鮎そば

 東北旅行へ行く前日の4日に、八王子祭りの日が命日の友人の墓参りに行きました。 早いものでその彼女が亡くなってからもう4年が経ちました。

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 帰りにいっしょに行った友人が見つけてきた蕎麦屋さんに寄りました。6月に一度来ているので、二度目です。このお蕎麦屋さんは、実はかつて1年だけいっしょに働いたことがある人がやっている店でした。

 6月に会った時は、びっくりでした。顔と名前は覚えていたけれども、お互いにまだ若かった頃のことです。声には出さねど、これまで重ねてきた年月をずっしりと感じたものです。

 その頃から、彼は釣りをやったり、名古屋コーチンを飼っていたりと 一味違う趣味に生きていた人だったので、定年退職をしてから、趣味のそば打ちが高じて蕎麦屋を開くことになったのはわかるような気がしました。

 彼は、どこのそばが美味しいか日本全国そば行脚を重ね、自分のめがねに叶ったそば粉を取り寄せているようです。食べる直前に、粉に挽き、そばを打ち、ゆでて出す、いわゆる三たてのそばを出してくれます。三たてを看板にしているので、予約を入れておけばその時間に食べられるようにしてくれます。ふらっと行っても食べられますが、その工程にかかる時間を待つ覚悟をしなくてはなりません。

 儲けることだけを考えていたらそんな悠長なことをやっていられませんが、「暇なときは、趣味の釣りにも行きたいので、ちょうどいいんだ。」と言っていました。

 

 今回は、「鮎そば」という食べたことがない物を食べに行ったのです。初めて行った時に、「8月になったら釣ってきた鮎を使ったそばが食べられるよ。」という話がずっと頭にこびりついておりました。食べたい食べたいと思いながら待つこと2か月。

 これがその「鮎そば」です。

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 相模川水系は今年鮎が豊漁だったようで、その鮎を乾かし(ここのところを聞き洩らしたのでいい加減ですが、遠火で蒸すようにするのかもしれません。)それで出汁を取り、汁そばに仕立てたものです。

 本当にさらっとさっぱりした出汁なのにコクがあるのです。口に入れただけで幸せな気持ちになります。鮎の出汁だけで何もほかの物は入れていないと言っていました。

 これは、皆さんご存知の鮎の塩焼き

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 もちろん、彼が釣ってきた天然ものです。ちゃんと苔の香りがする鮎です。めったに天然物は食べられないので、これで鮎は香魚っていうんだということが納得できました。今は、柑橘類のいいのがないので、付いていたのはライムです。

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 後から出てきたのは、出汁を出すのに使った鮎をから揚げにしたものです。これがまた美味しいのです。日本酒を飲む人は、これを肴にするとお酒が進むだろうと想像できるお味です。もう一度鮎の出汁でそばを食べてみたいものだと思うけれども、あの時点であと10人分くらいで終わりだと言っていたので、今年は、もう1回というわけにはいかないようです。

 これは特別メニューで、2500円。普通は天ぷらそばが1500円(せいろ2枚と野菜中心の天ぷら)です。ほかにもメニューがあるのでしょうが、よく覚えていません。そばは、十割そばです。

 参考までに、店の名前は「川崎」といいます。場所は、町田市の大地沢青少年センターへ行く途中にあります。(八王子と町田の市境付近)

世界谷地原生花園(宮城県栗原市の旅その2)

 朝のうちに蓮舟に乗った後は、宿舎の方にお世話になった挨拶をして駅へと戻りました。駅を挟んで伊豆沼と反対方向にある「世界谷地原生花園」(せかいやちげんせいかえん)へ行こうと思ったからです。まず、前日までの天気で行けるかどうかを確かめるために駅にある案内所へ行って聞いてみました。

 前日まで思っていたほど雨が降ったわけではなかったようで、「行けますよ。」とのこと。

 ナビの設定をどこにしたらいいかということと、お昼を食べられる場所を教えてもらい出発です。西の方へ向かって車を走らせること約1時間、世界谷地原生花園の駐車場へやってきました。道は細いところもありますが、この日はほとんど対向車もなく楽に行くことができました。

 世界谷地原生花園は、栗駒山の麓に広がる湿原で標高700ⅿくらいのところにあります。名前の頭になんで世界がついているのかが不思議でしたが、それくらい広いという意味でつけられたようです。

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 駐車場からしばらくブナの林の中を歩きます。ブナの原生林は、東北といえども少なくなってきているので貴重な森になっているのだそうです。この時間、空が曇ってしまって木漏れ日の輝きがありません。

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 今観察路の木道が設置されているのは二か所。まず、第一湿原へ入ります。

 この湿原は、ニッコウキスゲの大きな群落があるので有名ですが、残念ながらもう茶色い実ができてしまっていて一輪の花も見つけることはできませんでした。

 8月はちょっと寂しい湿原ですが探せば咲いているものです。

サワギキョウ               ミカヅキグサ

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駒ヶ岳にも咲いていたコバギボウシ    赤い木の実(木の名前がわかりません。)

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 右側の雲に隠れた山が栗駒山ですが、この日は姿を現してはくれませんでした。

