八方池ハイキング

 旅館のご主人が

「明日はきっといい天気だよ。」

と言って、夕食の後コーヒーを入れて下さいました。

 

 なんとこの日の宿泊者は、私たちのみ。

「温泉も独り占めですよ。」

とのこと。

 エレベーターは他の人が使わないので

 いつも私たちを待っていてくれるのです。

 翌朝起きると明るい朝日が差し込み、窓を開けるとひんやりした風が入ってきまし

た。

 朝食をとった後、お昼ごはんを買いに白馬の駅近くのコンビニまで行かなくてはなら

なかったのですが、ご主人が用意を整えた私たちを車で連れて行ってくれました。

 私たち二人しかお客さんがいなかったとは言え、本当に親切にしてもらいました。

 おにぎりと行動食を買って駐車場へ戻ると、なんと白馬三山がくっきりと見えるじゃ

ないですか。ここでもう山に登頂した気分です。

 

 ゴンドラの駅まで送ってもらい、昨日のゴンゴラ「イブ」のお友だち「アダム」に乗

ってうさぎ平へ。そこからアルペンクワッドリフト(4人乗りリフト)に乗りかえ、さ

らにグラートクワッドリフトで1680mの八方池山荘まで到着です。

 

 山荘からしばらく行くと分かれ道があります。右が尾根伝いに歩くルート、左は歩き

やすく整備された木道コース、もちろん安全第一の私たちは、英語でeazy と書かれた左

ルートを歩いて行きました。

 見晴らしのいいところで雲が取れた時に撮った白馬三山です。左側の頭が三角に尖っ

たのが白馬鑓が岳、真ん中が杓子岳、右側が白馬岳。一番高いのが白馬岳で2932m

です。白馬白馬と名前だけはよく聞いていたので、どんな山なのか興味がありましたか

ら天気に恵まれここでその姿が見られてとっても嬉しかったです。

 何回か雲が取れましたが、白馬の姿はなかなかクリアーに見られませんでしたから

本当に山は早朝に登らなくてはだめだなと改めて思いました。

 ルートの左側に見えたのは、右側が五竜岳、左側が鹿島槍ヶ岳。2年前に行った小川

村の宿からしっかりと見えていた山のうちの二つです。遠くからでしたので五竜岳も鹿

槍ヶ岳もこんなに山肌が切れ込んでいるとは知らず、荒々しい山なんだと改めて感じ

ることができました。鹿島槍の双耳峰を見てとっても懐かしい気持ちになりました。

 登って行くと目安になるケルンがありますが、これはたぶん「八方ケルン」。

 これが「第3ケルン」。下に「八方池」が見えます。私たちが今回目指した池です。

 思ったよりずっと小さな池で驚きました。

 八方池に白馬三山が鏡のように写り込む写真を何回も見て、この池に映り込む白馬三 

山の写真を撮りたいと思ってきたのですが、あいにく頭に白い雲を被ったりして夢見て

いた写真は撮れませんでした。

 どうやったらうまく撮れるのか知りたいとは思いますが、今さら高性能のカメラやレ

ンズを用意するつもりはないし、これで満足することにしました。これだけよく晴れる

というのも運がいいのですから。

 

 ここで用意していたおにぎりやパンなどを食べ一休みしました。

 八方池もこれで見納め。不安のあるひざを抱えながらの下山、石がゴロゴロとした尾

根道はかなりゆっくり慎重に歩きました。降りている最中に私よりもお年が上だと思わ

れる女性に会いました。

 「おいくつなんですか。」とお聞きすると「86才。以前登ったことがあるから大丈

夫なんです。」とのこと。

 しばらく登って行くその方の後姿を見送っていましたが、私ももうしばらくは山を選

べば彼女のように一人でも登れるかもしれないなとちょっと勇気が湧きました。

 八方山荘に戻り着いた時に、頑張ったご褒美にブルーベリーとバニラのミックスソフ

トクリームを食べました。

 

 下山途中に見た植物

 ハッポウウスユキソウ          カライトソウ

 ハッポウの固有種            柔らかい絹糸を連想させる

   

 ハクサンタイゲキ           モウセンゴケ

 別名 ミヤマノウルシ         山道の崖のようなところに生えていた

 トウダイグサ科 真っ赤に紅葉している 名札がなければ小さく見逃してしまう

   

 

