映画始め

 映画始めは、いつものように名画座JACK&BETTY。

 この日は、2本見たが、まず1本目。

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 1本目は、「黄金のアデーレ 名画の帰還」。

 この絵の正式名称は、「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像」で、1907年に画家の

クリムトが描いた有名な肖像画の一つ。

 金箔が絵にちりばめられているので、好きかどうかは別の問題だが、

とにかく目を奪われるような絵なので、

どこかで目にしたことがあるのではないだろうか。

 

 私は、かつてウィーンを数日ぶらぶら歩いていたことがあったので

なんだかとても気になる映画だった。

 ウィーンのベルベデーレでこの絵を実際に見たのか、

何かの図録で見たのか定かでないくらいの記憶しかないが。

 

 この絵をめぐって20世紀が終わるころ、

アメリカに暮らすマリア・アルトマン(82歳)が、

そんな裁判は無謀だといわれながらオーストリア政府を相手取り、

起こした裁判を描いている。

 

 この絵は、マリアの叔父が叔母「アデーレ」を描かせたものだった。

 第二次世界大戦中、オーストリアに侵攻したナチスに略奪されたもので、

正当な持ち主に返してほしいという明快な要求の裁判だった。

 

 この映画では、マリアがまだ駆け出しの青年弁護士とともに、

裁判を闘っていくようすを描いていくのだが、

マリアが子どもの頃の華やかな生活、ナチスが占領したウィーンでのようすを

フィードバックさせながら 一つの世界を創り上げていく。

 

 映像の中に、大勢の人に歓呼されながら

ヒットラーが街をパレードする場面が出てくる。

 ユダヤ人が、徹底的に排除されていくようすを

人々はただ眺めているそんな場面も出てくる。

 そんな最中にこの絵も略奪されていったのだった。

 

 すべての街の人がナチスを良かれと思っていたわけではないのだろうが、

混沌とした社会の状況では、ヒットラーのように強いことをいう人物が出てくるのを

どこかで受け入れてしまうそんな力が働くことを、

第二次大戦前の歴史は語っているような気がする。

 

 大きな戦争体制の流れが徐々に作られ、もの言えぬ状態になってからでは遅い。

 私は、映画のドラマティックな展開を楽しみつつ、

今の日本の状況に引き寄せ、どこか冷めた感覚で見ていたような気がする。

 

 この映画は、6日の水曜日のレディースデーだったせいもあるだろうが、

座席はほぼいっぱいになるくらいだったので、見やすい席を取りたい場合は

早めに行くのがお勧め。