お彼岸の頃

 9月の記事です。

 今年の夏は、暑くてお盆はお休みしてお彼岸にお墓参りをしました。

 生きている自分を優先したのです。

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 寺に着くと日陰に咲いていたヒガンバナが1輪、美しく咲いていました。

 鎌倉のお墓参りは、ちょうどお彼岸のお中日。お墓へ行ってみると、隣近所のお墓は、もうすでにきれいに清掃され、きれいな花も飾られていました。

 夏に行っていなかったので、草が生えツルが絡み、柘植の木の枝も金木犀の枝もだいぶ伸びていたので剪定と草取りから始めることになりました。

 金木犀の花が咲き始めていたので、いい香りがあたりに漂っていました。

 横浜へ越したばかりの頃は、時間を見つけてはあちこちの仏様を拝顔するのが楽しみで始終出かけていたものですが、近頃はご無沙汰です。

 お墓参りに来ると材木座にあるカレーとベジ料理のお店「香菜軒寓」へ行くことにしています。暑い夏にカレーが食べたかったけれども自分で煮込み料理を作るのは気が進まずずっとカレーが食べたくて仕方がなかったのです。

 

 この日も帰りに寄りました。休日で駅前はすごい混みようだったのでわざわざ時間を外していきました。

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 いつもはマメか野菜のカレーなんですが、ちょっとおごってエビが入ったカレーを頼みました。エビは、養殖をしたものではなく、ニューギニアの海でちゃんと漁師が捕ったもの。単価は高いけれども旨みが違うのです。このお店で唯一の動物性たんぱく質、それがなんと5匹も入っていました。今日の野菜はナス。これも藤沢の農家から届いた無農薬の野菜です。ご飯は玄米か、五穀米かは選べますが、私はもちろん玄米、ちゃんと小豆も入っているので赤い色をしています。塩麹で和えた小松菜など、付け合わせもみんな素性が確かなものばかりです。久しぶりに美味しいものを食べられてほっと心が安らぎました。

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 デザートも頼みました。白ゴマのブラマンジェにマンゴーがのったものです。手作りですから本当に美味しいです。(ちょっと食べてから写したので見苦しくなりました。)

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 このお店に藤沢の農家「柿右衛門」さんから野菜が届きます。その中に「マコモ」がありました。とても珍しいので買ってきました。

 冬に東北へ渡り鳥を見に行くと、オオハクチョウが白い首を水の中に突っ込んで食べていたのがこのマコモの地下茎です。これは地上に生えている茎です。うちへ持ち帰って天ぷらときんぴらにして食べました。ハクチョウの大好物をまさか私が食べることになろうとは思いませんでしたが、特に匂いや味に個性があるものではなくシャキシャキした食感とどんな料理にもなじみやすいところがいいような気がしました。栄養価も高そうです。

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 鎌倉の道には、あちこちにヒガンバナが咲いています。赤もあれば白もあります。

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 材木座から裏道を歩いて行くと、大巧寺(だいぎょうじ)があります。今でこそ、バス通りの方が表だと思われていますが、昔は一見裏手に見えるこの道が小町大路と呼ばれ、本堂はこちらを向いています。材木座からの物資が運ばれるメインストリートだったからだと思われます。

 この境内を抜けるのが駅への近道なのでなんの花が咲いているかなと思いながら入って行きました。

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 まず、芙蓉。白い花と赤い花が同居しているので、これは酔芙蓉だと思います。朝は白い花が咲き、時間が経つにつれお酒に酔って頬を赤らめるかのようにピンクから赤に変わるという花です。

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 白いホトトギス

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 赤いホトトギス。これも紅白そろっていました。

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 コムラサキだと思います。残念ながら白はありませんでした。

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 その代わり、白い玉すだれ。

 よく手入れされた花を愛でながら境内を通り抜けしていく人をよく見かけます。

 ヒガンバナホトトギスも芙蓉も赤と白がそろってちょっとめでたい一日でした。

茅ヶ崎里浜の植物観察(9月)

