川丸。係留ロープにはいつもの白い鳥。

 どの子も同じ顔をしているようだが、ようく見ると目の大きさや頬の灰色模様が微妙に違う。鳥だってちゃんと個性があるんだと言われそうだが、人から見るとざっとユリカモメ。くしだんごのように並んでひなたぼっこ。

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 氷川丸より左側の大桟橋方面に目を移すと、やっぱり

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 白と黒、たまに茶色の水鳥が首をうずめて眠っている。その数ざっと百羽くらい。

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 大写しすると、予想通り、大岡川にもやってきていたスズガモだ。

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 前がオス、後ろがメス。

 今年は、スズガモが港にもたくさんやってきていたのだろう。その一部、好奇心が強いのが川伝いに遡って弘明寺辺りまで来ていたようだ。

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 噴水の池で水浴びしているのはユリカモメ。この日は気温もかなり高くて水浴びが気持ちよさそう。

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 5羽いたのに次々と飛んで行ってしまった。この子だけがいつまでも水で遊んでいる。顔もあどけないので幼鳥かもしれない。

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 山下公園から、バスに乗るために元町まで歩いてきた。橋の袂を見ると、ソメイヨシノが3分咲き。

 このサクラは、日本からアメリカへ送られたソメイヨシノが里帰りしたものだ。日本のサクラをアメリカに送るについて大きく貢献したアメリカ人女性シドモアさん。シドモアさんが眠っている山手の外人墓地に里帰りしたサクラを植え、接ぎ木して増やしたもののうちの1本がここにも植えられたという。

 

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 元町もお客さんが少なく、お店に活気がない。

 ここからバスに乗り、うちへと帰る。このバスは山手の丘の尾根伝いを走っていくので海の見える丘公園や、外人墓地、山手の西洋館などを通る路線、ちょっと時間はかかるけれど観光をしているようで私の好きな路線だ。

 

 

マスク

 

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 スワニーという生地や洋裁の小物のお店からよく情報をもらっている。「マスクの材料のガーゼやシルケット(ニット生地)マスク用ソフトゴムが入荷しました。」というメルマガが20日の夕方携帯電話に入ってきた。

 

 使い捨てマスクがわずかしかないのでドラッグストアを通るたびにマスクはあるかなと覗くが、「今日は入荷していません。」という手書きの看板が立てかけられているのを見るだけだ。

 

 仕方がないので、いよいよ布地で作るかという気持ちになって土曜日にスワニーに出かけた。バスを乗り継いで行くので、うちを9時過ぎに出たのに山下町のスワニーのお店に着いたのは、10時20分頃。

 

 開店は、10時。まだそんなに来ていないんじゃないかとたかをくくって地階の売り場へ行くと、もはやレジの前に20人くらいの人が列を作っていた。思わず「えー、すごい。もうこんなに並んでいるんだ。」と声を出してしまった。

 

 びっくりしていても始まらない。今日のお目当ては、ニットのシルケット。もうすでに50cmの幅に切られて並べられている。白とベージュの2種類を持ってそそくさとレジへの長い列に並んだ。

 

 このシルケットニットというのは、お店の説明では肌触りがよく、上品な光沢感があり着け心地も大変よいとのこと。おまけに耳にかけるゴムはなくても伸び縮みするタイプの生地なので切りっぱなしにした紐でいいというのもいい。

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(ひもの結び目は中に入れてすっきりさせることができるし、使う人により紐の長さを調節することもできる)

 

 一応これでマスクは10個分ほど作れるが、きっちり詰めて取っていくともう4個くらい作れそう。型紙寸法図をサービスでくれるし、スワニーのホームページで作る手順なども動画で教えてくれるので誰でも作れるはずだ。

 

 とはいえ、ここのところミシンを操作していなかったので、下糸を蒔くところからつまずいて糸をこんがらかせ、うまく動いたかなと思うと糸がからんでやり直しとか、軌道に乗るまでに時間ばかりかかった。私は、特に不器用なので時間がかかる。

 

