5月に入ってしばらく間があいた「TPP新聞」が手元に届きました。
私は、食のこだわりからTPPの農業分野や水道のことには疑問がありました。自分が良ければ、今だけ良ければなら、安全安心なものを取り寄せればいいのでしょうが、社会全体、そして次の世代にも安全で安心なものをと考えると政治から目を背けることができませんでした。そのために「TPP交渉差し止め・違憲訴訟の会」の原告の一人になりました。
特に地裁の公判がある時には、何回も傍聴に足を運びましたが、国からの具体性のある説明は聞くことがありませんでした。
2015年5月から2018年10月までの3年半、TPPそのものと交渉プロセスの違憲性を問うてきましたが、最高裁判決で棄却となり終結されました。しかしながら控訴審判決で「種子法廃止」は、TPPを背景にしたものだという判示があったそうです。
日本の主要な農作物の米、麦、大豆は、これまで「種子法」によって安定供給が担保され、維持されてきたのです。以前触れたことがありますが、その種子法を廃止することで、何を政府はしようとしているかと言えば、外資企業の参入、品種の減少、供給不安、さらには遺伝子組み換え作物の生産拡大です。
マスコミは、このことがとても重大であるという信号を社会に送り続けることはなく、2017年通常国会でこの法案を通してしまいました。日本の食料の根幹にかかわることをかくも簡単に決めてしまう日本の国の危うさがどこまで行くのだろうかと不安になるばかりです。
5月24日に「TPP交渉差し止め・違憲訴訟の会」の総会があるというので参加しました。そしてこの日は、TPP訴訟ではないけれども、新たにそれに続く「種子法廃止等に関する違憲確認訴訟」を東京地裁に提訴した日でもあります。
提訴の中身は、80ページに及ぶもので、弁護団が前日深夜までかかって仕上げたということで、大変ご苦労されたことがうかがえました。
今回の提訴の具体的な文面は「TPP新聞」に要約したものがのっていますが、詳細はインターネットのホームページを通じてアップされることになっております。その中のごく一部ですが、弁護団の方から解説されたものがあったので、下記に引用させてもらいました。今度の訴訟の組み立てがおよそわかっていただけるのではないでしょうか。
弁護団 浅野正富氏からの解説2より引用
1948年国連で採択された「世界人権宣言」の25条1項は、「すべての人は、衣食住・・・により自己及び家族の健康及び福祉に十分な生活水準を保持する権利・・・を有すると規定しており、この食に関する部分は「食料への権利」を定めたものと理解されています。
さらに1966年の国連総会において国際人権のうち「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」第11条では、「食料への権利」がより具体的に規定されました。
食料への権利は、だれでもいつでもどこに住んでいても、人が生まれながらに持っている最も基本的な権利の一つで、人が心も体も健康で生きていくために必要な食料を自らの手で得られる権利です。
農民が自由に種子を入手して農産物を栽培し、それを消費者が購入することを政府が制限したら、それは農民や消費者の食料への権利の侵害となります。
日本国憲法第25条は、「健康で文化的な最低限度の生活」を保障していますが食に関する十分な生活水準が保持されなければ「健康で文化的な最低限度の生活」とは言えませんから、食料への権利は憲法25条によって保障されていると解釈することができます。
したがって、種子法によって農民が廉価で優良な品種の種子を入手して農産物を栽培し、それを消費者が購入できた状態を、種子法の廃止によってできなくすれば、それは明らかな憲法違反です。
総会には、あれっどこかで見た方が・・・と思ったら、川田龍平氏が参加されていました。
非加熱製剤でHIVを発症し、薬害エイズ訴訟を闘った方です。あの時代エイズを発症したと名前も顔も公表した人はいなかったので、マスコミでもずいぶん取り上げられました。現在は、立憲民主党の参議院議員。
今回から連れ合いの「堤未果」さんとともにこの訴訟の原告になられたということで挨拶されました。
怖~いこぼれ話
最後に元農林大臣の山田氏からの挨拶の中で、国会議員ら28名が髪の毛を使って農薬の残留を調べたということを聞きました。
遺伝子組み換え種子とセットで売っている除草剤グリホサート(商品名ラウンドアップ)をはじめ危険な農薬ネオコチノイドなどが残留していないかを調べる検査です。
まだこの農薬がどのくらい摂取されると体に残留するのか、どこに一番顕著に出てくるのかということはわかりませんが、このうち23人に何らかの農薬が検出されたそうです。議員さんたちなので、そんなにひどい食べ物を食べているとも思えませんが、忙しい方たちなので外食は多いのではないかと思います。
議員さんがこの検査をやったということはこの結果を踏まえ、これから国会の中でも取り上げられ、政治問題化されていくのではないかと期待されます。
今や、100円ショップでも手軽に買える除草剤としてグリホサートの入った商品、その危険性を知らせないで日々売られ使用されているのが日本の現状です。
アメリカでは、長年ランドアップを使用し続けガンを発症した農民がモンサントに対して裁判を起こし、勝訴したと伝えられています。モンサントの内部文書で、ランドアップがガンを誘発することがわかっていたことが表に出てきたらしいです。こういう訴訟が何件も出てきていることも知る必要があると思います。
遺伝子組み換えの種子の危険性と農薬の危険性、その2つが複合されるといったいどんなことが出てくるのか、すべて今私たちが実験台です。
あと怖いと思ったのが、早く小麦を枯らせて収穫したいという効率を求め、収穫期にランドアップのような薬を撒いているということです。収穫期に使われるこの農薬は特に危険だと思いませんか。