 9月16日は、あいにくの曇り空。予報では雨は降らないとのことだったが、重たい雲が空を覆っていた。

 この日は、茅ヶ崎から初めて藤沢市へ入る。辻堂海浜公園の前の浜だ。向こうに見えるのは、江の島。

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 西の方向を見ると、砂浜に砂草がほとんど見られない。この辺りは、波打ち際から砂丘の上までの長さがおそらく80mくらいあるのではないかと思うのだが、砂がむき出し状態で、しかも車のわだちが続いている。このあたりでもかつてはアカウミガメが上がってくることがあったそうだが、こんなわだちがあると、ウミガメが余計なエネルギーを使わざるを得なくて海へ戻れなくて命を落とすこともあるという話を聞かせてもらった。

 

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 それでもところどころに緑がみえるところがあった。

 これは、ハマゴウの群落。草本でなく木本の植物だ。茅ヶ崎の有名な浜降祭にも昔から使われているこの土地の植物なのでできればもっと増やしたい植物だ。

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 ハマゴウは、7月に咲く花なのでほとんど花がないけれども、たった一輪咲いていた。ムラサキの花だが、葉で隠されていてよく見えない。

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 これは、ハマボウフウの若芽だ。春に芽吹くのだが、秋口にも発芽するのだとか。

 まだ少ないので、取って食べるわけにはいかないが、食べごろのやわらかい葉だ。

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 波打ち際からだいぶ離れていたが、砂浜の最前線を担うハマヒルガオコウボウムギがやっぱり生えていた。穴が開いているのはカニの巣穴だろうか。

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 この広い砂浜にほんの一握りの砂草しか生えていない寂しい地域だ。

 このハマボウフウハマヒルガオコウボウムギも初めて出会ってから2年も付き合っていると芽を出しているのを見るだけでかわいいという感情が湧いてくるから不思議だ。風を受けても波をかぶっても砂に根を張って頑張りぬくところに惹かれてしまったようだ。

 

 この寂しい砂浜なので、帰りに波打ち際を歩いて貝殻や石を探して歩いた。

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 左の薄いピンクの大きな貝は「ワスレガイ」という名前で、あさりのようでもあり、ハマグリのようでもあるが、味はハマグリに近いそうだ。子どもときに、この浜の潮だまりでこの貝をみつけてうちへ持ち帰ると潮汁にしてくれたと教えてもらった。

 右側の渦巻き状の貝の名前は失念してしまったが、味噌汁に入れたそうだ。

 

 

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 打ち寄せられているものを見ていたら、目の端に何やら動くものを発見。砂に似通った色、ちょこまかと動き回る。それだけでチドリの仲間だということはわかったが、名前がわからない。

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 とにかく動きが速い。ちょっと離れたところを追いかけてみたが、ぼけた写真しか撮れない。

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 辛うじて正面の胸の色まではこれでわかった。

 茅ヶ崎にきて見たことがある鳥は、トビとカラス、それに時々カモメくらいなのでこれだけでも大収穫。

 今は、南へ越冬しに帰る鳥たちの渡りの季節。おまけに夏仕様と冬仕様の羽の変わり目なのですぐにはわからず、結局はうちで図鑑を見て名前を判定した。

 おそらく「シロチドリ」だろう。シロチドリは日本の各地にいるのだそうだが、北の方にいたシロチドリは、冬になると南下してくるのだという。

 このチドリ、この辺りを縄張りにしているチドリなのか、寒くなってきたので東北の方から南下してきたのか、たった一羽エサをついばみながら歩いていた。サーファーが数人歩いてきたのでパッと飛び立って行ってしまった。

 今年最後の観察会でお土産をもらった気分だった。

茅ヶ崎里浜の植物観察(8月)