 Ⅿサイズを3個と、Lサイズを5個とようやく8個できた。さっそく今日用事で会った妹に一つ上げたので、7個が手元に。どんどん作って困っている人に使ってもらおうと思っている。

 

 「山梨県の中学生が600枚ほどのマスクを手作りして県知事に渡した」 というニュースを見たが、自分で作ってみるとその大変さが身に染みる。まだ10個にも満たないのに、600枚というのはものすごい。まだ中学1年生なのに、困っている人に役立ててほしいという気持ちがとっても嬉しいと思った。

 

今季大岡川水鳥オールスターズ

 昨年から今年にかけて大岡川にやってきた冬鳥たちの話。

 以前のようにゆっくりと川沿いを歩ける時間がなくなったので、スポーツセンターへ行くときに橋の上から見渡すだけのことが多くなった。

 以前は木枯らし一番というと鳥たちがやってきたのに、今季は12月になってもそんな日は来なくて、1月になってようやくユリカモメが大騒ぎをしているのを見かけた。

1月14日 観音橋付近

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 ユリカモメは、エサを撒いているとすぐに察知して大勢で押しかけすごい勢いで争奪戦を繰り広げる。思った通りパンをちぎってやっている人がいた。ほかの鳥ガやってきているかと探してみたら、ユリカモメの中に一羽のホシハジロが混じっていた。そんなところにいたらいじめられてしまうのではないかと心配して見ていたら、動じることなくパンくずにありついていた。飛んでいるユリカモメの下に、嘴が覗いているのがそうだ。

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 2年前の4月から10月までの半年間、けがをしたホシハジロのおっかけをしていたのでホシハジロには特別な思い入れがある。あの時のホシハジロはもういないが、去年の冬も今年の冬も仲間のホシハジロはやってきている。

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 その昔もけがをしたホシハジロが引き潮になると休息場所にしていた場所まで歩いて行くと一羽のオスがいた。

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 あの時と同じ赤い目をしてじっとたたずんでいる。違うのは、羽の色がとってもきれいでまるまるとしているところだ。水の中にいるのは、きっとメスだろうと思ったのだがどこか違う。カモのメスはどれも茶色で細部を見ないと判定できない。
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 目が黄色、嘴の上に白い部分がある、その特徴を基にうちへ帰ってから調べた結果、この鳥はスズガモのメスではないかという結論に達した。おおげさだが、知らない鳥を見て判定するのは結構手間がかかる。

 

2月18日

宮城県の伊豆沼辺りからは、ハクチョウやマガンなどが北へ帰り始めたという知らせを聞いていたが、カモたちはまだこの辺りにとどまっていた。

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 星座で行くとぎょしゃ座のように五角形に並んでいる鳥たち。真ん中がホシハジロのオス、右回りでスズガモのオス、3番目も同じ、4番目はオオバン、五番目がなぞだったスズガモのメス。

 離れたところからも嘴の上が白くなっているのがわかる。この日は、頭の黒いのがたくさんいたのでキンクロハジロが来ているのかなと思ったら、背中がグレーで頭の黒いところが光線の具合で緑色に見える。ああ、スズガモが来ているんだとすぐにわかった。1月にも来ていたのだろうけれど、メスしか見つけていなかったので、何だろうと悩んでしまったのだ。

 

 スズガモは山下公園の前の海に群れでやってきているのは見たことがあったが、ここでは初めてだ。海にいるカモといわれているからか、遠征してこなかったのだが、今年はどうした風の吹き回しか遙々大岡川までやってきた。

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「ようこそ、スズガモ!」この日は、スズガモ祭りで写真もたくさん撮った。

大岡川のこの辺りまでは、汽水域らしく、春や秋にはボラらしき魚やクラゲも入ってくる。

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 ペアーと言えども、いつも一緒に泳いでくれないので、やっと仲良くフレームに入ってくれたスズガモのオスとメス。

 

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 こちらもフレームにやっと入ったホシハジロのオスとメス。二羽とも仲良くお休み中。 本当にカモのペアーは見つけるのが難しい。

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 新入りのスズガモに気を取られて写していなかったのだが、この日は、オオバンが10羽も来ていた。今までの私の記憶の中では最高。群れといってもいいくらいだ。オオバンは毎年やってくる。

