映画「モンサントの不自然な食べもの」

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 去年の11月12月も結構映画を見ました。

 振り返ってみたら、10月に西川美和監督の「夢売るふたり」とナンニ・モレッティ監督の「ローマ法王の休日」のみがフィクション映画で、あとは、ドキュメンタリー映画ばかりでした。

 その中から一番これからの食についてすごく気になった映画が、この「不自然な食べ物」でした。何せ、あらゆるものに欲張りな私ですが、やはり食は一番関心のあるものですから。

 遺伝子組み換えの大豆を使っているかどうかの表示が納豆のパックの後ろにもよく書かれていると思いますが、その遺伝子組み換えの種を世界中に売りまくっている企業がこのモンサント社です。遺伝子組み換え世界シェア90%というからすごいです。すごいというのは、遺伝子組み換えが将来どんな風な影響があるのかまだまだ未知なのにそんなことはお構いなしにその種をモンサント社から買わざるを得ないという状況を作り出しているグローバル企業だという意味ですごい会社です。

 この会社は、遺伝子組み換え作物のほかに、過去に発売された枯葉剤、除草剤などの農薬、PCB、牛成長ホルモンなどを売り出しました。

 アメリカでは、約70%の大豆がすでに遺伝子組み換えの種で育てられ、あわせてこの会社から除草剤が出されていて、他の草は枯れるけれど、この種で育てた大豆は枯れないで育つのです。飛行機で農薬の散布をするような大規模農業経営では、効率のよい種と農薬なんでしょう。農家では、この種を導入したら、自分のところで次年度用の種を取っておいてはならず、必ずモンサント社から新しい種を買わねばならないような仕組みになっており、特許化されているのです。この種の認可、特許化の際には、政府の中枢に会社の役員を送ったり、逆に政府の役人を会社の役員にすえるなどの巧妙な工作も行われた模様。

 種をストックしていないかどうか、調べて歩く調査員をおき、情報が入るとすぐに訴え、賠償を要求し、二度と農業ができない状態にまでしていく恐ろしい姿も見え隠れしています。

 インドでは、遺伝子組み換えの綿花をモンサント系列の会社が売り出しています。病気にならないという触れ込みの種でしたが、結局病気にもかかり、収量もたいしたことがなく、綿花の値段が下がり、しかも翌年の種はまた同じ会社から買わざるを得ない状況で、借金がかさんで首が廻らなくなり自殺に追い込まれる生産者がたくさんいるそうです。在来の種はもう見当たらないそうです。綿花栽培地域の農家の自殺者が小麦生産地域よりもずっと多いというインドの地図が見せられました。フィルムにも不満げに借金の額を口々に話す生産者や若い生産者(25歳)の葬儀の様子が写されていました。

 メキシコでは、トウモロコシ。国としては、遺伝子組み換えの種を輸入していないはずなのに、どこからか入ってきているらしく、花粉が風にのって運ばれるトウモロコシは、在来のトウモロコシに受粉され、奇形のトウモロコシの実ができている様子が写されました。しかも隣の農場で、除草剤が使われているのが流れ出して、はだしの子どもの足は、皮膚の異常が見られました。

 小麦やジャガイモにも遺伝子組み換えがあるので、カナダやヨーロッパ各国でもこの種を導入することが検討されてきたようですが、このフランスの作った映画が一つの歯止めとなり、今のところ導入されていないとのことです。ただ、ブラジルなどの南米やアジアの国々が狙われて遺伝子組み換え作物が導入されているようです。

 日本は、現在遺伝子組み換えであるかどうかの表示がされているので、選択の余地がありますが、アメリカでは表示の必要がないので買う人は選ぶこともできません。安全か安全でないかの結論も出ていない現在、世界の胃袋を握ることがモンサントのビジネス戦略などという会社であることをぜひ知ってもらいたいと思いました。

 これから日本がTPPの交渉へと入っていくときにこの問題は必ず付いてくると考えられますが、まずその実態を知っておく必要があると思います。そういう意味で、この映画を見てよかったと思います。