 だんだんと雲行きが怪しくなってきました。

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 入口に戻って、山道をしばらく行くと第2湿原が始まります。この第二湿原は、10年前に起きた岩手・宮城内陸地震の影響で、木道がくずれたりしたため10年間出入りができなかったのですが、幸運なことに今年やっと整備が終わり入ることができることになったのだそうです。

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 こちらの湿原では、第一じゃ見られなかった花が見られました。

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 遠目からだとまるでアザミの仲間です。でもよく見ると葉っぱが違います。棘のある立派な葉っぱではなく、華奢な葉なのです。これは、タムラソウ。ひときわ鮮やかに見えました。

 こちらは、ミズギクといいます。第一湿原にもありましたが、こちらの方がたくさん咲いていました。茎に白い毛が生えているのがわかるでしょうか。

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 実は、第二湿原を歩いていたら、怪しげな雲からいきなり雨が降りだしました。あわててレインコートを着て傘をさしました。湿原では雨宿りをするところもないので、元来た道を急いで戻りました。

 林に戻るころには雨も止みましたが、この日はやはり不安定な天気だったようです。

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 帰りのブナ林で面白いブナの木を見つけました。1本の木ですが、まるで親しい人同士寄り添っているような姿です。通り過ぎて行く人がいろいろ想像していいるのではないかと思いました。

 ブナの根の保水力というのは素晴らしいものがあり、たくさんの雨が降ってもちゃんと土の中に貯めてくれる貯水タンクの役割を担ってくれるのです。洪水を防ぐためにもこうしたブナの原生林を保護して開発から守ることが今問われているような気がします。

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雨後のタケノコといいますが、雨後のキノコも2本ほどみつけました。

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 駐車場に戻ってくる頃には青空になり、盛岡で見てきた岩手山の姿も北東方向に見えていました。この日、出会った人は2組だけ。静かな散歩ができました。

 お腹もすいたので、教えてもらったところへお昼を食べに行きました。ここから車でほんの3分ほど下ったところです。左に曲がる指示の看板がでていたのですぐにわかりました。

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 ここは、栗駒山の水の恵みを利用して岩魚の養殖を生業にしている食堂です。

 岩魚の塩焼き定食か岩魚丼かということで岩魚丼の方を注文しました。岩魚の味は食べつけないので、よくわかりませんが、なかなか食べることができない珍しい食材をいただけただけでも来た甲斐がありました。

 食べ終わってから庭にある養殖池をみせてもらいました。

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 上の方に小さな岩魚、下の方へ行くにしたがって型が大きいものの水槽になっています。

 小さな岩魚                大きな岩魚

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 夕方5時の新幹線に乗車。無事5泊6日の旅を終えることができました。

 振り返って

 まず、この旅行はJRの切符を取るところから結構ハードでした。8月5日出発の指定券を取るには、1か月前の7月5日にみどりの窓口へ行かなければなりません。これは何とか一度でクリアーできましたが、帰りの指定券は10日発売ですからもう一度みどりの窓口へ行かねばなりません。まして11日からお盆期間の繁忙期ですから、自由席だと疲れていても座席が確保できないなんてことになっても困るわけで、うちを午前6時半に出て午前7時にみどりの窓口が開く前の予約というのを取りました。こうしておくと、みどりの窓口が開く午前10時に並んだ人よりも先に手続きをしてくれるので、取れる確率が高くなるというわけです。3時間くらいモーニングコーヒーを飲みながら時間をつぶします。それでも取れないこともあるようで10時半過ぎてからまたみどりの窓口へ行くと取れているか取れていないかの結果が〇と×で表わされている表を見ます。取れていた場合は再び列に並んでやっと購入できるのです。ふだんこんな繁忙期にチケットを取るようなことがなかったのでたいへん手間がかかることを知りました。

 天気も大事。今回は予報よりは恵まれていい方へ変わったのでよかったですが、最悪毎日雨降りという場合もあるのでそれなりの覚悟が必要です。

 旅は、前と最中と後の3つを含めて旅だと思っているので、今回ブログで後の振り返りができてほっとしているところです。

 先日も友だちに「あなたって旅の話をするときはとても楽しそうだね。」と言われました。そうみたいです。体力がだんだん怪しくなってきているので、どこまでそんなことが許されるのかわかりません。できる間はせいぜい命の洗濯に出かけたいと思っています。

 長い旅記録にお付き合い下さった皆様ありがとうございました。

 

蓮の花咲く伊豆沼 (宮城県栗原市の旅その1)

 9日3時過ぎ宮城県の北部にあるくりこま高原駅に到着しました。

 栗原市にある伊豆沼へはここ2年続けてきています。10月になるとシベリアからやってくるマガンの群れがここへ渡ってくるからです。マガンだけでなく、オオハクチョウヒシクイやたくさんのカモたちもやってきて冬の間中伊豆沼はたいへんにぎやかです。

 今回は、伊豆沼を覆うように咲くという蓮の花を見に来たのです。このハスの茎(レンコン)は、冬にここへやってくるオオハクチョウの大事なエサになるのです。

 伊豆沼のそばにある「ウエットランド交流館」(宿舎)にいつもお世話になっているのですが、そこの夜勤の男性が夏は蓮舟をやっているからというので一度夏にもやってきたいと思っていたからです。