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 最後にお馴染みのキンクロハジロだ。今年はホシハジロよりも少ない。メスも来ているのだろうが、新入りのスズガモのメスのことで頭がいっぱいで、キンクロのメスにまで気持ちが行かなかったということだ。

 

 以上が今季の水鳥オールスターズだ。

3月15日 橋の袂のヨコハマヒザクラがぷっくらとした蕾を膨らませていた。

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 横浜のサクラの開花は18日だったようだが、この日ヨコハマヒザクラの隣のソメイヨシノ開花宣言といってもいいだろう。

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3月15日f:id:yporcini:20200318071644j:plain

 弘明寺の門の所にあるおかめザクラの花にヒヨドリが。

 近くに人がいても警戒することなく一心不乱に花の蜜を吸う。

 春が来てよかったね。

 

 

 今年ヒヨドリに目がいくのにはわけがある。

 昨年の5月、うちのベランダに植えてある「カレーリーフ」が近年になく花を付けた。

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 10月、その花に驚くほどたくさんの実が付いた。

 はじめは緑、それがだんだんと赤くなり紫に変わり、熟しきると黒ずんでくる。ところが毎日黒ずんだ実が減っていく。

 ある日うちにいると、ベランダから鳥の嬉しそうな鳴き声が聞こえてくる。あまりにも嬉々としているので何事かと覗いてみると、カレーリーフにまとわりついている鳥ガいた。そのとたんあわてて逃げていった。熟した実を採っていた犯人はヒヨドリだった。

 ヒヨドリが甲高い声でキー、キーと叫ぶ声や、ヒーヨ、ヒーヨと飛びながらの声は始終耳にしているが、この時の鳴き声は特別だった。

 ピチュルピチュル、チュチュチュと いかにも心地よさそうな声だ。人間が美味しいものを食べた時に、「ウー、うまい!」「とろけそう!」などと発するのと同じなんだろう。

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 たくさんあった実も最後になった時、どんな味なのか一粒食べてみた。カレー風味のほのかに甘い味がした。

 

 そして冬。

 エアコンに頼らず、今年は湯たんぽと毛布で寒さをしのいでいたので、寒さには敏感になっていた。

 りんごを食べた時に捨てる芯のところをベランダの手すりのところに置いておくと、どこで見ているのかヒヨドリがやってくる。

 餌付けするつもりはないが、こんなに寒い日にはエサを見つけるのも大変だろうとちょっとしたお助けのつもりだった。

 

 3月10日

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 雨がそぼ降る日だった。

 建物のメンテナンスで翌日から組み立てた足場がネットで覆われる予定になっていた。最後なので、この日は大奮発。ジャム用のりんごの芯をたくさん置いておいた。

 警戒心が強いのでレースのカーテン越しでしか写真は撮れない。

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 一口食べてはまわりを見まわしつつリンゴを食べる。

 私が動いたのがわかったようで、次の瞬間銜えたまま飛び去った。

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 前にあるケヤキの枝へ停まった。しばらく見ていると落とさないで食べきった。

 残ったリンゴはどうしただろう・・・と私が外出から戻ると一つも残っていなかった。1羽で全部食べきったのか、以前二羽でやってきたこともあるので友だち、いやパートナーと一緒だったのかもしれない。

 

 横浜も開花宣言はまだだが、サクラが咲き始めたので一安心。

 ヒヨドリの大好物の花の蜜を思う存分堪能できるからだ。

「ハナネコノメ」を訪ねて(裏高尾) 

ハナネコノメソウ

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 昨年からの懸案だった花を探しに裏高尾まで足を延ばしました。見たいと思っていた花がこのハナネコノメソウです。湿った川の縁に群生する花ですが、友人に教えてもらった日影沢には見当たりませんでした。昨年の19号台風で沢には大きな岩が上流から転がり倒木が流れを塞いでいるところもありました。群落があったところは、水で流され跡形もなくなっていたのです。

 

