「ガミガミ女とスーダラ男」

 横浜へ越すとき、文庫本も入れて500冊ばかり古本屋さんに引き取ってもらったのを機に、本は、なるべく図書館で借りるようにして、買って増やさないようにしようと心に誓ったのだが・・・・・本を捨てるのも手放すのも好きではなく、やっとの思いで整理したのだが、それでもまだまだうちには本が一部屋を占領している。

 先日、図書カードなるものを1000円分もらったのがあったので、また買ってしまった。

 先日の「夏の終り」が欲しくて買おうと思ったのだが、430円なりで、図書カードはおつりがもらえない。

 何とかあと600円分くらいの本を探さなくてはと思ったところ、毎朝聞いているFM横浜というラジオ番組の中で、北村浩子さん(アナウンサー)が、2週毎、火曜日から金曜日まで、自分の読んだ本を紹介してくれるコーナーがあるのだが、そのコーナーで紹介のあった本をみなとみらいの紀伊国屋に集めてあるのを思い出した。

 何冊か読んでみたい本があったのだが、ちょうどいい値段の本は、やっぱり文庫本だということで、買ったのがこの「ガミガミ女とスーダラ男」である。

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 作者である椰月美智子さんのことは、まったく知らずに購入したので、どんなものかと思っておもむろにページをめくっていったら、始めの章から笑ってしまった。

 続きを乗り物の中で読んでいても笑いがこぼれてしまって困った。

 ただ、あまり上品な内容ではないので、そういうのが嫌いな人にはお勧めできない。

 この方、2002年「十二歳」という本でデビューし、講談社児童文学新人賞を取り、2007年「しずかな日々」で野間児童文芸賞と坪田譲治文学賞をダブル受賞しているのだそうである。私は、これらを読んでいないのだが、後の解説のページを見ると、前者の本は、まじめな文学で、同じ人が書いたものとは信じられないと思ったそうである。

 何が書いてあるかといえば、自分の夫との夫婦喧嘩、子どものこと、飼い猫、親のことなど、身の回りのことを(作者がいちいちことわっているが100パーセント事実)赤裸々に書いたものである。

 ふだんは、編集者の注文に合うような作品を書いてきた椰月さんが、今回は、自分から望んで書きたかったことだそうだ。 とにかく信じられない喧嘩の数々。本人は、かなり深刻に悩み、時々離婚をちらつかせてはいるが、結構夫婦としての結びつきとしては強いものがあるような気がする。

 ただの家庭騒動を書いているだけなのに、読者がちゃんと想像力を発揮して理解できるように筆を運んでいるところは、さすがに文筆家だ。

 この表紙絵、挿絵がまた変わっている。

 普通だと漫画ちっくなものになるような気がするが、これは、19世紀まだ写真が発達していないころ新聞や雑誌に載せられていた版画を使ったそうである。

 あまりに赤裸々な作品だからこそ上品さを加えたかったということのようである。