「桃(タオ)さんのしあわせ」

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 一昨日、久しぶりの中国映画を観ました。

 たくさんの映画の中から何を観ようかといつも迷いながらも選ぶわけですが、年のせいか戦いの様子や人が殺される映像がメインになっている映画は、近頃選べなくなってきています。映画といえども、自分の毎日に多少とも影響があるので気持ちがほっとするものを選んでいます。

 この映画は、香港の映画です。60年間同じ家族に仕えてきた桃さんの人生の最後を描いた作品です。家族のほとんどは、アメリカに住んでいて、今は映画プロデューサーのロジャー(アンディー・ラウ)の世話をしています。

 小さい時からそこにいるのが当たり前のように、そして日常は最低の言葉しか交わしてこなかった桃さんが、突然脳卒中で倒れるのです。桃さんは、病院に入院してリハビリを経てかなり回復をしてきますが、脳卒中は、繰り返すからといって、仕事は辞め、老人ホームへ入ることを希望します。

 ロジャーは、桃さんがかけがえのない人だったことに気づき、老後を看るのは自分だと考え、経済的なことも老人ホームの入居のこともすべて仕事をこなしながら世話をします。

 印象的だったのは、ロジャーがプロデュースした映画のプレミア上映会に桃さんをエスコートして連れて行く場面です。桃さんは、髪のセットをし、口紅をつけておめかしします。

 このちらしの写真は、その上映会の帰りに、桃さんが、「映画の最後に、あなたの名前が大きく写ったのでびっくり。お父様が生きていらしたら、さぞ喜ばれたことでしょう。」と誇らしげにロジャーに話している場面です。

 それからしばらくして桃さんは亡くなりますが、戦争で家族も死に、養父家族もなくなりこの家に預けられ、お手伝いさんとして仕えた桃さんにとっては、小さい時から世話をしてきたロジャーが社会的にも大きな仕事をしてきたことを見せてくれたこの日は、最高の日だったと思いました。

 この映画は、実話を下敷きにしているだけあって、老人ホームの老人の生活の様子は、知りえた人にしかわからないだろうリアルさがそこここに見られます。

 監督はアン・ホイという女性です。私は、かつて「女人四十」でこの監督さんの映画を見たことがありますが、生活の細々を女性ならではの視点でしかもユーモアを交えて描く監督さんです。

 桃さん役は、ディニー・イップ。彼女は、この作品でヴェネチア映画祭の主演女優賞を受賞したそうです。ロジャー役のアンディ・ラウは、共同プロデューサーとして名を連ね、俳優としてはノーギャラで出演したそうです。香港、台湾ではほとんどの賞を総なめにした作品で、今でも世界のあちこちで上映されている映画です。

 人生の最後をどう生きるかを考えさせられました。