劇場版 再会長江

劇場版 再会長江

 4月30日にシネマリンのポイントカードがいっぱいになっていたので今やっている映

画の中で、劇場版「長江」を観ることにして出かけた。

 10年前にNHKで撮った長江のその後を追ったドキュメンタリーらしいがテレビを持

たない私は観たことがない。

 監督は、「竹内 亮」さん。お連れ合いは中国人で現在は南京に住む。監督は、中国

では有名なインフルエンサーだとのこと。(パソコンでそのユーチューブを見ることが

できることがわかった。)

 

 前回の撮影では叶わなかった長江最初の一滴を撮ることが今回の目標だ。監督がなぜ

そこまで川の源流にこだわったのか、自分の身の回りの小さな川の源流を見てみたいと

思ったことがある自分としてもその気持ちがよくわかる。

 

 40代のまだ若かったころ、多摩川、荒川、笛吹川分水嶺があるという笠取山に登

ったことがある。笠取山は、山梨県にあり、標高は1953m。

 都民の水を賄っている川の最初の一滴を見てみたいと思ったのだ。

 頂上までの急登を何とかやり過ごし、下山する途中で水干と呼ばれる場所に行った

が、水が枯れていたのかそれらしい水を見つけることが出きなかった。それでも、川の

 最初の水の一滴を見たいという気持ちそのものはいい思い出だ。

 

 長江の河口にあたる上海には一度行ったことがあるが、上流域にはまだ行ったことが

ない。長江は、6300kmと日本列島が3つくらい入るくらいに長い。日本で一番長

い川は信濃川(367km)だが、その信濃川ですら最初の一滴に出会う冒険はしたこ

とがない。なんとその20倍の長さ。映像で見れば2時間のフィルムで表せるが、これ

だけは体感しなくてはわからない。

 

 河口にあたる上海から、南京、武漢、山峡、重慶、濾州市、雲南チベット高原と時

には船に乗り、四駆に乗り、一路チベットの氷河をめざす旅だ。

 

 電力需要を賄い、たびたび起こる洪水を防ぐために作ったという三峡ダムは本当にバ

カでかい。このダムを越え船が上流域と下流域をそのまま航行するために、ここでは、

船ごと上げ下げできるエレベーターがあることを知った。

 このダムを作るためにこの流域の100万人が移住を余儀なくされたことも想像する

ことが難しい。

 

 10年前と同じ道を進むので、出会った人たちと再会する場面が見どころである。

 いくつか再会のドラマが展開する。

 一つ紹介すると、チベット族の女性は、10年前は17才。

 風光明媚な長江の展望台で子ヤギを抱いて観光客を待っていた。そのころは、

「ヤギを抱いて写真を撮りませんか。」

と、観光客に強く勧めることもできないで一日を過ごす内気な少女だったが、10年経

ったこの時は、見違えるように積極的な大人へと変身していた。

 

 ダムによる水位の変化は、この流域に住む人たちの生活を良きにつけつ悪しきにつけ

この十年で大きく変貌させた。このドキュメンタリーは、長江の初めの一滴を探すドキ

ドキ感を味わい、また十年の時を経た再会に心を通わせて観てもらいたい映画だ。