八方池ハイキング

 旅館のご主人が

「明日はきっといい天気だよ。」

と言って、夕食の後コーヒーを入れて下さいました。

 

 なんとこの日の宿泊者は、私たちのみ。

「温泉も独り占めですよ。」

とのこと。

 エレベーターは他の人が使わないので

 いつも私たちを待っていてくれるのです。

 翌朝起きると明るい朝日が差し込み、窓を開けるとひんやりした風が入ってきまし

た。

 朝食をとった後、お昼ごはんを買いに白馬の駅近くのコンビニまで行かなくてはなら

なかったのですが、ご主人が用意を整えた私たちを車で連れて行ってくれました。

 私たち二人しかお客さんがいなかったとは言え、本当に親切にしてもらいました。

 おにぎりと行動食を買って駐車場へ戻ると、なんと白馬三山がくっきりと見えるじゃ

ないですか。ここでもう山に登頂した気分です。

 

 ゴンドラの駅まで送ってもらい、昨日のゴンゴラ「イブ」のお友だち「アダム」に乗

ってうさぎ平へ。そこからアルペンクワッドリフト(4人乗りリフト)に乗りかえ、さ

らにグラートクワッドリフトで1680mの八方池山荘まで到着です。

 

 山荘からしばらく行くと分かれ道があります。右が尾根伝いに歩くルート、左は歩き

やすく整備された木道コース、もちろん安全第一の私たちは、英語でeazy と書かれた左

ルートを歩いて行きました。

 見晴らしのいいところで雲が取れた時に撮った白馬三山です。左側の頭が三角に尖っ

たのが白馬鑓が岳、真ん中が杓子岳、右側が白馬岳。一番高いのが白馬岳で2932m

です。白馬白馬と名前だけはよく聞いていたので、どんな山なのか興味がありましたか

ら天気に恵まれここでその姿が見られてとっても嬉しかったです。

 何回か雲が取れましたが、白馬の姿はなかなかクリアーに見られませんでしたから

本当に山は早朝に登らなくてはだめだなと改めて思いました。

 ルートの左側に見えたのは、右側が五竜岳、左側が鹿島槍ヶ岳。2年前に行った小川

村の宿からしっかりと見えていた山のうちの二つです。遠くからでしたので五竜岳も鹿

槍ヶ岳もこんなに山肌が切れ込んでいるとは知らず、荒々しい山なんだと改めて感じ

ることができました。鹿島槍の双耳峰を見てとっても懐かしい気持ちになりました。

 登って行くと目安になるケルンがありますが、これはたぶん「八方ケルン」。

 これが「第3ケルン」。下に「八方池」が見えます。私たちが今回目指した池です。

 思ったよりずっと小さな池で驚きました。

 八方池に白馬三山が鏡のように写り込む写真を何回も見て、この池に映り込む白馬三 

山の写真を撮りたいと思ってきたのですが、あいにく頭に白い雲を被ったりして夢見て

いた写真は撮れませんでした。

 どうやったらうまく撮れるのか知りたいとは思いますが、今さら高性能のカメラやレ

ンズを用意するつもりはないし、これで満足することにしました。これだけよく晴れる

というのも運がいいのですから。

 

 ここで用意していたおにぎりやパンなどを食べ一休みしました。

 八方池もこれで見納め。不安のあるひざを抱えながらの下山、石がゴロゴロとした尾

根道はかなりゆっくり慎重に歩きました。降りている最中に私よりもお年が上だと思わ

れる女性に会いました。

 「おいくつなんですか。」とお聞きすると「86才。以前登ったことがあるから大丈

夫なんです。」とのこと。

 しばらく登って行くその方の後姿を見送っていましたが、私ももうしばらくは山を選

べば彼女のように一人でも登れるかもしれないなとちょっと勇気が湧きました。

 八方山荘に戻り着いた時に、頑張ったご褒美にブルーベリーとバニラのミックスソフ

トクリームを食べました。

 

 下山途中に見た植物

 ハッポウウスユキソウ          カライトソウ

 ハッポウの固有種            柔らかい絹糸を連想させる

   

 ハクサンタイゲキ           モウセンゴケ

 別名 ミヤマノウルシ         山道の崖のようなところに生えていた

 トウダイグサ科 真っ赤に紅葉している 名札がなければ小さく見逃してしまう

   

 

ウメバチソウ 

旬の花ではないと思うが、あちこちに散らばって咲いていた。

 

 宿の夕食の時、山の話になり、ご主人に「ウメバチソウ」が咲いていたと言うと

あの花は、咲き始めの頃は、クリームがかった白なのに、この季節になると真っ白にな

るという話を聞いた。ご主人は、山の花にも精通していらしてもっと話が聞きたいなと

思った。珍しい花ではないが、今回の旅では印象深い花になった。

 (つづく)