一昨日まで、「象は忘れない」(柳 広司著)を読んでいた。
福島の原発事故が地域共同体も人と人の関係も分断していく理不尽に
何ともやりきれない気持ちになっていた。
明日は、東日本大震災、そして原発事故が起きてから6年の節目の日。
各地でセレモニーや物産の販売などが予定されている。
被災した人たちのことを忘れてはならない特別な日であるけれども
祈ることと東北のものを買うことでしか復興への協力をすることができない自分に
何となくしっくりこないものを感じている。
特に、原発の被害を受け、避難を余儀なくされている人たちに対しては、
自分の非力を感じる。
そんな翌日、この映画を見たのだが、
この種のドキュメンタリー映画ではなかなか味わえない爽快感で満たされた。
飛行機が雲の中に入り込んで、ようやく雲の上に飛び出た時に見る
青空のような気持ちとでも言ったらいいのだろうか。
「原発が稼働しないと日本の経済は立ち行かなくなる」という
神話めいた話が実は作られた話だったのだと気づかされる。
そして、世界では再生可能な自然エネルギーによる発電が主流になり、
日本は、ビジネスという面でも取り残されてきていることも知る。
この映画は、脱原発弁護士の河合弘之氏が監督した映画。
裁判で原発稼働を止めようと頑張っているが、それだけでは不十分。
「原発を止めても、自然エネルギーで日本は再生できる」ということ
平たく言えば、自然エネルギーはもうかることを
市民に広く知ってもらうために この映画を作ったそうだ。
決して、声高に原発反対と叫び声をあげるでもなく、
淡々と自然エネルギーに投資すると儲かるし、
原発はもう斜陽だよ といっているような内容だ。
世界中を旅して(ドイツ、デンマーク、アメリカ、ハワイ、
アイスランド、中国、モンゴルなど)
風力、地熱、太陽光、水力 バイオマスなど
その地域に備わるものを使っての発電のようすや
その担当者や政府の役人へのインタビューで構成されている。
一番印象に残ったのは、ドイツが稼働を止めた原子力発電所の建物のまわりに
たくさんの風力発電が立ち並ぶ壮観な光景。
そして、ドイツに見学に来た日本人が必ず、「フランスの原発の電気をどのくらい
送ってもらっているのか。」と聞くと言っていたこと。
ドイツは現在、フランスからの電力を送ってもらう必要がないほど、
自前の自然エネルギー発電でやっていけているし、余剰電力は、
スロバキアやイタリアなどまわりの国へも送っているそうだ。
福島の事故後、脱原発に歯車を切り、
6年で堂々と原発なしでの自然エネルギーによる電力を作り出し、
周辺の経済も好調だそうだ。
中国でも、福島の事故を見て学び、やはり原発から自然エネルギーへ
方向を変えたと言っているのにも驚いた。
当の日本は、どうだろうか。
事故であぶり出された原発村の複雑な利権構造に振り回され、政府は無策。
逆に古くなった原発を再稼働させることに躍起となり、
海外へ原発を売らんがため、首相自ら企業のお先棒を担いで出かける。
日本では、政府がやらないので、
地方で自然エネルギー発電が自発的に始まっているのも明るい材料だ。
投資にはお金が必要。
資金を融通している信用金庫の存在も無視できない。
できたら、私も原発で失敗した大企業にお金を融通するような大手の銀行ではなく
地方でこうした融資をしている信用金庫にお金を預けたいと思う。
私は、節電しているので月にして大した額を支払うわけではないが、
原発にしがみつく東京電力には依存したくないと前々から思っていた。
ところが、ふだん食べ物を購入している生協が
今月からいよいよ電力を販売することになった。
早速自然エネルギー発電主体の電力に切り替えることにした。
それだけで、なんだか気持ちが少し楽になる。
電力自由化により、いろんな会社が参入しているが
信頼できるところが見つかったら変えていくのは、
これからの日本を再生していくためにも大事なことではないだろうか。
こういう自然エネルギーへ向かう循環を作るためには、市民の力は不可欠。
ぜひ、この映画をご覧になって、福島が突きつけた意味を考え、
子孫に取り返しのつかないものをこれ以上残さないようにしたいものだ。
これからは、公式ホームページの自主上映予定をご覧いただきたい。
*2012年、震災から1年経った頃、気仙沼まで一人旅をした記録を添付しました。この頃は、写真が月60枚しかアップできなかったので、写真の数も少なく簡単なものです。もし、お時間がありましたらご覧ください。