8月の観察会は、19日。ちょうど17日から急に涼しくなった3日目でした。

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 集合場所は、7月と同じ浜須賀災害無線塔。

 手前の134号線は交通量が多いので横断歩道を渡ろうと待っていてもなかなか信号が変わりません。せっかちな私は、階段を上って歩道橋を渡ります。この日は、上に上り切った時に(わあー)と思わず声を出してしまいました。目の前の相模湾の海が水平線の彼方まで青く美しく見えたからです。右の端にうっすら見えるのは伊豆諸島の大島です。こんな日は、ここで深呼吸するだけで十分な気がします。

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 台風が過ぎ去った後でしたが、まだ波は高めでサーファーにとっては波日和。たくさんのサーファーが波と戯れておりました。

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 見ていると、1回だけでなく、寄せくる波を捕まえて、何回も乗りこなす人もいて見ているだけでワクワクします。

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 この日は、無線塔のある所から、東の方向(鵠沼海岸)へ向かって歩きました。竹で作られた垣根が砂丘とサイクリングロードの間に作られているのが見えます。この垣根は、「静砂垣」(せいさがき)と呼ばれています。サイクリングロードに砂が積もらないようにするのとサイクリングロードの後ろに植えてある黒松の防砂林を守る役目をしているのです。

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 ところが、このように静砂垣(せいさがき)が壊れているところがありました。手前に置いた棒が、指し示している方向は、南西です。冬の間、この浜には南西から強い風が吹くために垣根がこうして壊れてしまうのだそうです。冬は、南西から吹く強風で砂が舞い上がり大きく移動してしまうので、その砂を押さえる役目も果たすのも砂草なんです。

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 その南西から吹く風に乗ってやってくるのか、潮の流れが連れてくるのかわかりませんが、ヤシの実の落し物です。毎日ここを歩く人は、いろんなものが流れ着くのを見るのだと思います。島崎藤村の書いた「椰子の実」がちらっとよぎりました。

 この日見た砂草

 ツルナ マオリの人たちが食べていたのでニュージーランドスピナッチ、日本ではハマナ、ハマホウレンソウとも呼ばれている。食べられるが、シュウ酸があるのでゆでた方が良い。

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 オカヒジキ 生協の注文にもあるのでかなりメジャーな野菜になってきている。ここに生えているのは食用として作っているものではないので、茎も葉も太くてちょっと見た目が異なり、ずんぐりした葉である。

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 ハマニガナ 7月にものせたが、あえて載せたのはこれも食用になるからだ。出てきたばかりの若い葉を食べられるということがわかった。

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 砂草の中には、食べることが可能なものが多い。気候変動、天災、これからはなにがあってもおかしくない。知っているといいことがあるかもしれない。山に生えていれば、山菜。砂浜に生えていれば砂草。どちらも自然の贈り物だと思うがどうだろうか。

 

 ケカモノハシ 群生しているケカモノハシを初めて見た。丈は50cmくらいで穂が出ている。似ている名前のがついていないカモノハシは、湿地に生えている植物だそうだ。海岸のカモノハシは、強風と高温にさらされる過酷な状況の下に生えているのでが保護する役目を負っているのだそうだ。

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 花はすでに咲き終わって、実ができている。実の回りにもがたくさん生えているのがわかると思います。珍しいのは、この穂は1本じゃなくて2本がくっついて1本のように見えるというところだ。手前のは、開いて2本になっている。なぜこうなのかはまだ調査中。

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 「海と自転車」(この日の好きなスナップ。)

 真ん中あたりの水平線に大島が見えるでしょうか。夏に見えるのはすごく珍しい。

茅ヶ崎里浜の植物観察会

  

 7月の観察会は8日の土曜日だった。

 毎月場所を移動して砂浜の状態と植生の状態を観察している。

 この日は、浜須賀防災無線塔が立っているところに集合してそこから西の方を歩く。

 

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 この日も天気は上々。浜へ出てみるとたくさんの家族連れが波打ち際で遊んでいる。 どうも町内会のレクレーションという雰囲気だ。

 約束の時間よりずいぶんと早く着いたので様子を見ていると声がかかり、移動が始まる。どうも観光地引網のようだ。

 