 この日は、台風が近づいて大荒れだと聞いていたので、駅へ下りた時に雨は少し降ってはいたものの、風は吹いていなかったのでこれで宿舎に着くまでは大丈夫だと安心したものです。

 伊豆沼のまわりには歩いて買い物に行けるお店は一つもないのです。バスなどももちろんありません。宿舎では夕飯を食べるお客さんが二人以上いると食堂をやっている方が出張してきてくれるのですが、こんな日ですから客は私一人。夕飯はでないことを聞いていたのであらかじめレンタカーを借りておきました。

 

 そこで、夕方6時ごろ、伊豆沼の東の端にある「くんぺる」というレストランへ行ってみました。歩くと1時間以上かかるところです。そのレストランも個室にお客さんが一組いただけであとは、私一人、広い館内は閑散としています。ここは、伊豆沼のまわりで生産される農産物や畜産物を材料にして提供してくれるところです。

前菜             サラダ          メイン

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スープ            デザート

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 ディナーコースです。本来私は、お肉を食べないようにしているのですが、この日は選べるメイン料理の魚が作れないというので、仕方なくここの加工工場で作っているソーセージやベーコンをメインにしました。何せ、ボリュームがすごくて本当にお腹がいっぱいになりました。ライスとコーヒーも付いて2000円でした。前菜に出た赤いのが気になり聞いてみたら、思った通りホヤの燻製でした。ホヤは皮ごと燻製するのだと教えてもらいました。やりたがり屋は一度やってみたいと思ったのです。

 

 翌朝の宿舎の窓から見た伊豆沼です。

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 もちろん、前の晩は晴れるように祈っていましたが、こんなに見事に晴れるとは思ってもいませんでした。水面にバラ色の雲や深い緑の木立が映り込んでいてそれはそれは美しい光景でした。

 夜勤の男性と朝の挨拶を交わし、朝一の蓮舟にのせてもらえるように頼んだのですが、「毎日順番があって、おれは今日は6番目なんだよ。もっと上手な人がいるから。」というので、仕方なく船着き場まで車で行きました。

 一番舟は8時出発だということです。モーターで動かす10人乗りくらいの舟が全部で11そう停まっていました。

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 右の方から1そうやってきました。沼の近くの人は舟で通勤なのでしょう。ところが待っている間に宿舎の男性があわててやってきて、みんなに「ウエットランドのお客さんだから、俺がいくわ。」と言いながら舟に乗せてくれました。ほかには乗る人もいなかったので「貸し切りだわあ!」と喜んでいるのもつかの間、数メートル進んだところで新しいお客さんが走ってきました。結局戻ったので乗客は3人になりました。

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 西の方は、蓮の生えていないところがあります。宿舎の方に聞くと、沼の水質が悪くなるので毎年一部を刈り取っているのだとのことでした。大きい葉は蓮、小さい葉はヒシです。ヒシの実は特にヒシクイの大事なエサになります。

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 さあさあ出発!一面ハスです。ハスの海を泳いでいくような感覚になります。舟はハスの茎や葉をひっかけないように細い水路を進んで行きます。

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 蓮の花って、中心部から光が放射状に出ているように見えて、バラの花とも違う美しさです。ハスの花の命は3,4日だと言われています。咲いて閉じて咲いて閉じて・・・最後は花弁がパラパラと落ちて花は終わります。花弁にしわしわができているのは、2日目とか3日目の花ではないかと思います。時間が経つとしわしわになるのは人間の皮膚も同じですね。わが身は、3日目当たりかと思いますが、あえて鏡を見ないように努めております。

 

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 花は、午前七時ごろから九時頃までが一番見ごろだそうです。午後になるとほとんどの花は閉じてしまいます。ちょうど来る前に調べた時は、7分咲きとのことだったので、一番いい時に来たのだと思います。

 この伊豆沼と隣の内沼では7月の20日頃から8月末までが「はす祭り」ということで、毎年舟が運行されています。

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 花粉がめしべに付き受粉が終わって役割を終えた黄色い雄しべです。ベトナムではこの雄しべを使い、お茶の葉に甘い香りをつけて「蓮の葉茶」として売っています。花が開いているわずかな時間にたくさんの雄しべを集める仕事は大変だと聞いたことがあります。一度日本で買って試したことがありますが、とてもいい香りです。

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 蓮の実です。蓮は捨てるものは何もないと言っていいほど役に立継植物です。できた種が大きくなったものも食べます。ほくほくしておいしいし栄養価も高いそうです。

 この伊豆沼に生えているピンクの花の蓮は、昔からある蓮で改良されていない種類です。できたレンコンは小さくて硬くて人間には食べてもらえないのですが、ハクチョウたち水鳥が食べてくれるのです。

 まわりの農家でも人間用の蓮を植えていますが、花の色は白くレンコンは大きく柔らかいのです。味をしめてしまえばハクチョウだって当然美味しいと思うだろうし、取られないようにネットをかけて栽培しているのを見かけました。

