鎌倉秋の一般公開その2

 大佛次郎茶亭

 鶴岡八幡宮へ向かって若宮大路を歩いて行く途中、右にあるファミリーマートの手前を右へ入る路地を歩いて行くと黒い木の塀に囲まれた大佛茶亭があります。

 13日は、秋の一般公開の日でしたので、門に秋の草花が飾られ華やかな雰囲気になっていました。 この建物は、「鞍馬天狗」「赤穂浪士」「天皇の世紀」などの著作で知られる作家大佛次郎氏の書斎でもあり、文人仲間の交流の場として使われていたそうです。(住まいは、小路を隔てた斜め向かいにあります。)庭には、春は、枝垂れ桜やソメイヨシノや、山桜、牡丹、秋には、矢羽すすき、秋明菊など四季を彩る草木が植えられています。

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 大佛さんは、作家であるとともに、英国のナショナルトラストの精神を日本に紹介し、鎌倉風致保存会の発起人、そして理事の1人として貢献された人としても鎌倉では有名な人です。

 鶴岡八幡宮裏山の山林の宅地造成計画に対して、これに反対する地元住民の運動がおこると大佛さんたち鎌倉に住む文化人がそれに賛同して、鎌倉の景観と自然を守る全国的な波となりました。その結果、「古都保存法」が制定され、全国から寄せられた寄付金などにより山林が買い取られ、鎌倉風致保存会の所有となったそうです。

 古都保存法によるものでしょうが、鎌倉は、山に囲まれた真ん中の部分には、高い建物が見当たりません。大体が3階建てまでの低層の建物になっています。狭い範囲とはいえ、京都よりも徹底しているかもしれません。

   

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 左の写真は、大佛さんの直筆原稿と愛用の眼鏡、それに猫の置物です大佛さんは、大の猫好きだったそうで、たくさんの猫の置物をお持ちのようです。右側の写真は、床の間のしつらえです。

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 建物は、大正9年築、茅葺の平屋です。保存会では、春と秋の2回一般公開することにより、ちらしで保存会への会員を募集するなど風致保存活動の啓発の場としているようです。 大佛茶亭も旧川喜多邸と同様、H21年、鎌倉の景観重要建築物に指定されたそうです。

 いつもは、土、日、祝日のみ、昼前より夕方まで大佛茶廊として喫茶する人にのみ開かれていますが、見学だけではこの中には入れません。13日は、天気もよくて、庭には椅子が用意され、お抹茶をたててくれる和服の女性が色を添えていました。

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 庭を通って出口へ進んで行くと、金木犀の甘い香りがしてきました。まだ満開には時間がかかりそうですが、そろそろ秋もたけなわです。

 実家の父親の書棚に「パリ燃ゆ」という大佛さんの著作があったのを思い出し、この機会に読んでみようかという気持ちになりました。