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 集まった人たちは、漁師さんの指示で両側に分かれ、綱を引っ張って行く。なかなか本体は現れない。ひたすら引いていく。

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 やっと網がやってきた。昔は、網目があるものだったような気がするが、布の袋になった本体だ。黒いところはチャックになっている。

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 チャックを開くと中からあふれるほどの魚が現れ、歓声が上がる。それを漁師さんが網ですくって水色のポリ樽に入れていく。

 

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 ほとんどはアジだが、サバの小さいのやごくまれにカマスなんかも入っている。

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 底の方に入っていたのが生しらす。これはほしい人が手を出してそのまま食べていた。

 なにせこの日は大漁だったようでこの樽に10杯以上の魚が取れていた。1人何匹ずつかわからないが、分け前は十分だろう。とれたてのアジのたたきにしたり、焼いて食べたり、この日の家庭の食卓はさぞにぎやかだったに違いない。

 魚の観察に来たのではないがこんなハプニングも見ているだけで楽しい。

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 さて、本題に戻って、浜須賀あたりの砂浜は、漁港付近やハイランド付近に比べて狭くなっている。

 風や波の影響を受けやすいのか、砂浜が浜辺からすぐせり上がって形成されている。

 その最前線はやはりコウボウムギハマヒルガオとコウボウシバだ。こうやってみていると彼らがやっていることがよくわからないと思うが、

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 砂がえぐれたところを見てみると、その舞台裏がよくわかる。地上に出ている茎の長さの何倍かある根を縦にも横にも縦横に絡みつかせるようにして砂を押さえる働きをしている。一番過酷な場所を選んで砂の移動を防いでくれているのだ。ほんとうに縁の下の力持ちといってもいいだろう。

 こういう働きがある海浜植物は、東北大震災があった東北の海浜津波などの災害を少しでも軽減していく力があるのではないかと防災という観点からも見直されているのだと聞いた。

 このことは以前座学で聞いたことがあるのだが、こうして本物を見て感じるのとではずいぶんと納得の度合いも違ってくる。

この日観察できた植物

ハマボウフウの実 白い花がすっかり茶色く結実している。

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ハマヒルガオ はなは少ないがまだ可憐な花をつけている。葉はハート形。

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ハマニガナ ニガナはまだ結構咲いている。葉がイチョウに似ている。

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 海浜自然生態園でトイレ休憩と吸水。私はここは初めてだ。

 ここの庭には海浜植物がたくさん植えられている。浜辺の過酷な状況のところに生える強い植物なのに、今や人間が保護していかないと絶滅の危機に瀕しているものも多いという。ここは、その保護施設の一つ。そこに咲いていた花。

ハマゴウの葉ノカンゾウ           ハマエンドウ

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 最後にもう一つ予期せぬ出来事。

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 観察が終わって浜須賀の防災無線塔があるところへ戻ると、びっくりするほど大きな鯛がまな板にのっている。聞いてみると、地引網の二回目の網にかかっていたのだという。さばいている手元をじっと見ていたら、私たちの手のひらにそのタイの切り身をのせてくれた。思わぬプレゼント。醤油とワサビがあったら最高だった。

 

 

鮎そば

 東北旅行へ行く前日の4日に、八王子祭りの日が命日の友人の墓参りに行きました。 早いものでその彼女が亡くなってからもう4年が経ちました。

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 帰りにいっしょに行った友人が見つけてきた蕎麦屋さんに寄りました。6月に一度来ているので、二度目です。このお蕎麦屋さんは、実はかつて1年だけいっしょに働いたことがある人がやっている店でした。

 6月に会った時は、びっくりでした。顔と名前は覚えていたけれども、お互いにまだ若かった頃のことです。声には出さねど、これまで重ねてきた年月をずっしりと感じたものです。

 その頃から、彼は釣りをやったり、名古屋コーチンを飼っていたりと 一味違う趣味に生きていた人だったので、定年退職をしてから、趣味のそば打ちが高じて蕎麦屋を開くことになったのはわかるような気がしました。

