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南方熊楠を知る

 菜種梅雨です。

 ここのところ読書三昧でした。

 熊野から帰ってきて、南方熊楠のことをもっと知りたくなり、

図書館から3冊本を借りました。

一冊目は、

猫楠 南方熊楠の生涯 (角川文庫)

猫楠 南方熊楠の生涯 (角川文庫)

 かなり難しそうな全集ものもある中で、

ただ一つ 水木しげるが描いた漫画がありました。

 熊楠は、熊野の山にこもって採集をしている時に、

何回も自分の体が浮遊してどこかへ行ってしまうような体験や

幽霊に出会うなどしたということなので、

水木しげるの世界とも近いものがあるのだろうという興味がありました。

 漫画は、なんといっても、絵が助けてくれます。

 近頃視力が落ちて、長い文章を読むのがとてもつらくなってきていますから。

 二冊目は、

南方熊楠―森羅万象に挑んだ巨人 (別冊太陽 日本のこころ 192)

 

 これは、写真が多く入っていて、熊楠の生涯や、エコロジーコスモロジー民俗学などの項目に

いろんな方が文章を寄せ、数多くの資料が写真としてのせられていて、

漫画よりもう少し事実に即した形で熊楠に迫ってきています。

 話題に出てくる熊野の自然、彼の家族や友だちの写真、

それに、彼の描いた粘菌の写生や説明の文字などもあって、

熊楠の性格や生活をうかがい知ることが可能でした。

 表紙の写真は、熊楠がアメリカのフロリダにいる時に

撮ったポートレートで、あっちこちに配って歩いたみたいです。

 まだ二十代前半の若き日の熊楠です。

 三冊目は、

縛られた巨人―南方熊楠の生涯 (新潮文庫)

 

 これは、1987年に神坂次郎氏が書いた熊楠像です。

 たくさんの資料、熊楠の日記、周りの人に直接聞いた話など、

真実を確かめながら書かれています。

 中には、熊楠が放浪したアメリカやイギリスにもその足跡を訪ね、

熊楠の生涯を丁寧に浮かび上がらせた本だと思いました。

 そうそう、熊楠は、英語はもちろんいろんな国の言葉を覚えて

学術書を読みこなしていたというから驚きです。

 

 ただ事実を書いたに過ぎないのでしょうが、

熊楠の桁外れの生活は、読んでいておもしろく、

飽きることがありません。

 500ページと厚めで、はじめは大丈夫かなと思いましたが、

易々とページを進めることができる楽しい本でもありました。

 これを読んでいる間は、頭の中が熊楠の世界でいっぱいで、

しばらくは熊楠がひっついて離れませんでした。

 それにしても、慶応三年生まれで、東京大学の予備門に在籍した人は、

夏目漱石正岡子規尾崎紅葉幸田露伴、藤島武二‥‥と

時代の有名人が多かったのにも驚きました。

 熊楠は、学校という枠に縛られるのを嫌い、

結局は、退学してアメリカへ留学しますが、

やはり学校へは行かずに、粘菌の採集へと放浪するのです。

そしてその後は、イギリスへ。

 大英博物館に出入りを許され、

イギリスの学界への挑戦があるのです。

 イギリスで出会った中国の孫文高野山の管長土宣法龍、

民俗学柳田国男との親交も彼の広く大きな器を

表わしているような気がします。

 学歴とか権威は眼中にありませんでした。

 

 話は跳びます。

 今朝、ネットのトップに

 2011年の紀伊半島の土砂崩れの復旧工事に絡んだ脱税で

業者が告発されたというニュースが出ていました。

 今回の旅でも、熊野のあちこちで橋や道が壊れ、

3年たった今でも、未だに寸断されているところ、

工事中のところ、迂回路を設定している熊野古道など

たくさん見たり、聞いたりしました。

 紀伊半島の降水量の多さは、日本一です。

 熊楠の生きていた時代にも神社の合祀を進める官と

そこに生える大きな木を切って儲けようとした業者が

ぐるになっていたようです。

 今回の災害の原因が、原生林を切って杉を植えようとしてきた

林野庁の無策がすべてだとは思いませんが、

 災害の復旧工事で脱税して儲けようとする業者がいる構図は、

似ているような気がします。 

 ニュースを読みながら、

熊楠が生きていたら、なんと言っただろうと

ふと考えてしまいました。