「世界が食べられなくなる日」

 9月に観た映画で、一番衝撃的だった映画です。

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  昨年観た「モンサントの不自然な食べ物」の続編になるフランス映画。

 遺伝子組み換え食品を食べ続けるとどうなるかという極秘に進められた研究に密着したドキュメンタリーだ。

 モンサントは、アメリカに本社を構えるアグロバイオ企業と呼ばれているが、過去には、枯葉剤、農薬、PCB、牛成長ホルモンなどを生産してきた会社だ。

 そのモンサントは、現在「遺伝子組み換えの種」と、セットで「農薬」も全世界に売りこんでいる。

 除草剤をまくと、この種から育った作物は枯れないが、周りの草が枯れるという。 

 アメリカのよう広大な農地に飛行機で農薬をまくような大規模農業にはうってつけの種だという。

 ここ辺りまでは、前回の映画の内容だ。

 何が問題かというと、その遺伝子組み換え食品を食べると一体どうなるのかということが明らかになっていないということだ。

 アメリカ政府は、その辺りを明らかにしないまま認可したようだ。政府の中枢と企業の癒着が見え隠れする。

 今回の秘密裏に行われた実験研究では、遺伝子組み換え食品を2年間ラットに与え続け、他の原因で病気になったりしないよう、厳密な環境設定をして実験を進めた。

 ラットの一生は、約2年だという。

 モンサントは、認可の際、ラットの実験の結果をわずか3ヶ月分報告しただけでこの種を売り出した。

 2年間与え続けるととんでもないことになることを知っていたのかもしれない。

 実験に使ったのは、遺伝子組み換えのとうもろこしと農薬をしみこませた水。

 これをいろんな割合で食べさせた結果だ。

 人間は、ラットに比べれば体も大きいし、寿命も長いし、同じものだけを食べ続けるわけではないので、ラットの実験のようにすぐに結果が得られないから余計に怖い。

 ただいま進行中なのかもしれないのだ。

 今、日本では遺伝子組み換えの小麦やら大豆やらそのままの原材料としてのものには、表示する義務があるようだが、ジュース、ビスケット、冷凍食品などの製品の中や、牛や豚や鶏のえさなどに使われているものには表示する必要がない。アメリカでは、まるで表示の義務はないようだ。

 子どもが好きなお菓子類には、ほとんど使われていると思われるので、子どもは、知らず知らず食べているはずだ。

 納豆にはよく表示されているので見るが、そんなものだけでは収まらない。

 日本は、実は遺伝子組み換えの食品輸入大国で、特にとうもろこしについては世界最大の輸入国。

 この約9割がアメリカ産で(アメリカのとうもろこしの88%が遺伝子組み換え品種)、これで家畜の飼料、食用油、コーンスターチなどが作られているということなので、ちょっと考えただけでも口に入っていると考えられる。

 そんな食品が世界中で食べられているということは、本当に安全なものであるかどうかがとても大事なはずなのだが、私たちは、ラットに替わる実験動物に使われているといっても過言ではないだろう。

 フランスを始め、ヨーロッパの国々では、この映画の波紋が大きかったそうだ。

 モンサントは、甘い言葉を使い、アジアやアフリカや中南米をそのターゲットにしているという話だ。

 こういう事実を知って何を選択するかは、それぞれ自由だが、人類の将来に少しでも責任を持とうとするなら、その事実だけは知らなくてはいけないと私は考える。

 フランスのロケに使われた遺伝子組み換えのトウモロコシ畑は、その向こうに原子力発電所が映っていた。

 この二つ ”原子力と遺伝子組み換え” は命の根幹を脅かすテクノロジーである。

 福島の原発事故後 日本では、放射能に汚染されているかどうかについては、敏感に反応するが、それと同じくらい大変なのがこの遺伝子組み換え食品だとは思えないところが実は大きな問題かもしれない。

 この映画の題名「世界が食べられなくなる日」もあながちありえないことではないなと思った。

 もう映画館での上映は終わってしまっているが、毎日食べる食品のことなので、観ることをお勧めする。