 彼は、どこのそばが美味しいか日本全国そば行脚を重ね、自分のめがねに叶ったそば粉を取り寄せているようです。食べる直前に、粉に挽き、そばを打ち、ゆでて出す、いわゆる三たてのそばを出してくれます。三たてを看板にしているので、予約を入れておけばその時間に食べられるようにしてくれます。ふらっと行っても食べられますが、その工程にかかる時間を待つ覚悟をしなくてはなりません。

 儲けることだけを考えていたらそんな悠長なことをやっていられませんが、「暇なときは、趣味の釣りにも行きたいので、ちょうどいいんだ。」と言っていました。

 

 今回は、「鮎そば」という食べたことがない物を食べに行ったのです。初めて行った時に、「8月になったら釣ってきた鮎を使ったそばが食べられるよ。」という話がずっと頭にこびりついておりました。食べたい食べたいと思いながら待つこと2か月。

 これがその「鮎そば」です。

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 相模川水系は今年鮎が豊漁だったようで、その鮎を乾かし(ここのところを聞き洩らしたのでいい加減ですが、遠火で蒸すようにするのかもしれません。)それで出汁を取り、汁そばに仕立てたものです。

 本当にさらっとさっぱりした出汁なのにコクがあるのです。口に入れただけで幸せな気持ちになります。鮎の出汁だけで何もほかの物は入れていないと言っていました。

 これは、皆さんご存知の鮎の塩焼き

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 もちろん、彼が釣ってきた天然ものです。ちゃんと苔の香りがする鮎です。めったに天然物は食べられないので、これで鮎は香魚っていうんだということが納得できました。今は、柑橘類のいいのがないので、付いていたのはライムです。

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 後から出てきたのは、出汁を出すのに使った鮎をから揚げにしたものです。これがまた美味しいのです。日本酒を飲む人は、これを肴にするとお酒が進むだろうと想像できるお味です。もう一度鮎の出汁でそばを食べてみたいものだと思うけれども、あの時点であと10人分くらいで終わりだと言っていたので、今年は、もう1回というわけにはいかないようです。

 これは特別メニューで、2500円。普通は天ぷらそばが1500円(せいろ2枚と野菜中心の天ぷら)です。ほかにもメニューがあるのでしょうが、よく覚えていません。そばは、十割そばです。

 参考までに、店の名前は「川崎」といいます。場所は、町田市の大地沢青少年センターへ行く途中にあります。(八王子と町田の市境付近)

世界谷地原生花園(宮城県栗原市の旅その2)

 朝のうちに蓮舟に乗った後は、宿舎の方にお世話になった挨拶をして駅へと戻りました。駅を挟んで伊豆沼と反対方向にある「世界谷地原生花園」(せかいやちげんせいかえん)へ行こうと思ったからです。まず、前日までの天気で行けるかどうかを確かめるために駅にある案内所へ行って聞いてみました。

 前日まで思っていたほど雨が降ったわけではなかったようで、「行けますよ。」とのこと。

 ナビの設定をどこにしたらいいかということと、お昼を食べられる場所を教えてもらい出発です。西の方へ向かって車を走らせること約1時間、世界谷地原生花園の駐車場へやってきました。道は細いところもありますが、この日はほとんど対向車もなく楽に行くことができました。

 世界谷地原生花園は、栗駒山の麓に広がる湿原で標高700ⅿくらいのところにあります。名前の頭になんで世界がついているのかが不思議でしたが、それくらい広いという意味でつけられたようです。

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 駐車場からしばらくブナの林の中を歩きます。ブナの原生林は、東北といえども少なくなってきているので貴重な森になっているのだそうです。この時間、空が曇ってしまって木漏れ日の輝きがありません。

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 今観察路の木道が設置されているのは二か所。まず、第一湿原へ入ります。