ウメバチソウ 

旬の花ではないと思うが、あちこちに散らばって咲いていた。

 

 宿の夕食の時、山の話になり、ご主人に「ウメバチソウ」が咲いていたと言うと

あの花は、咲き始めの頃は、クリームがかった白なのに、この季節になると真っ白にな

るという話を聞いた。ご主人は、山の花にも精通していらしてもっと話が聞きたいなと

思った。珍しい花ではないが、今回の旅では印象深い花になった。

 (つづく)

 

栂池自然園ハイキング2

 翌日8時からゴンドラが動いているという話で、8時半過ぎに栂池高原駅から

「イブ」という6人乗りのゴンドラと71人乗りのロープウエイに乗りついで目的地の

自然園駅に到着しました。

 

 自然園駅は、標高1829mです。歩いているとさっそく紫色のトリカブトと小

さな白いヤマハハコに出会いました。

 

 400m歩くと右手に栂池ヒュッテと栂池山荘が並んで立っています。できれば

栂池山荘に泊まりたかったのですが、今回は残念ながら泊まれませんでした。

 そのすぐ先にあったのは、ビジターセンター。ここのフロントに入園チケットを見せ

てから園に入るシステムになっていました。曇っていて肌寒いくらいですから、中

に入ると火が焚かれていました。

 この自然園は、ご覧の通り高層湿原で木道が整備されていてほとんどの道は歩きやす

くなっています。春先だとミズバショウ、夏になるとワタスゲニッコウキスゲが群生

している湿原ですが、今は寂しいクサモミジになりかけです。

 

 植物をいくつかご紹介

イワショウブ

白い花が残っていたが、大半はもう赤く変化して赤い花のようになっている。

ゴゼンタチバナ  

 花は白いが実は赤くなる。

オヤマリンドウ  

 リンドウはいろいろあって名前を見つけるのが難しい。もうないかなと思っていたら、道の脇に何本か残っていた。

ナナカマド

 ナナカマドには、紅い実がつくものと左側にあるようなオレンジ色の実が付くものが

あるようだ。葉が茶色く枯れているものが多い。風当たりが強いのだろうか。

  

 

 前の週にずいぶん雨が降った後なのでキノコも花のように傘を開いて頑張っていまし

た。名前はわかりません。

 

 一番遠いコースまで行くと有名な白馬大雪渓が見られたのですが、私の膝の調子が悪

く奥まで行って戻る自信がなくて、銀名水という水場まで行ったところで引き返すこと

にしました。

 

 往きと違うコースで戻ったので「風穴」を見ることができました。穴に顔を近づける

と岩の間から冷たい風が吹き出ています。穴の底に天然の雪が解けずに残っているので

しょうか。

 

 左の方が白馬岳方面。雲がかかったり時折晴れたり。

 入口の上に見えていたのが白馬乗鞍岳2437m。栂池から白馬を目指す人は、この

山へ登ってから左の尾根伝いに小蓮華山を伝って白馬岳へ。60代の頃なら標高差60

0mのこの山くらいなら登れたのに。気分だけでもあの青い空に吸い込まれたいもので

ある。

 ダケカンバの葉はすでに黄葉始めているけれど、なんだか葉っぱが痛んで茶色く変色

しているように見えます。

 自然園入口まで戻り、昼ご飯を食べました。泊まれなかった栂池山荘の食堂で天ぷら

そばを。こんな山の上でシャキシャキとしたそばと揚げたての天ぷらが食べられるとは

、昨日に続いて予想外のものが食べられて幸せです。

 デザートは、ソフトクリーム。小谷村の名産らしい「サルナシ」のソフトクリームで

した。

 白馬村へ移動するバスの時間に合わせなくてはならなかったので、あまりゆっくりも

していられず、ロープウエイの駅まで急ぎました。

 この日はバスで白馬村まで移動し、八方温泉の旅館へ宿をとりました。 

(つづく)

栂池自然園ハイキング

 8月に続いて9月もただ暑かったという記憶しかなくって何か文章を書こうという気

になれなくてとうとう10月になってしまいました。年を取るとこうなるのかと日々衰

えていく身体と心を感じてしまいますが、元来怠け者なので安きに傾いているだけかも

しれません。

 

 9月の23日から26日までまた長野県まで旅に出ました。その記録です。

 松本から大糸線に乗って行くものだと思っていたら、計画をしてくれた人は長野から

バスに乗って行った方が効率的だということで東京から新幹線で長野駅経由となりまし

た。

 

