「ハンナ・アーレント」

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  監督は、ドイツの女性監督「マルガレーテ・フォン・トロッタ」。

 この監督の 「ローザ・ルクセンブルグ」をかつて見たことがある。

 ハンナ・アーレントは、ドイツ系ユダヤ人。

 ドイツの大学で哲学を学び、第二次大戦中は、ナチに捕らえられ、フランスの強制収容所に送れられたが、脱出し、アメリカに亡命。

 アメリカの大学で哲学を教えていた世界的な哲学者だそうである。

 1962年、ユダヤ人を強制収容所に移送したアドルフ・アイヒマンが逃亡先から逮捕、イスラエルに移送され、裁判を受けることになった。

 ハンナは、その裁判に立会い、「ザ・ニューヨーカー誌」にそのレポートを発表する。

 ところが、そのレポートを発表するやいなや、お前はナチを擁護するのかと ユダヤ人からの批判や脅迫に晒されるが、彼女は、ひるまなかった。

 ほとんどのユダヤ人が、そして世界も ナチスドイツのアドルフ・アイヒマンは、反ユダヤで極悪人と決め付け、決して冷静に裁判を語れなかったとき、

自らも強制収容所に送られた経験を持ちながら、ハンナが この裁判を、あるいはアイヒマンのことをどう捉えたのか、非常に興味を感じ、考えさせられる内容である。

 いろんな批判があまりにも的外れなので、反論をしなかったハンナであるが、

 映画の最後で学生を前に講義という形で、反論を試みるシーンの8分間に その場にいた学生と同じように耳も目も釘付けになった。

 彼女の 「考えることで、人間は強くなる」 という言葉が 映画を見終わった後も 耳に残る。

 彼女の哲学的な深い思索と冷静な目と強い意志を感じる映画である。

 映画の中で、彼女の友だちのひとりが、「君は、ユダヤ人を愛していないのか?」 という 問いに対して、

 「私は、一つの民族だけを愛したことはない。私の周りの友だちを愛しているだけだ。」

と、語った場面があった。

 この言葉は、哲学的な言葉として出てきたわけではないが、私には、深い言葉として心に残った。

 「日本を愛していないのか、日本人を愛していないのか。」 こんな言葉がこのごろよく聞こえてくるようになった気がしているからだろうか。

 

 今日は、映画館へ入るなり、あまりの人の多さに 思わず 「えーっ すごい!」と 声を出してしまうほど混んでいたのでびっくりしました。

 昨年の10月に岩波ホールで公開されたときも、毎日大勢の人がつめかけて、常に満員だったという映画です。

 ジャック&ベティでは、1月いっぱいは上映を続けるということです。今の時代にも十分に通じる普遍的な内容ですので、ぜひお出かけください。全国でも随時公開されるようです。