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 蓮の葉に乗っているコサギを何羽もみかけました。ダイサギアオサギは一羽もいません。「コサギは軽いから?」と聞いたら、その通りでした。コサギなら支えてもらえるけれど、それより大きくて重い鳥は、乗ったら沈んでしまうからだそうです。

 彼らは、蓮の葉のお立ち台から魚をねらって魚を独り占めです。水深は平均1,6ⅿくらいあるので、大型の鳥は水底に立つこともできません。一般的に大は小を兼ねるといいいますが、この場合小は大より勝るということになるのでしょうか。コサギは幸せ者です。

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 逆さコサギです。

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 蓮の葉にたくさん水玉ができています。

 蓮の葉の上で水がはじかれ水玉になるのをロータス効果というそうで、いろんなものに応用されていると聞きました。

 

 ぎっしりと生えた蓮の間を進む舟に揺られてお釈迦さま効果に酔いしれた30分でした。

 今まではこの夜勤の男性のことを気安く「おじさん」などと呼んでいたのですが、今回鏡を見ないおばさんと同じ生まれ年だと判明しました。「お互い健康でいましょうね。」「また来てくださいよ。」と言葉を交わして舟をおりました。遠い宮城県に友だちがまた1人できたような気がしました。

 次に続く。

蓮の花咲く伊豆沼 (宮城県栗原市の旅その1)

 9日3時過ぎ宮城県の北部にあるくりこま高原駅に到着しました。

 栗原市にある伊豆沼へはここ2年続けてきています。10月になるとシベリアからやってくるマガンの群れがここへ渡ってくるからです。マガンだけでなく、オオハクチョウヒシクイやたくさんのカモたちもやってきて冬の間中伊豆沼はたいへんにぎやかです。

 今回は、伊豆沼を覆うように咲くという蓮の花を見に来たのです。このハスの茎(レンコン)は、冬にここへやってくるオオハクチョウの大事なエサになるのです。

 伊豆沼のそばにある「ウエットランド交流館」(宿舎)にいつもお世話になっているのですが、そこの夜勤の男性が夏は蓮舟をやっているからというので一度夏にもやってきたいと思っていたからです。

 この日は、台風が近づいて大荒れだと聞いていたので、駅へ下りた時に雨は少し降ってはいたものの、風は吹いていなかったのでこれで宿舎に着くまでは大丈夫だと安心したものです。

 伊豆沼のまわりには歩いて買い物に行けるお店は一つもないのです。バスなどももちろんありません。宿舎では夕飯を食べるお客さんが二人以上いると食堂をやっている方が出張してきてくれるのですが、こんな日ですから客は私一人。夕飯はでないことを聞いていたのであらかじめレンタカーを借りておきました。

 

 そこで、夕方6時ごろ、伊豆沼の東の端にある「くんぺる」というレストランへ行ってみました。歩くと1時間以上かかるところです。そのレストランも個室にお客さんが一組いただけであとは、私一人、広い館内は閑散としています。ここは、伊豆沼のまわりで生産される農産物や畜産物を材料にして提供してくれるところです。

前菜             サラダ          メイン

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スープ            デザート

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 ディナーコースです。本来私は、お肉を食べないようにしているのですが、この日は選べるメイン料理の魚が作れないというので、仕方なくここの加工工場で作っているソーセージやベーコンをメインにしました。何せ、ボリュームがすごくて本当にお腹がいっぱいになりました。ライスとコーヒーも付いて2000円でした。前菜に出た赤いのが気になり聞いてみたら、思った通りホヤの燻製でした。ホヤは皮ごと燻製するのだと教えてもらいました。やりたがり屋は一度やってみたいと思ったのです。

 

 翌朝の宿舎の窓から見た伊豆沼です。

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 もちろん、前の晩は晴れるように祈っていましたが、こんなに見事に晴れるとは思ってもいませんでした。水面にバラ色の雲や深い緑の木立が映り込んでいてそれはそれは美しい光景でした。

 夜勤の男性と朝の挨拶を交わし、朝一の蓮舟にのせてもらえるように頼んだのですが、「毎日順番があって、おれは今日は6番目なんだよ。もっと上手な人がいるから。」というので、仕方なく船着き場まで車で行きました。

 一番舟は8時出発だということです。モーターで動かす10人乗りくらいの舟が全部で11そう停まっていました。

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 右の方から1そうやってきました。沼の近くの人は舟で通勤なのでしょう。ところが待っている間に宿舎の男性があわててやってきて、みんなに「ウエットランドのお客さんだから、俺がいくわ。」と言いながら舟に乗せてくれました。ほかには乗る人もいなかったので「貸し切りだねあ!」と喜んでいるのもつかの間、数メートル進んだところで新しいお客さんが走ってきました。結局戻ったので乗客は3人になりました。

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 西の方は、蓮の生えていないところがあります。宿舎の方に聞くと、沼の水質が悪くなるので毎年一部を刈り取っているのだとのことでした。大きい葉は蓮、小さい葉はヒシです。ヒシの実は特にヒシクイの大事なエサになります。

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 さあさあ出発!一面ハスです。ハスの海を泳いでいくような感覚になります。舟はハスの茎や葉をひっかけないように細い水路を進んで行きます。