 この湿原は、ニッコウキスゲの大きな群落があるので有名ですが、残念ながらもう茶色い実ができてしまっていて一輪の花も見つけることはできませんでした。

 8月はちょっと寂しい湿原ですが探せば咲いているものです。

サワギキョウ               ミカヅキグサ

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駒ヶ岳にも咲いていたコバギボウシ    赤い木の実(木の名前がわかりません。)

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 右側の雲に隠れた山が栗駒山ですが、この日は姿を現してはくれませんでした。

 だんだんと雲行きが怪しくなってきました。

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 入口に戻って、山道をしばらく行くと第2湿原が始まります。この第二湿原は、10年前に起きた岩手・宮城内陸地震の影響で、木道がくずれたりしたため10年間出入りができなかったのですが、幸運なことに今年やっと整備が終わり入ることができることになったのだそうです。

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 こちらの湿原では、第一じゃ見られなかった花が見られました。

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 遠目からだとまるでアザミの仲間です。でもよく見ると葉っぱが違います。棘のある立派な葉っぱではなく、華奢な葉なのです。これは、タムラソウ。ひときわ鮮やかに見えました。

 こちらは、ミズギクといいます。第一湿原にもありましたが、こちらの方がたくさん咲いていました。茎に白い毛が生えているのがわかるでしょうか。

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 実は、第二湿原を歩いていたら、怪しげな雲からいきなり雨が降りだしました。あわててレインコートを着て傘をさしました。湿原では雨宿りをするところもないので、元来た道を急いで戻りました。

 林に戻るころには雨も止みましたが、この日はやはり不安定な天気だったようです。

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 帰りのブナ林で面白いブナの木を見つけました。1本の木ですが、まるで親しい人同士寄り添っているような姿です。通り過ぎて行く人がいろいろ想像していいるのではないかと思いました。

 ブナの根の保水力というのは素晴らしいものがあり、たくさんの雨が降ってもちゃんと土の中に貯めてくれる貯水タンクの役割を担ってくれるのです。洪水を防ぐためにもこうしたブナの原生林を保護して開発から守ることが今問われているような気がします。

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雨後のタケノコといいますが、雨後のキノコも2本ほどみつけました。

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 駐車場に戻ってくる頃には青空になり、盛岡で見てきた岩手山の姿も北東方向に見えていました。この日、出会った人は2組だけ。静かな散歩ができました。

 お腹もすいたので、教えてもらったところへお昼を食べに行きました。ここから車でほんの3分ほど下ったところです。左に曲がる指示の看板がでていたのですぐにわかりました。

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 ここは、栗駒山の水の恵みを利用して岩魚の養殖を生業にしている食堂です。

 岩魚の塩焼き定食か岩魚丼かということで岩魚丼の方を注文しました。岩魚の味は食べつけないので、よくわかりませんが、なかなか食べることができない珍しい食材をいただけただけでも来た甲斐がありました。

 食べ終わってから庭にある養殖池をみせてもらいました。

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 上の方に小さな岩魚、下の方へ行くにしたがって型が大きいものの水槽になっています。

 小さな岩魚                大きな岩魚

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 夕方5時の新幹線に乗車。無事5泊6日の旅を終えることができました。

 振り返って

 まず、この旅行はJRの切符を取るところから結構ハードでした。8月5日出発の指定券を取るには、1か月前の7月5日にみどりの窓口へ行かなければなりません。これは何とか一度でクリアーできましたが、帰りの指定券は10日発売ですからもう一度みどりの窓口へ行かねばなりません。まして11日からお盆期間の繁忙期ですから、自由席だと疲れていても座席が確保できないなんてことになっても困るわけで、うちを午前6時半に出て午前7時にみどりの窓口が開く前の予約というのを取りました。こうしておくと、みどりの窓口が開く午前10時に並んだ人よりも先に手続きをしてくれるので、取れる確率が高くなるというわけです。3時間くらいモーニングコーヒーを飲みながら時間をつぶします。それでも取れないこともあるようで10時半過ぎてからまたみどりの窓口へ行くと取れているか取れていないかの結果が〇と×で表わされている表を見ます。取れていた場合は再び列に並んでやっと購入できるのです。ふだんこんな繁忙期にチケットを取るようなことがなかったのでたいへん手間がかかることを知りました。

