台湾、街かどの人形劇

 11日の土曜日にジャック&ベティでの初日だった映画を観てきた。この日は初日のサービスで、この人形を実際に動かして見せてくれる実演があるというので午前中新橋に用事があったので、お昼も食べずに横浜へ戻り映画館へ直行した。

 

 台湾のこの人形劇は、「布袋戯」(ほていぎ)といわれ、長年街角で演じられてきた古典的な娯楽だったそうだ。近年この「布袋戯」よりもずっと大きな人形でテレビ受けする大げさなアクションなどを取り入れた形のものが出てきて、本元の布袋戯の観客や演者も減り、存続の危機に直面しているとのこと。世界中がグローバルグローバルと叫んでいる間にローカルな伝統は消えて行くような気がして心が痛むドキュメンタリーだ。

 

 人間国宝の陳錫煌(チンシーホァン)は、現在88才。高齢なので、体の不具合もあり体が思うほどいうことを聞いてくれないようだ。それでも何とかこの伝統的な技術を後世に残したいと世界中を回って公演し、秘儀などないからとすべてを映像にも残そうとしている。演じてくれるなら台湾の人でなくともいいからとフランス人の女性の弟子にも分け隔てなく教えている。そんな劇団の日常から野外での公演まで長い年月撮りためた映画だ。

 

 布袋戯の人形は、木彫りの人形の顔、手、それに着物も自分で縫って制作するものだ。本当に一から何でも作らなければならないので大変だが、きっと人形に魂が込められるのではないかと思う。

 

 本体は30cmくらいの高さで、人差し指で人形の芯を保ち、親指と中指でおよその動きを作り出す本当にシンプルな構造だ。でくの坊の人形なのに、微妙な動きもできるし、それによって人間の感情さえ表わすことができる。単純なのに、日本の人形浄瑠璃にも負けない技術には驚きを隠せない。

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 上映後、配給会社の挨拶と日本で公演している「チョビ布袋戯人形劇団」のチャンチンホイさんが特別に目の前で人形を動かして見せてくれた。左手でおみくじのような札を持ち、右手の棒で一枚一枚めくって見せてくれた。最後の札は「世界平和」。

 

 チャンさんは、北京で京劇を勉強していたのだが、台湾に行ってこの布袋戯に魅せられて今は一番弟子の人に教わってやっている。陳錫煌さんからいえば孫弟子だ。映画にも出ていないのになんだかここに出てくるのが申し訳ない様だと言ってらしたが、100名ほどの会場がほぼ埋まるような盛況だったのは、きっとチャンさんのお蔭かもしれない。

 台湾に行く機会がなければ今月と来月の木曜日、中華街の「悟空茶荘」で陳さんの劇団の布袋戯が20分の短いものだが見られるようだ。

 (*台湾では、漢字も旧字体を使っているが、私が使えないので新漢字で失礼した。)