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 蓮の花って、中心部から光が放射状に出ているように見えて、バラの花とも違う美しさです。ハスの花の命は3,4日だと言われています。咲いて閉じて咲いて閉じて・・・最後は花弁がパラパラと落ちて花は終わります。花弁にしわしわができているのは、2日目とか3日目の花ではないかと思います。時間が経つとしわしわになるのは人間の皮膚も同じですね。わが身は、3日目当たりかと思いますが、あえて鏡を見ないように努めております。

 

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 花は、午前七時ごろから九時頃までが一番見ごろだそうです。午後になるとほとんどの花は閉じてしまいます。ちょうど来る前に調べた時は、7分咲きとのことだったので、一番いい時に来たのだと思います。

 この伊豆沼と隣の内沼では7月の20日頃から8月末までが「はす祭り」ということで、毎年舟が運行されています。

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 花粉がめしべに付き受粉が終わって役割を終えた黄色い雄しべです。ベトナムではこの雄しべを使い、お茶の葉に甘い香りをつけて「蓮の葉茶」として売っています。花が開いているわずかな時間にたくさんの雄しべを集める仕事は大変だと聞いたことがあります。一度日本で買って試したことがありますが、とてもいい香りです。

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 蓮の実です。蓮は捨てるものは何もないと言っていいほど役に立継植物です。できた種が大きくなったものも食べます。ほくほくしておいしいし栄養価も高いそうです。

 この伊豆沼に生えているピンクの花の蓮は、昔からある蓮で改良されていない種類です。できたレンコンは小さくて硬くて人間には食べてもらえないのですが、ハクチョウたち水鳥が食べてくれるのです。

 まわりの農家でも人間用の蓮を植えていますが、花の色は白くレンコンは大きく柔らかいのです。味をしめてしまえばハクチョウだって当然美味しいと思うだろうし、取られないようにネットをかけて栽培しているのを見かけました。

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 蓮の葉に乗っているコサギを何羽もみかけました。ダイサギアオサギは一羽もいません。「コサギは軽いから?」と聞いたら、その通りでした。コサギなら支えてもらえるけれど、それより大きくて重い鳥は、乗ったら沈んでしまうからだそうです。

 彼らは、蓮の葉のお立ち台から魚をねらって魚を独り占めです。水深は平均1,6ⅿくらいあるので、大型の鳥は水底に立つこともできません。一般的に大は小を兼ねるといいいますが、この場合小は大より勝るということになるのでしょうか。コサギは幸せ者です。

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 逆さコサギです。

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 蓮の葉にたくさん水玉ができています。

 蓮の葉の上で水がはじかれ水玉になるのをロータス効果というそうで、いろんなものに応用されていると聞きました。

 

 ぎっしりと生えた蓮の間を進む舟に揺られてお釈迦さま効果に酔いしれた30分でした。

 今まではこの夜勤の男性のことを気安く「おじさん」などと呼んでいたのですが、今回鏡を見ないおばさんと同じ生まれ年だと判明しました。「お互い健康でいましょうね。」「また来てくださいよ。」と言葉を交わして舟をおりました。遠い宮城県に友だちがまた1人できたような気がしました。

 次に続く。

初めての盛岡その2

 啄木新婚の家

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 石川啄木の歌碑はあちこちにあるのですが、ゆかりの史跡というのはかつて新婚生活を送ったこの家のみだそうです。玄関を入ると左側に床の間付き8畳がありました。縁側から小さな庭に不釣り合いの大きな蕗の葉っぱがありました。両親と妹がそこで寝起きし、ふすまを隔てた右側の四畳半が啄木夫婦の部屋だったそうです。

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 ここで結婚式をすることになっていたのに、啄木は予定の日になっても帰ってこず、それでも媒酌人と家族のみで式をあげたそうです。しかも、この家には3週間余り住んだだけ。そんな縁しかない家なのに、なぜかこの住居の佇まいにはその頃を彷彿とさせるものが漂っているような気がしました。

 啄木と宮沢賢治は、二人とも盛岡中学に在学していたので、賢治ゆかりの詩碑や史跡ものこっています。

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 これは岩手医大の玄関横にあったものです。創立50周年を記念して建てられた詩碑だそうです。

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 前日食べたお蕎麦屋さんのすぐ近くにあった「賢治清水」。盛岡農林高等学校に入学した賢治と盛岡中学に入学した弟が一緒に下宿していた家が下の橋の辺りにあり、賢治も使っていた井戸を整備して保存してあるのだそうです。今でも飲める水だそうで、私も一口飲んでみました。日の照り付ける午後、とてもさわやかなおいしいお水でした。

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 これは、材木町にあった出版社「光原社」の看板。かつて、賢治が「注文の多い料理店」を友人の経営するこの会社から出版しました。今でこそたくさんの童話が出版されていますが、生前に世に出た童話集はこれのみだそうです。

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 今は、主に陶芸、織物など民芸品のお店として営業されています。

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 裏手に回ると、趣のある庭があり、コーヒーを飲むことができます。