 東京発7時24分、長野着9時13分、9時50分発のアルピコ交通の特急バスに乗

り、栂池高原に11時37分着の行程です。この日も明け方は曇っていましたが、だん

だん晴れて来て長野へ着いた時には、空は秋の雲が浮かぶ青空、駅からバス停に下

りていく階段では爽やかな風が顔をなでていくので

「気持ちがいいねえ。」

と思わず声が出てしまいました。

 こんな空気に触れたのはいつごろだったのでしょうか。

 

 栂池高原は、スキー客がいる冬季がメインなのでグリーンシーズンと言われる今頃の

時期は麓の宿泊施設は数が少なく申し込むのに苦労したと友人が言っていました。

 

 お昼を食べようと思っても、やっているところが少なくて宿の方に聞いて紹介しても

らった3軒のうちの「ふるさと」という日本そばの店まで行きました。人影もなく閑散

とした通りなのでやっているのかなと思っていたら、結構お客さんがいてほっとしまし

た。

 

 天ざるがいいなと思っていたのですが、天ぷらはやっていないというので、ツナそば

にしました。長野県で普通のそばじゃなくてちょっとイレギュラーだなと思いました。

 ツナとワラビとなめこ大根おろしととろろ少々、刻みねぎにわさびがのっている

冷やしそばです。そばは、もちろん手打ちでしっかりとしていて想像以上に美味しくて

満足でした。

 

 このお蕎麦屋さんは、ジンギスカンが有名らしくビールを頼んでいる男性客がこれを

注文しているのでここの店のメインなのだなと思いました。

 

 ちょっと早めでしたが、ホテルはチェックインで来たのでこの日はホテルでゆっくり

温泉に入ったりして過ごしました。

 

 続きます。

夏祭りー若宮八幡宮例大祭

 

 8月14日で長い間弘明寺駅前でお店をやっていた本屋さんが店を閉めました。

 

 お父さん、お母さん、そしてその後を継いだ娘さんがやっていました。娘さんといっ

ても私よりひと回り年下ですから若いおばさんです。ちょうど私の母が入院している時

に、本屋さんのお母さんも具合が悪かったのでお互いにちょっとしゃべるだけで共感

できるところがありました。

 横浜へ越してくる前にうちにあった本をおそらく500冊くらい古本屋さんに持って

行ってもらった経験があるので、本は原則図書館で借りることにしていたので、そんな

にいいお客ではなかったのですが、いつの間にか本の売り買い以上の関係が生まれまし

た。

 

 やめることになった1週間前、

「来週の土、日、弘明寺商店街にお神輿が出るんだよ。それも今年は久しぶり、若宮八

幡宮の例大祭に5か町のお神輿が集合するからにぎやかだよ。」

と、とっても嬉しそうに話していました。

 

 25日の日曜日、何時からか知らなかったけれども昼過ぎだと思って、行ってみまし

た。予想通り午後2時からでした。鎌倉街道沿いにある横浜国立大学の付属中学校の敷

地を集合場所にしてもうお神輿が集合していました。

 5か町というから5つのお神輿があるのかと思ったら、一つのお神輿に2つの町が名

前を連ねているのが2つあったので、結局は3つでした。

 一番大きかったのが大岡のお神輿で、そのそばに行ったら、私がもう何年も髪の毛

をカットしてもらっている美容師さんが水分補給のためのリヤカーのそばにいました。 

 8月の初めにカットしてもらったときに、お祭りには仕事を休んでお祭りに出ると聞

いていた通りでした。法被に手ぬぐい姿がいなせな感じでよく似合っていました。

 この商店街を弘明寺観音の門まで行って一休み。30分ほど休んで地元の弘明寺のお

神輿を先頭にして観音橋まで来ると、弘明寺のお神輿が横に入って帰っていくお神輿を

練りながらお見送りするシーンがありました。

 お神輿が通るだけですべてが活気づく高揚感に包まれます。もっと大きいお神輿を見

慣れているものにはなんだか物足りない気もしますが、お神輿を持っている町はこの近

辺ではもうそんなにないかなと思うと大事に残したいなとも思いました。

 

 お神輿を担ぐ若い人が少ないのか、外国の人が3人ほど一緒に入っていたのでもう外

国の人の手を借りないとお神輿を出すことができなくなってきているのかもしれない

なとそんな思いにもさせられました。

 

