美ささ苑 夜膳
昨日、午後の用事が終わってから、
久しぶりにかつての同僚と夕飯を一緒に食べました。
ここは、八王子では有名な茶室を配した庭を持つ
懐石料理のお店です。
お昼は、お手頃の昼膳があったので
食べたことはあったのですが、
夜は、敷居が高いというお客さんの声を聞き、
リーズナブルな夜膳を始めたそうで
それをいただきました。
この写真のほかに、先付、吸い物、天ぷらなどが付きます。
タラの芽、よもぎ、ウルイ、鯛の玉子など、
春のこの季節を感じられるものが
料理の形を変えて、いろいろ出てくるので
すごく幸せな気持ちになりました。
鯛茶漬け
単にたくさんあって覚えられないせいもありますが、
最後の食事が一番心に残っています。
鯛茶漬けです。
この日の鯛茶は、鯛の量が多く、しかもすごく脂がのっていて
ずっととろっとした鯛の食感が口の中に残りました。
今、魚の売り場で桜鯛がよく出ているので、
桜鯛が消えないうちに、
これを自分でも作ってみようと心に決めました。
美味しいものを食べると口もなめらか。
ちょうど、ほかに椅子席には人がいなかったので
心行くまでおしゃべりができたのは、言うまでもありません。
食べる前に、お庭を案内してもらいました。
この写真は、入口から、お庭へ入っていくアプローチです。
まだ明るいのですが、灯がともっただけで心が夜へと開かれていきます。
お茶室を望む待合の席から見たお庭です。
ここは、国道20号線(甲州街道)のバイパスから1本入った道にあるのですが、
とてもそんなところにあるとは思えないほど静かです。
上を見れば、青もみじ、紅もみじの新緑が美しく、
足元を見れば、苔の緑が鮮やかです。
お庭からまわりの建物が見えないように、
まわりを竹垣で囲って その世界を守っています。
茶室の前のつくばいです。
茶室の額を正面から撮り忘れましたが、
この茶室は、「獨楽庵」といいます。
いわれを読むと、1580年ごろ作られた千利休ゆかりの茶室で
宇治田原から京都、大阪、北鎌倉、松江の茶人、松平不昧公が江戸深川へ、
最後は、八王子で織物工場を経営していたこのお店のオーナーさんが
工場跡地にこの茶室を移築し、今に至るのだそうです。
かつて八王子の絹織物は有名だったのですが、ある時期から衰退を辿り、
移築するまでの話は、たいへんドラマティックでした。
障子をあけてお茶室を見せてくれました。
まず、この太柱には驚かされました。
床の間にこんな野趣あふれる太い木がある茶室は
見たことがありません。
私は、お茶をやっていないので、奥深い世界はわかりませんが、
ここに座っていると、森にでもいるような一体感が生まれるのでしょうか。
それにしても、移築する前は、津波にも遭って
ボロボロだったという茶室がこうして陽の目を見ることができたのは、
奇跡に近い気がします。