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 奥の方へ行くと賢治の作品が塀を飾っています。

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 庭のどんづまりは、北上川です。ノウゼンカズラが今を盛りと咲いていました。

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 後先になりましたが、この通りは「いーはとーぶアベニュー材木町」と言います。後ろ姿は宮沢賢治の像です。前から見た写真も撮りましたが、なぜか私は後姿の方が気に入っています。

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 材木町は、昔からある街の名ですが、賢治ゆかりの光原社を中心にしていーはとーぶらしく看板もおしゃれに作られた通りです。

 ここで賢治などと呼び捨てにしていますが、友人の話では、岩手県人は賢治のことをすごく大切に思っているので、「賢治さん」とさん付けで呼称すると言っていました。

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 前日女子高生が川遊びしていた橋の1本上にある「上の橋」です。擬宝珠が付いている昔からあった古い橋のようです。下流に「下の橋」というのもあるので、その二本がもともとの橋だったのでしょう。

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 この橋の手前に建物自体はリノベーションしてあるけれども隣の家との境に防火壁になる屋根より少し高く作られている「うだつ」がある一角がありました。

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 お昼前ですが、そろそろお腹もすいてきてだんごの文字を見たとたん、中へ吸い込まれてしまいました。

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 中は、テイクアウトのお店でしたが、椅子とテーブルが置いてあるのでここでも食べられるのか確かめたら、いいとのことでしたのでいただくことにしました。

 あべかわとかしょうゆとか知っているのもありましたが、私が選んだのは食べたことがない「黒豆だんご」と「きりせんしょ」。

 「黒豆だんごは、甘くないですよ。」との忠告があったのでわかっていたつもりですが、中には黒豆が1つ入っているだけのお団子でした。ここのお団子は、うちの方で売っているものに比べるとちょっと小ぶりで上品な気がしました。

 もう一つの「きりせんしょ」、実はこちらで食べる「切りザンショ」と同じで山椒の香りのものだとばかり思いこんでいたら、違っていました。ほんのり甘くて中に茶色の甘いタレが入っていました。「食べる時、中からタレが出てくるから気をつけて。」と言われたのに、注意散漫な私は、ズボンの上に垂らしてしまいました。

 後から調べたところ盛岡とか花巻の地方食だそうで、クルミとかごまと砂糖を入れ込んだゆべしのようなものでお節句などに作って食べるのだそうです。

 ご主人は、見るからに優しそうな方でした。お茶も出してくれたのでなんだかゆったりしてしまって、お客さんがいない間つい話し込んでしまいました。

 このお店の前身は、お母さまがやっていらしたお餅やさん。引き継いで今はだんごやになったそうです。古い建物が残されていていい街だというと、「駅の周辺からちょっと距離があるから開発が急激に進まなくていい具合なのかもしれないです。」との答えが返ってきました。

 どちらも120円。値段は、盛岡だからって安いわけではないので、きっと地物の米粉を使って作っているのだろうと思いました。

 ほっこりしたいい気分になりました。

 街の中に残っている私が見た古い建物を並べます。

紺屋町ござ九(雑貨屋)            紺屋町番屋(消防団の建物)

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上の橋たもとの古本屋            啄木賢治青春館になっている建物

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盛岡信用金庫                岩手医大玄関

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 まだまだたくさんあるとのこと。建物を探して回るだけでも面白い街です。

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 9日朝、ホテルの窓からの風景です。白い鉄橋が「開運橋」です。盛岡というとよくこの橋の向こうに岩手山を配置した写真が出てきます。晴れてはいるけれども、雲の流れが速くて台風の到来を予感させる天気です。

 荷物を預かってもらっていたので、最後にホテルへ寄ってから駅へ行きました。朝はこんなだったのに駅へついてまもなく雨が降り出しました。新幹線は午後2時の出発でしたが早めに駅へ戻っていたので、降られずに済みました。ただ1時間後は宮城県に入るのでこの日の台風の進路予想では雨風強くなる覚悟が必要で、またまた深刻な出発となりました。

 次は宮城県です。またよろしくお願いいたします。

初めての盛岡その1

 青森へ行くときも、秋田へ行くときも盛岡を通過することはあってもここへ下車したことがありませんでした。盛岡へ時々訪れる友人から話を聞く機会があり、一度行ってみたいと思っていたところだったので、今回の旅で途中下車することにしたのです。

 8日は、台風が太平洋に沿って北上するという予報でしたが、まだ北東北へは来ていませんでした。9時半ごろ盛岡駅に着いてしまったので、とりあえず宿泊予定のビジネスホテルでチェックインして荷物を預けました。

 ホテルは、北上川のほとりにありました。フロントの女性にお城への行き方と蕎麦屋さんの場所、それに宮沢賢治石川啄木の歌碑がある位置を地図にマークしてもらい、出発です。

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 駅からまっすぐのところに開運橋というアーチ状の鉄橋があります。まずそこを通りながら岩手山を眺めました。残念ながら山頂に雲がかかり全容が見えません。

 お城は、駅からコミニュティバス「でんでんむし号」に乗って10分もかからずに行けました。

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 立派な石垣が残っていますが、本丸をはじめとして建物はすべて壊されてしまっています。

