この映画はインド映画ですが、有名なスターも出てはいないし、インド映画に付き物の歌と踊りの出番もほとんどありません。それだけでもすごく変わった映画といわなければなりませんが、この映画は、脚本がありません。
監督が、学校で本物の教科書を与えて、ワークショップを行いながら、一年半かけて撮影した映画だそうで、子どもたちは最後まで映画の撮影をしていたのだと気付かなかったそうです。
いわば、半ドキュメンタリー・半ドラマの手法でできた映画ですから、子どもたちの自然な姿が捉えられていて、見ているものに躍動感を感じさせます。
主人公のスタンリーは、クラスの中でいつもみんなを笑わせることができる魅力のある子どもで、クラスの中心的な存在です。
さて、この話は、題名のようにお弁当にまつわるお話です。
お昼になると、みんなはそれぞれの家庭に応じたお弁当を持ってきて食べるのですが、スタンリーは、いつもお弁当を持ってきていません。
スタンリーは、昼になると、「外で買ってくる。」といいながら、実は、水道の水をがぶ飲みして飢えを凌いでいるだけだったのです。
子どもたちもそのうち気がついて、お弁当を分け合って一緒に食べるようになります。子どもたちのこのシーンでは、とても温かいものを感じます。
どのお弁当も美味しそう。家族の気持ちがこもっています。
ところが、ある先生にそのことを知られて、「弁当を持ってこないやつは、学校へ来ては行けない。」と言われ、さすがのスタンリーもショックで、翌日から学校を休みます。
ところが、最後にスタンリーは、とても大きなお弁当箱を持って登校します。
お弁当を侮ってはいけません。お弁当には、子どもだけでなく、家庭環境が見え隠れします。
経済的なこと、宗教的なこと、お母さんの料理の腕前など・・・・・・
私が大昔に作っていた子どもに持たせたお弁当のことを思い出し、忙しかったとはいえ、貧しい内容だったと胸が痛みました。
この映画の最後に、スタンリーの生活の全容が分かります。
決して面白おかしい内容の映画ではないにもかかわらず、つい笑ってしまう場面がたくさんあって、爽やかな気分になれます。
私が見に行ったのは、火曜日でしたが大勢の人が観ていました。
面白い映画なので、口コミかなと思いましたが、どうも新聞の映画欄で紹介されていたらしいです。マスコミの影響は大きいです。残念ながら、Jack&Bettyでは、今日が最終日ですが、東京の下高井戸シネマでこれからやる予定のようです。興味がある方は、ネットで検索してみてください。
追記 要望が多く、この映画は9月21日からもう一度アンコール上映されることになったそうです。時間などは、横浜シネマJack&Bettyのホームページをご覧ください。