 ところが、高尾発10時12分のバスに乗り合わせた女性がとても親切な方で道を尋ねると植物を見つけながら歩いて下さったのです。日影沢からいろはの森を経て高尾山の頂上へ行こうとしていたのですが、道をまちがえてしまったのでキャンプ場まで戻って、ついでに昼ご飯を食べることにしました。

 

 そこへまた一人で見えた83才とおっしゃる女性が来て、隣のベンチでお弁当を食べ始めました。地元に住んでいらっしゃる方で、時間があると気ままに歩いているのだということでした。雨上がりの朝は沢へ来ると野鳥がたくさん集まっているのでそれを見によく来るのだそうです。膝の半月板を痛めて今はあまり高い山には登っていらっしゃらないようですが、以前は穂高や蝶が岳などへ行っていたというのでびっくりです。今も上高地が好きで松本に泊まり、朝一のバスで日帰りで行ってくるのだとおっしゃっていました。

 

 その方が先に登って行かれた後、二人でいろんな花を愛でながら、お目当てのハナネコノメを求め、結局蛇滝口まで下って滝への道を上って行きました。滝のある小屋のちょっと手前の道に「あれが、ハナネコノメだよ。」というので近づくと、ありました、ありました、ハナネコノメが。

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 早春の妖精は、薄暗い日陰にひっそりと咲いていました。葉も花も3ミリから5ミリくらいの大きさで知った人でないと遠くからでは見つけることはできなかったと思いました。

 白いのはガクで、4枚、その中に赤く伸びているのが葯の袋を被った雄しべ、背の高いのが4本と、短いのが4本。何で2段階に分かれているのかと思いました。たぶん高い雄しべに異変が生じた時に低い方がカバーするように危機管理がプログラムされているのかなと想像しました。生き物に備わっている生命のしくみというのはものすごいなと一人感心してしまいました。

ヤマネコノメソウ

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ヨゴレネコノメソウ

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 ネコノメソウには、ヤマネコノメソウ、ヨゴレネコノメソウなどたくさんの仲間がいて、小さくて目立たない花なのに好きな人が結構いるのです。中でもハナネコノメソウは、白と赤のコントラストが鮮やかで、野草好きの心をつかんで離しません。春をいち早く告げる小さな小さな妖精のような気がします。

 

 いろんな植物の知識がある方がご一緒して下さったので見つけることができましたが、たぶん一人では今回見つけることができなかったかもしれません。そのご婦人は、元ワンゲル部で丹沢にも北アルプスにも昨夏私も上った森吉山にも秋田駒ヶ岳にも登っていらっしゃったので、お話も合い楽しい時間を過ごせました。私よりも3つ年上の方でしたが私と同じで一人で出かけることが多いそうです。今回は、私のために心を砕いて下さり本当にありがたかったです。

 

電話番号もメールのアドレスも聞くことなく、またこの辺りで逢えることを期待しつつ、お別れしました。

 

コロナウイルスの流行で気持ちが重い毎日ですが、人が少ない山で春の妖精を探すのは空気もすがすがしく、気持ちも軽快になります。皆さんも人があまり訪れない自然がいっぱいある場所に行かれてはどうでしょうか。因みにあんなに混んでいるといわれた高尾山ですが、裏高尾は梅が満開、表高尾も人通りが少なかったですよ。ただし花粉症の方にはお勧めしない方がいいですね。スギ花粉がたくさん飛んでましたから。

 

 

 

 

贅沢な粕汁

鮭の粕汁

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 久しぶりの食レポ

 冬になると新潟の村上市にある鮭の「きっかわ」が、横浜のデパートの催事にやってくる。震災の翌年に村上を訪ねた時にお店で買い物をしてから、必ず案内を下さるのでこの季節毎年買いに行っている。

 ここの塩鮭は、村上の三面川に上がってくる鮭を使い、塩漬けした後寒風にさらし、いい加減に発酵させているので、とっても美味しい。と言っても、一切れ千円を下らないので、私はその切り落としを買い求める。小さく切られた鮭は、粕汁に使うにはぴったりなのだ。