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 本丸の跡です。お城は、今は盛岡城跡公園として木陰にベンチなどが設置され市民の憩いの場になっています。

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 ちょっと大きくしましたが、本丸から見える岩手山です。朝着いた時に比べて頂上付近の雲が取れてきました。岩手山は、裾を大きく引く山容で故郷が盛岡でなくても心を包み込んでくれるような山だなと思いました。

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 一番初めに盛岡城へ来てみたかったのは、啄木の歌碑があるからです。その歌碑は二の丸に設置されていました。

 私が高校生の頃、啄木の歌の中で最初に覚えた歌がここで作られていた歌だからです。どんなお城でそこからはどんなものが見えるのだろうか。空はどんな色だったのだろうか・・・そんな思いを抱えてきました。

  不来方のお城の草に寝ころびて 

  空に吸われし

  十五の心

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 この日は、盛岡と言えども結構日差しが強く、葉先が赤くなったもみじ越しの空はカラッと抜けるような青空でした。

 私ごとですが、東京の高校へ入学後、父親の転勤で仙台へ行くことになり、試験を受けて高校2年になった時には仙台の高校へ編入しました。だれも知った人のいない町でしたので、そのころは、一人でよく散歩をしていたことを覚えています。友だちと遊ぶというようなことはありませんでした。どこかに鬱屈した気分をかかえていたのだろうと思います。授業に身が入らない時は、学校を抜け出せたらと啄木を羨ましく思っていたのでしょう。その自由さに憧れを持っていたのかもしれません。

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 これも啄木の歌碑です。岩手医大近くにあります。

  学校の図書庫の裏の秋の草 

  黄なる花咲きし

  今も名知らず

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 この歌碑は、翌日見つけたものですが、北上川の川沿いの散歩道にありました。

 これも振り返ると心につまされる歌です。

 

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 昼は、フロントの女性にわんこそばじゃない普通の蕎麦屋を紹介してもらっていたので、そこを探して行ってみました。

 「やまや」という蕎麦屋さんです。外壁が濃い黄色で遠くからでもよく目立ちました。昼時でしたから人が多いのは覚悟していましたが、やはり店先に待つ人がたくさんいました。

 そばは、「挽き包み」と「さらしな」と「だったん」から選べます。あとは、単品でえびとかゲソだとか選ぶのですが、私は、「さらしな2枚」と「季節のかき揚げ」と「とろろ」を注文しました。

 いつもさぬきうどんのチェーン店では、かき揚げで出てくるのは、大体玉ねぎとニンジンと決まっているのに、ここのはニガウリと魚のかき揚げだったのです。魚はアナゴだそうで、聞いてまたびっくりでした。なるほど季節の物です。次の季節には何が出てくるのか楽しみなかき揚げです。

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 盛岡の市内を流れる川は、北上川ともう一つ中津川というのがあります。少し下流で合流します。

 その中津川にかかる橋を渡っていると、中学か高校かジャージを着た学生さんが川の中で何か探しているようです。水位は低くてもちろん小さな子でも遊べるような川ですが、ゴーグルをかけて時折潜っているので、魚でも探しているのかと思って近づいた時に上から声をかけると、「いっぱい魚がいるんですけど捕まえられない。」と言っていました。嬉々として遊んでいるのです。

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 橋の下からあと2人現れて、3人の女子高校生だとわかりました。初めは中学生の男子だと思い込んでいたので、女子高生だとわかってまたびっくりです。

 水はきれいだし暑いので気持ちもわかりますが、街の中で女子高校生が全身びっしょりになって遊んでいるというのが信じられない気がしました。通りがかりの男性が「今はいいけど、雨が降りだしたら水かさが増すから気をつけろよ。」と言いながら立ち去りました。

 この川にも秋になると鮭が遡上してくるというのですから、秋に盛岡へやって来たらどんな光景がみられるのかすごく楽しみになりました。

 続く

 

 

秋田駒ヶ岳その2

 7日の朝カーテンを開けると眼下の田沢湖が空の色を映して青く見えました。前日の筋肉痛もあり登れるかと心配したのですが、麓は晴れているので体より先に心が反応してしまいまたおにぎりを作ってもらって山へ行くことにしました。

 ところがバスに乗ると、運転手さんが言うには、7合目辺りからガスっているとのこと。ちょっとがっかりでしたが、昨日のように雨はほとんど降っていなかったので一安心。

 今回は、前日とはコースを変えて8合目➡笹森山➡湯森山➡焼森山➡シャクナゲコース➡8合目にしてみました。

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 ホテルのオーナーから教わった笹森山への最短の道を行くことにしました。この道は初めてでした。しかもバスを降りた人はだれ1人来ないのですからちょっと不安になります。このことは予想できたので、この日はクマ鈴1こ千円なりを麓で調達してきたので チリン チリン チリン と 響かせながら歩きました。

 一旦沢まで下ります。かなり荒れた道でしたが、斜面にオレンジ色のニッコウキスゲの花を見たとたん、なんてラッキーなんだろうと気持ちのスイッチが切り替わりました。もう季節的にどこへ行ってもニッコウキスゲの花は見られないと思っていたからです。