 天気も大事。今回は予報よりは恵まれていい方へ変わったのでよかったですが、最悪毎日雨降りという場合もあるのでそれなりの覚悟が必要です。

 旅は、前と最中と後の3つを含めて旅だと思っているので、今回ブログで後の振り返りができてほっとしているところです。

 先日も友だちに「あなたって旅の話をするときはとても楽しそうだね。」と言われました。そうみたいです。体力がだんだん怪しくなってきているので、どこまでそんなことが許されるのかわかりません。できる間はせいぜい命の洗濯に出かけたいと思っています。

 長い旅記録にお付き合い下さった皆様ありがとうございました。

 

蓮の花咲く伊豆沼 (宮城県栗原市の旅その1)

 9日3時過ぎ宮城県の北部にあるくりこま高原駅に到着しました。

 栗原市にある伊豆沼へはここ2年続けてきています。10月になるとシベリアからやってくるマガンの群れがここへ渡ってくるからです。マガンだけでなく、オオハクチョウヒシクイやたくさんのカモたちもやってきて冬の間中伊豆沼はたいへんにぎやかです。

 今回は、伊豆沼を覆うように咲くという蓮の花を見に来たのです。このハスの茎(レンコン)は、冬にここへやってくるオオハクチョウの大事なエサになるのです。

 伊豆沼のそばにある「ウエットランド交流館」(宿舎)にいつもお世話になっているのですが、そこの夜勤の男性が夏は蓮舟をやっているからというので一度夏にもやってきたいと思っていたからです。

 この日は、台風が近づいて大荒れだと聞いていたので、駅へ下りた時に雨は少し降ってはいたものの、風は吹いていなかったのでこれで宿舎に着くまでは大丈夫だと安心したものです。

 伊豆沼のまわりには歩いて買い物に行けるお店は一つもないのです。バスなどももちろんありません。宿舎では夕飯を食べるお客さんが二人以上いると食堂をやっている方が出張してきてくれるのですが、こんな日ですから客は私一人。夕飯はでないことを聞いていたのであらかじめレンタカーを借りておきました。

 

 そこで、夕方6時ごろ、伊豆沼の東の端にある「くんぺる」というレストランへ行ってみました。歩くと1時間以上かかるところです。そのレストランも個室にお客さんが一組いただけであとは、私一人、広い館内は閑散としています。ここは、伊豆沼のまわりで生産される農産物や畜産物を材料にして提供してくれるところです。

前菜             サラダ          メイン

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スープ            デザート

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 ディナーコースです。本来私は、お肉を食べないようにしているのですが、この日は選べるメイン料理の魚が作れないというので、仕方なくここの加工工場で作っているソーセージやベーコンをメインにしました。何せ、ボリュームがすごくて本当にお腹がいっぱいになりました。ライスとコーヒーも付いて2000円でした。前菜に出た赤いのが気になり聞いてみたら、思った通りホヤの燻製でした。ホヤは皮ごと燻製するのだと教えてもらいました。やりたがり屋は一度やってみたいと思ったのです。

 

 翌朝の宿舎の窓から見た伊豆沼です。

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 もちろん、前の晩は晴れるように祈っていましたが、こんなに見事に晴れるとは思ってもいませんでした。水面にバラ色の雲や深い緑の木立が映り込んでいてそれはそれは美しい光景でした。

 夜勤の男性と朝の挨拶を交わし、朝一の蓮舟にのせてもらえるように頼んだのですが、「毎日順番があって、おれは今日は6番目なんだよ。もっと上手な人がいるから。」というので、仕方なく船着き場まで車で行きました。