 さて、作ろうにも酒粕がない。スーパーにも置いていないし、弘明寺の商店街に一軒だけある酒屋まで買いに行った。

 店頭に3種類置いてあった。値段は、500g370円と500円。どうしようかと迷っていたら、店の女性が出てきて、「八海山の大吟醸酒粕にしなさい。もうこれきりで、入らないからね。」というので、大吟醸なら香りもよさそうだしと思ってそれを買うことにした。もちろん、500円のだ。

 酒屋で八海山の大吟醸を入れてないと粕だけでは仕入れられないみたいなので、運がよかったのかもしれない。酒飲みでもないのに、大吟醸を飲んだいい気分になるから単純だ。

 

 というわけで、昨日の晩は村上の鮭と八海山の大吟醸で一人盛り上がった。本当に上品なツンとくるお酒臭さがない。お世辞でなく美味しい。ちょっぴりお酒も飲みたいなくらいの気分だった。もちろん、体もぽかぽかになる。

 

 

 

 

 

今日もどこかで 馬は生まれる

今日もどこかで馬は生まれる

金曜日に観てきた映画の紹介である。

競馬のスタート情景からこの映画は始まる。ファンファーレが聞こえ、客席からのウォーというどよめき、いよいよスタート。競馬に行ったことがない私でも、何かとてつもない大きなことが始まりそうな興奮が伝わってくる。

 

一つのレースで勝利を収めるためには、表には見えない人たちの手が加わっていることも何となくはわかっていたし、レースから引退した馬がどうなっているのかもボーっとした形で想像はできていたが、本当のことは知らなかった。

 

映画では、競馬を楽しむ人、食肉センターで働く人、競走馬の生産に携わる人、訓練をする人、馬主さん、競走馬を乗馬の馬として世話をする人、人を乗せられなくなった馬を引き取り養老牧場で世話をする人、人を乗せなくても馬が経済活動に参加できる方法を考えている人など馬に関わるたくさんの人が登場する。

 

この映画は、華々しい栄光を得た馬も、一勝もできなかった馬も、現役から引退した馬のセカンドキャリア、サードキャリア、そして馬生(馬の一生)最後までを埋める映画でもあり、それを知った上で自分ならどう考え、どうするかを問う映画でもある。

 

この映画の中で、馬は「経済生産動物」だという言葉がインタビューの中で聞かれた。生を受けた仔馬も親と一緒にいられるのは1年足らず、1歳になるとセリにかけられ競走馬として訓練が開始される。そして、レースで走れなくなったら、その後のことは追ってはいけないと言われて仕事をしているという人もいた。競馬の一端を担っている人でも自分の仕事を離れた後の馬のことははっきりとは知らないのだ。ある意味タブーになっていることも知った。

 

「経済生産動物」という言葉には、とっても冷たい響きを感じるが、ペットショップで売られている犬や猫だって2か月も経たないうちに親と引き離される。人間が食物としていただいている牛や豚や鶏だって人間の都合で寿命を全うすることはできない。何も馬だけが特別ではない。言ってみれば、そのすべてが経済に組み込まれた命だと改めて気づかされた。

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写真は、この映画の監督 平林健一氏。上映後にお話を伺うと、まだ32歳の若い青年である。この日、監督と一緒にご挨拶に見えた女性がいる。(うまく撮れなかったので写真なし)認定NPO法人 引退馬協会代表理事の 沼田恭子さんだ。

この協会では馬を引き取りたいという人と馬を繋ぐ仕事をしている。直接一頭の馬を引き取ることだけでなく、フォスターペアレント制度という仕組みもあり、大勢の人で力を合わせて安定した環境で終生大切に繋養することができるのだ。

 

競走馬として生まれてくるサラブレッドは年間約7000頭。そのうちの一握りの馬だけしか活躍できない。競馬というギャンブルがなければこうした馬の命のことも問題にならないかもしれないが、世の中に競馬をやめようという大きな声は聞こえてこない。

 

この映画を紹介しようと思ったのは、上映してくれる映画館がとても少ないことだ。東京で1館、神奈川でこのシネマリン1館。今週の金曜日でシネマリンも終わるので、馬に関心がある方にはぜひ観てほしいと思っている。