 本屋さんに会えなかったのは残念でしたが、この街の近くに住むようになって17

年、自分の住んでいるところではないけれど、始終行き来している街に知った人が出来

たことがしみじみ嬉しく感じる夏祭りでした。

ちょっぴり涼しい御岳山

 先週八王子の友だちと御岳山ハイキングに行ってきました。

 午前中から曇りがちの日でしたが、その日も朝から30度近くありましたから

高いところへ登ればいくらかでも涼にありつけるかなと期待していました。

 

 東京では高尾山に次いでケーブルカーで登れる山なので、もっといい季節なら人がた

くさん訪れるところなのに、さすがにこの暑さなのでひと気がありませんでした。

 

 横浜から川崎を経由して南武線で立川へ、立川から青梅線で青梅、そこから奥多摩

に乗り換えて御嶽駅まで行きます。駅前からケーブル下滝本までバスで10分、ケーブ

ルに乗ったのは9時40分、うちを出てから3時間半かかりました。

 東北新幹線なら青森に行けるくらいの時間がかかります。

 

 御岳ケーブルは、最大斜度25度、約6分で山上駅に到着。準備を整え出発。

 案内してくれた友だちは、もう20年以上前に来たことがあるのだとか、私はと言え

ばもう10年以上前に1泊したことがあるのみで、二人の記憶を合わせながら歩いて行

ったのですが、「こんなに急な坂道だったっけ?」などという言葉が口を点きます。

 本来ならば、御岳山神社にお参りをしてからハイキングをするところですが、昼頃か

ら雨が降るかもしれないという予報だったので、門を入って左に曲がり今日の目的地

「ロックガーデン」へ行くことにしました。

「レンゲショウマ」が咲いていました。御岳山は、このレンゲショウマが群生している

ので今レンゲショウマまつりが始まったところです。帰りにその群生地へ寄ることにし

ていたのですが、帰りは雨が降り始めていたので、結局この境内のものしか見られませ

んでした。

 帰りにビジターセンターへ寄った時に、境内のレンゲショウマもシカの食害にあっ

て、現在とても減ってしまったのだと聞きました。どこでもシカが増えすぎて困ってい

るとか、どうすればいいのか悩みは深いです。

 

 アップダウンを繰り返しながら「ロックガーデン」へたどり着きました。

 沢の流れ沿いにコースが出来ていて、苔むした岩と水の流れの音と、緑深い木々が織

りなすまさしく涼を感じるハイキングコースです。汗をかくものの、幾分気温が低いせ

いかじっとしているとずいぶんと涼しく夏向きのコースだと実感しました。

 途中、カツラの巨木に会いました。「お浜の桂」と名がついていましたが、江戸の元

禄時代のものだということですので、約350年ここで生きてきたということでしょ

う。

 先日見てきた妙高高原の滝からすると赤ちゃんのような滝ですが、「綾広の滝」と言

います。御岳山へ来て「水垢離」をするときには、ここへ来るそうですから、神聖な滝

なんです。

 水があるところが好きな「イワタバコ」の花がちょうど盛りで、たくさん岩に張り付

いて咲いていました。色のついた花がない時期なので、貴重です。

 白くて小さくて目立たない花なので知りませんでしたが、「モミジガサ」も咲いてい

ました。たぶん、名前は葉っぱがモミジのようだからついたのではないかと思われま

す。

 ここからしばらく歩くと四阿があって私たちより先に到着していた人がお昼を食べて

いました。横須賀から来た女性二人組でした。横須賀は、横浜よりもなお遠く、大変だ

ったのではと思いましたが、まだ若くて元気そうでした。川崎の有名な海苔巻き煎餅ま

で分けてくれました。

 さあ、もう一息というところで出会ったのが、「天狗の腰掛け杉」。まるで演劇の舞

台の大道具のような枝っぷりです。この枝に座って下を通る人に話しかけるにはちょう

どいいと思います。

 この辺りからぽつぽつと雨粒が落ち始めました。

 急いで御岳神社の境内を抜け、ビジターセンターでトイレをお借りして、雨の様子を

見ていましたが、まだ傘無しでも歩けそうなので、ケーブルカーの駅まで急ぎました。

 遠くで雷が鳴っていましたが、何とか本降りになる前にケーブルに乗ることができて

下山できましたが、下に下りたら本降りで私以外は傘がなかったので、バス停まで走り

ましたが、本格的に濡れてしまいました。

 ケーブルは、雷が近いと運転を中止するということで、よかったです。

 ちなみに今回は神社の頂上まで行きませんでしたが、御岳山は、標高929mです。

 高尾山は、599㎡ですので、どちらも信仰の山です。

 