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 見頃は過ぎているにしても。この色は気分を明るくしてくれます。

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 次に群落をつくっていたのが、コバギボウシ。ハクサンシャジンと遠目から見ると紫色で似ていますが、ギボウシです。

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 地上で見るギボウシに比べ色が鮮やかです。

 オレンジ、ムラサキと来て次に見つけた群落は、黄色でした。

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 上はキンコウカ。漢字で書くと、金光花、6枚の花弁からお星さまのように光を放っているということだそうです。漢字に宛てると覚えやすいものです。

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 もう一つは、トウゲブキ。ツワブキに姿が似ていますが、葉の緑色も葉の厚みも薄いです。

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 花の写真がぼけてますが、沢まで下りてきたところです。水が少なかったのですぐに渡れましたが、雪渓が遅くまで残っているところで、ここで道がわからなくなって迷うとか。今日は濁流にもなっていなくてほっとしました。花は、フジバカマだと思うのですが・・・・ 

 

モミジカラマツ                オヤマソバ

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 チングルマのワタゲ           サンカヨウの実           

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 コバイケイソウの実             アカモノの実

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ウゴアザミ                  オニアザミ

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 直登に近い木道を登って行くのはなかなか辛いものがありましたが、両脇に咲く花の写真を撮りながら歩くと休み休みなせいか辛さが半減します。

 夏も終わりに近いせいもあって花がもう終って実がなっているものもあります。コケモモに似た「アカモノ」というのは、正式には何という名前か調べたところ、アカモノが正式名でイワハゼというのが俗名でした。そんな名前がどうして付くのか?と思ったら、実は甘く実の形から桃の果実を連想したようでアカモモがなまってアカモノになったと聞いて、ようやく納得したところです。すごくフルーティだというので、一口食べておけばよかったと今になってすごく残念でしかたありません。

 アザミの名前は私にとって区別がつかないものの一つです。この山の花は、標高が1500mくらいでも亜高山帯から高山帯に咲く植物ということと、東北地方のものなのでおそらくという検討をつけて「羽後アザミ」という名前にしてみたので、よく知った人がいたら教えてもらいたいです。

 アザミに限らず普通より小さい花にはヒメを、普通より大きければオニだとかシシを頭につける日本流の名前の付け方にも日本人の考え方が潜んでいるようで うーん とちょっと考えてしまいます。

 (調べながら書いているので、もう3時間が経過してしまいました。今日の気温は35度を超えているでしょうが、こういう調べ物をしているとあまり苦にならないというのが不思議です。)

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 あと少しで「湯森山」頂上です。強い風が始終吹いているせいか、この辺りには大きな木はなく、ハイマツとシャクナゲが見えるだけです。ここでまたラッキーが待っていました。

ハクサンシャクナゲ

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 7月に終わっているはずの白いシャクナゲの花がここに咲いていたのです。たった二輪だけです。駒ヶ岳には2回登っているのですが、いずれも時期が合わず見ることができていません。今回が3度目。あまのじゃくのシャクナゲに救われました。まるで私がここへ来るのがわかっていたようで愛おしくてなりませんでした。

 このシャクナゲは、白い花でほんのりピンクがかっていて正式名は、「ハクサンシャクナゲ」といいます。

 高山植物には名前の頭にのハクサンが付くものの何と多いことか。それだけ白山には花が多いということ、そこで初めて発見された花もまた多いということだと思います。まだ行ったことがない白山は憧れです。行く機会があればと思いますがこの年ではそれも難しそうです。

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 今日の一番高いところに到達です。「焼森山頂」です。

 さて、ここはタカネスミレとコマクサの群落があるところす。この日も容赦なく風が吹きつけておりました。

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 栄養のかけらもないような砂礫の土地に年中風が吹きつけ、避けるところもありません。この斜面一帯に、6月末には「タカネスミレ」が黄色い群落をつくり、スミレが咲き終わるとこの「コマクサ」がピンクの群落をつくるのです。

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 花を馬の顔になぞらえてコマクサという名前になったと聞くとなるほどと思ったりしますが、受粉してくれる虫たちばかりでなく高山植物の女王を見ようと集まる人間をもひきつける現代風な色合いの美しい花です。

 保水力もないような土なので、前日のような霧雨は天然のシャワーでこの子たちにはなくてはならないものなのだと思いました。水滴が大きな水玉になり、周りの景色を写し込んでいました。

 ここからシャクナゲコースへ入り、8合目の駐車場へ向かいました。シャクナゲのトンネルをくぐるような道なのに、この道にはシャクナゲは一輪も咲いてはいませんでした。あまのじゃくシャクナゲさんの心遣いが身に沁みました。

 

 この日は、前日よりもずっとたくさん歩きましたが、足腰もなんとか持って助かりました。温泉に毎日入れる幸せを感じました。

 友人は、家族経営のホテルなので息子さんの代になってもなお宿の仕事をしています。体はまだまだ元気で安心しましたが、私のように、好きな時にふらふらと旅に出るようなことがなかなかできないのが気になりました。夏にはボランティアで手伝いをして少しでもお役に立てないかなんて余計なことも考えたりしました。

 次は岩手県に入ります。