セバスチャン・サルガド ー地球へのラブレター

 

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 先週、久しぶりに映画を2本観た。

 1本は、2014年度のドキュメンタリー映画、「セバスチャン・サルガド」だ。

 副題が、地球へのラブレター。

 私は、有名な報道写真家である彼の名を知らなかった。

 この映画のチラシを見た瞬間、

一体これはなんの写真なんだとひどく気になったのと、

映画の監督がビム・ベンダースであるということから

興味を持ったのだ。

 ビム・ベンダースの映画は、「ベルリン天使の歌」を見て

しばらくは、自分のまわりに天使がいるような気がしていた

そんな思い出がある。

 

 ビム・ベンダースは、「トゥアレグ族の盲目の女」という写真を見た時に、

この写真を取ったセバスチャン・サルガドに強烈な興味が湧いたという。

 もう1枚は、ブラジル北部の金鉱を俯瞰して撮った写真だ。

 

 サルガドは、ブラジルで生まれ、大学を卒業、結婚しフランスへ。

 経済学を学んだ彼は、仕事でアフリカへ行くことになる。

 このアフリカ行きがきっかけで、彼はペイのいい仕事を捨て、

写真家になる決意を固める。

  

 社会の底辺で働く肉体労働者、

アフリカの紛争地帯の移動を余儀なくされた人々、

ユーゴスラビアの人々‥

 こうした写真を見ていると、富を収奪せんとする権力者と

生きていくために移動を余儀なくされる貧困者の構図が

私には見え隠れする気がする。

 

 フォトグラファーは、「光と影で撮り続ける人」と語っているように、

彼は、一瞬にして対象の光と影の世界を切り取ってしまう。

 心を揺さぶる写真の連続である。

 とにかく心にガツーンとくる圧倒的な写真だ。 

 彼がどんな気持ちで、どのようにしてこれらの写真を撮ったのかが

この映画を観ると想像できるような気がする。

 

 時に、目を覆いたくなる場面を切り取っているにも関わらず、

彼の写真には、人間としての優しさがにじみ出ている気がする。

 画面で、彼は、

「同じものを撮っても、撮っている人によって違ってくる。」

と、言っていたが、人間性が出るということなのだろう。

 

 サルガドは、アフリカでのあまりに悲惨な人々を撮り続けたために

人間の救済など信じられなくなり、

心を病み、アフリカからブラジルの故郷へ帰った。

 そして彼が辿り着いたのは、地球の姿を取ることだった。

 

 報道写真家としてのサルガドが人間でなく、

自然を相手に写真が撮れるのか心配されたが、

彼は、対象が変わっても素晴らしい写真を撮り続けた。

 

 息子である、ジュリアーノ・リベイロ・サルガドが

ビム・ベンダースと共に撮影に参加し、共同監督となっている。

 

 *シネマJack&Bettyで13日まで公開