妙高高原の初夏 その4

 3日目、朝カーテンを開けるとどんよりしていましたが妙高山は辛うじて姿を見せて

いました。この日は、山麓バスに乗り「苗名滝(なえなだき)」と「いもり池」へ行く

ことにしました。

 

 山麓バスは、2日間使い放題で1000円。私たちのように車で来ていない客にと

ってはありがたい乗り物です。休暇村の玄関がバス停なのでそこから前日も通った赤倉

温泉方面を通り黒姫山の方向へ山道を進みます。

 新潟と長野の県境だという関川沿いの道を右に曲がるとすぐに駐車場。この地域では

有名な観光地ながらウィークデーのせいか車も少なくて寂しげです。

 

 砂防堰提を右に見ながら階段を上り川の左岸を登って行きます。道の両側は名前はわ

からない木々ながら豊かな林を形成していました。

 撮ってきた写真とにらめっこして、3時間ほどネットで名前を調べわかった植物が二

つありました。

 一つは、ヤグルマソウ。花では見分けられませんでした。この植物の一番の特徴

は大きく5つに分かれた葉っぱでした。ヤグルマソウというと、春に咲くヤグルマギク

のことだと思っていました。小さい花ながらようく見るとその一つ一つが金平糖のよう

でこいのぼりの先に付ける矢車に似ているような気がします。そこから名前が付いたの

かもしれません。今回苦労したのできっと忘れないと思います。

 もう一つ分かったのは、ほとんど白い花ばかりだった中で唯一黄色の花だった

「オオダイコンソウ」。図鑑を持って行ってそばでゆっくり見たわけではないので

定かではありません。これも似たような花が多いので、葉っぱを手掛かりにしました。

 

 突如、句碑が登場です。小林一茶が1813年4月にこの地を訪れた時に読んだ句だ

と言われています。

 「瀧けぶり 側で見てさへ 花の雲」

 一茶は、吟行であちこちへ出かけていますが、出身はこの近くの北国街道柏原(現

在の信濃町)。ここへやってきた時に、滝を見た感動を読んだ句だと思われます。

 滝の音が大きく聞こえてきました。川の反対側に行くために吊り橋を渡ります。

 

 右側へ出たからと言って簡単に滝つぼへ近づけるわけではありません。ゴロゴロした

大きな岩を乗り越えて進むしかないので、途中までしか行けません。私は、近頃脚に自

信がないのでここまででギブアップです。

 

 一茶が句にしていた通りです。ものすごい水量なのでこの時期でさえゴーッ、ドーン

いう水が流れ落ちる音とともに水けむりが上がっています。

 雪解けの時期はさらに水量が増し地震かと思うほどだということで、この地方で地震

のことを「なゐ」とよんでいたのが「なえ」に変化したと言われています。

 この水は関川として米どころの下流域に流れ、田植えの頃の大事な水源になっていた

ことも重なり「苗名」と呼びならわされ、今に至っているそうです。

 

 落差は、55mと、一日目に見た落差80mの惣滝に及びませんが、水量の多さには

驚きます。岩は火山が冷えた時にできる柱状節理で自然の歴史の奥深さを感じます。

 無事戻ってこられたので、駐車場で次のバスを待ちもう一つの目的地、「いもり池」

まで向かいます。

 「いもり池」です。名前の通り昔はいもりがたくさん生息していたそうなので、この

名で呼ばれています。天気が良いとこの池に妙高山がきれいに映し出され、その様を写

真に撮ったポスターとして駅に飾られているのでご覧になった方がおられるかもしれま

せん。

 

 今の時期は、スイレンに覆われていますが、春の早い時期は池の縁をミズバショウ

美しく彩ります。曇っていてぽつぽつ雨も降ってきましたが、妙高はちゃんと姿を見せ

ていてくれました。

 

