鎌倉秋の一般公開その1

旧川喜多邸別邸(旧和辻邸)

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 川喜多長政・かしこ夫妻は、東和映画会社を設立し、たくさんのヨーロッパの名画を日本に紹介し、またヴェネチア映画祭に日本の「羅生門」を引っさげて世界に日本の映画を知らしめたという点でも、日本と海外の映画界の橋渡しをした方々です。

 かしこさんは、岩波ホール高野悦子さんとエキプ・ド・シネマを設立し、大手の映画配給会社が配給しなかった名画や、埋もれていた映画をたくさん発掘して紹介されてきていますので、散々岩波ホールに通った私としてはとても馴染みのある方でもあります。

 この家は、哲学者の和辻哲郎氏が江戸期の民家を練馬区で居宅にしていたものを、川喜多夫妻がこの場所に移築してきたものです。

 川喜多夫妻は、隣接した母屋に住んでいて、この家は、海外から訪れた映画監督や映画スターたちを迎える場所として使っていたということです。今日、明日は、特別公開で初めて見ることができました。

 この桟瓦葺の建物は、周りの景観とよくマッチした和風建築だということで、H22年景観重要建造物に指定されました。また、同じく寄贈された母屋の方は、夫妻の業績を永く伝え、市の映画文化の発展に役立てることを目的にした川喜多映画記念館へと建て替えられ現在に至っています。

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 旧和辻邸内部は、太い梁や柱で支えられた土間や座敷があり、民家独特の風情が感じられます。和室は、和辻氏が書斎に使っていたので、作り付けの書棚などもあり、落ち着いた雰囲気です。

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  この和室には、炉が切られ、本来なら囲炉裏を囲んで暖をとるようになっているのでしょうが、海外からのお客様をここへ通してもてなしていたので、畳の上にテーブルと椅子を置いたようです。川喜多夫妻がヨーロッパの映画人との交流があったので、これらの椅子には、フランスの映画監督フランソワ・トリュフォーや、映画スターのアランドロンなども来て座ったそうです。