 一番舟は8時出発だということです。モーターで動かす10人乗りくらいの舟が全部で11そう停まっていました。

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 右の方から1そうやってきました。沼の近くの人は舟で通勤なのでしょう。ところが待っている間に宿舎の男性があわててやってきて、みんなに「ウエットランドのお客さんだから、俺がいくわ。」と言いながら舟に乗せてくれました。ほかには乗る人もいなかったので「貸し切りだわあ!」と喜んでいるのもつかの間、数メートル進んだところで新しいお客さんが走ってきました。結局戻ったので乗客は3人になりました。

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 西の方は、蓮の生えていないところがあります。宿舎の方に聞くと、沼の水質が悪くなるので毎年一部を刈り取っているのだとのことでした。大きい葉は蓮、小さい葉はヒシです。ヒシの実は特にヒシクイの大事なエサになります。

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 さあさあ出発!一面ハスです。ハスの海を泳いでいくような感覚になります。舟はハスの茎や葉をひっかけないように細い水路を進んで行きます。

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 蓮の花って、中心部から光が放射状に出ているように見えて、バラの花とも違う美しさです。ハスの花の命は3,4日だと言われています。咲いて閉じて咲いて閉じて・・・最後は花弁がパラパラと落ちて花は終わります。花弁にしわしわができているのは、2日目とか3日目の花ではないかと思います。時間が経つとしわしわになるのは人間の皮膚も同じですね。わが身は、3日目当たりかと思いますが、あえて鏡を見ないように努めております。

 

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 花は、午前七時ごろから九時頃までが一番見ごろだそうです。午後になるとほとんどの花は閉じてしまいます。ちょうど来る前に調べた時は、7分咲きとのことだったので、一番いい時に来たのだと思います。

 この伊豆沼と隣の内沼では7月の20日頃から8月末までが「はす祭り」ということで、毎年舟が運行されています。

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 花粉がめしべに付き受粉が終わって役割を終えた黄色い雄しべです。ベトナムではこの雄しべを使い、お茶の葉に甘い香りをつけて「蓮の葉茶」として売っています。花が開いているわずかな時間にたくさんの雄しべを集める仕事は大変だと聞いたことがあります。一度日本で買って試したことがありますが、とてもいい香りです。

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 蓮の実です。蓮は捨てるものは何もないと言っていいほど役に立継植物です。できた種が大きくなったものも食べます。ほくほくしておいしいし栄養価も高いそうです。

 この伊豆沼に生えているピンクの花の蓮は、昔からある蓮で改良されていない種類です。できたレンコンは小さくて硬くて人間には食べてもらえないのですが、ハクチョウたち水鳥が食べてくれるのです。

 まわりの農家でも人間用の蓮を植えていますが、花の色は白くレンコンは大きく柔らかいのです。味をしめてしまえばハクチョウだって当然美味しいと思うだろうし、取られないようにネットをかけて栽培しているのを見かけました。

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 蓮の葉に乗っているコサギを何羽もみかけました。ダイサギアオサギは一羽もいません。「コサギは軽いから?」と聞いたら、その通りでした。コサギなら支えてもらえるけれど、それより大きくて重い鳥は、乗ったら沈んでしまうからだそうです。

 彼らは、蓮の葉のお立ち台から魚をねらって魚を独り占めです。水深は平均1,6ⅿくらいあるので、大型の鳥は水底に立つこともできません。一般的に大は小を兼ねるといいいますが、この場合小は大より勝るということになるのでしょうか。コサギは幸せ者です。

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 逆さコサギです。

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 蓮の葉にたくさん水玉ができています。

 蓮の葉の上で水がはじかれ水玉になるのをロータス効果というそうで、いろんなものに応用されていると聞きました。

 

 ぎっしりと生えた蓮の間を進む舟に揺られてお釈迦さま効果に酔いしれた30分でした。

 今まではこの夜勤の男性のことを気安く「おじさん」などと呼んでいたのですが、今回鏡を見ないおばさんと同じ生まれ年だと判明しました。「お互い健康でいましょうね。」「また来てくださいよ。」と言葉を交わして舟をおりました。遠い宮城県に友だちがまた1人できたような気がしました。

 次に続く。