 ここに新しいビジターセンターができてちょっとしたカフェも併設されていました。

 友人は、

 「昔は建物が古くてトイレも外にあったのに、広くなってトイレが室内にそれも最新

式のものが出来ていてビックリ。」

と、言っていました。この言葉を何回も口にしていたので、その落差がすごかったのだ

ろうと推察しました。

 地元のコーヒー店から提供された美味しいコーヒーがあったので、コーヒーとバナナ

ケーキをスタイリッシュな椅子に座っていただきました。

 池の周りは、一周15分くらいで廻れるバリアフリーの道がついていたので、歩いてみ

ました。対岸から見たビジターセンターです。右半分が本来のビジターセンター部門、

左側が衣料品やお土産などの売店とカフェです。

 

 妙高山寝ても覚めても滞在中ずっと見えていたので、それが一番の旅の思い出で

す。我らは、自称「百名山を眺める会」なので、今回は妙高山火打山、と2つの山も

眺められ、会の目的はしっかりと果たせたのは大きな収穫です。

 

 おまけ。

 翌日は、長野駅で下車。善光寺をお参りしてから、門前の山城屋さんで三門そばを食

べました。相変わらずの欲張りで、とろろ、ふつう、くるみとつけダレが3つ付いた戸

隠そば。

 

 最後がずっと書けなくてそばで閉めました。(旅行記終わり)

 
 

妙高高原の初夏 その3

 

 ウシたちの背中には何やら書いてあると思って写真を撮ったら、三四と書いてありま

した。名前ではなく番号で管理されているようです。

 草地を抜けると林に入って行きます。

 牧場のちょうど中ほどに「宇棚の清水」という水が湧くところがありました。

 年間を通じて豊かな水量を誇り「平成の水百選」に選ばれている清水だそうです。

 ここで一休み。

 

 休暇村のお兄さんが用意してくれていた紙コップに湧き水を入れて飲みました。本当

に美味しい水です。持っていたペットボトルにも水を入れました。

 妙高、火打、黒姫など名だたる山の恵みを集めた水が透き通った音を立てながら流れ

下って行きます。水の音を聞いているだけで心地よくなるのはなんででしょうか。

 小川に沿ったところに赤いクリンソウが咲いていました。緑の中にひと際赤く目

立っています。

 今日のお弁当の予定の「清水が池」までもう一息です。

 「清水が池」に到着です。池の周りには、レンゲツツジが植わっていました。

 赤いのも、黄色いのもあります。

 天気がいいと青い空を背景にした妙高山の姿が池の水に映るそうですが、曇っていて

鏡池のようにはならなかったのは残念です。

 お昼は、休暇村で作ってくれた名物の「笹寿司」でした

 クマザサの上にすし飯をのせタケノコ、赤紫蘇、野沢菜、ワラビ、チリメンザンショ

をのせたこの地域のローカルフードです。おにぎりかと思っていたので予想を裏切って

くれて嬉しかったです。

 

 

 この後は、ドイツトウヒの森に入ります。写真はこれしかありません。およそ60ha

の土地に約一万本のドイツトウヒが育っています。この日も私たちだけでしたが、薄暗

いので一人で歩くのは怖いような気がします。

 松ぼっくりは長さが15‘㎝もあろうかというほど大きくてクリスマスの飾りに使える

ような立派なものです。

 ここでガイドさんが「この木はヨーロッパで何に使われてきたか」というクイズを出

しましたが、この木は有名なバイオリニストが使うようなバイオリンに使われてきた木

だそうです。

 

 どうも私は下向き傾向があるようで、ドイツトウヒの写真はちゃんと撮っていないの

に、陽の光が届かないような林床に咲く可憐な花に目が行っていました。

 

 この白い小さな花は、「タニギキョウ」と言います。ほんの5㎜位の花です。小さな

昆虫がちゃんと蜜を吸いに来てくれていますね。

 

 次の植物は葉っぱがないので光合成せず土の中の菌類から栄養をもらっている腐生植 

物で「ギンリョウソウ」と言います。薄暗いところに出てくることもあって、ユウレイ

ダケなどというあだ名もついています。

 およそ4時間くらいの行程で案内をしてくださったガイドさんの話は、植物の名前だ

けでなく歴史にも触れ、太平洋側と日本海側の植生の違いも気づかせてくれてすごく楽

しいハイキングになりました。

 すぐにメモを取ったりしていなかったので、写真はあってもこれは何だっけ?という

のがまだたくさん残っていました。

 豊かな森や気持ちの良い草地を歩くのはそれだけで生き返るようです。