「ドーバーばばぁ」

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 FM横浜の朝の読書案内で紹介があった本である。

 まず、ちょっと言葉遊びっぽいこの題名がおもしろい。

 なんと、50代、60代の女性6人が、イギリスとフランスの間のドーバー海峡をリレー横断した記録を映画に撮った中島久恵さんが映画の後で書いた本である。(映画は、ドキュメンタリー映画の祭典、山形映画祭に出したそうである。)

 親や夫の介護を抱えたり、若くはない自分自身の体調とも向き合いながら、とにかく泳ぐことが好きな普通の主婦が一つの目的に向かって力を合わせて一生懸命に泳いだ記録である。

 毎日のようにプールに通い、ある程度の距離を泳げる人たちにとって、ドーバー海峡横断というのは、海のエベレストともいわれ、憧れのレースらしい。

 私は、水が嫌いなので、泳ごうとも思わないが、友だちの中には、水の中にいることが気持ちがいいといっている人もいるので、そういう人の集まりなのだろう。

 この主婦たちのグループ名は「チーム織姫」。監督は、すでにドーバーを経験済みの男性にお願いし、数年前から着々と準備にとりかかる。

 とにかく、毎日の練習、それに合宿も すごいの一言に尽きる。

 一日に泳ぐ距離は学生並み。

 9月のドーバーの水温は13,4度。

 低体温症とも闘わなければならないわけで、冬の熱海の海で遠泳をしたり、夏の奥多摩の冷たい水の中でも一時間は泳ぐなどの訓練も積む。

 そんなに水が冷たければ、スイムスーツなど体を覆うものを着ればよいと単純に思ってしまうが、ドーバーを横断するには、いろんな決まりがあって肩が出て、足も出ている昔ながらの水着でなければならないそうである。

 それに、ドーバー横断をサポートする協会があって、自分たちのコンディションだけでなく、天候、潮の流れなどいろんな条件をクリアーし協会からOKが出ないと たとえスタンバイしていても泳げないこともあるのだそうだ。

 いろんな困難と闘いながら、2010年9月、2週間の休みを取ってロンドンへ飛び立ち、「チーム織姫」は、憧れのドーバーを泳ぎ切った。

 結果が大事なのではなく、そこへ行くまでの2年間、3年間の努力してきたこと、リレーなので、チームの信頼をどう創り上げるかが大切なのだと リーダーの女性がことあるごとに言っていたのが印象に残る。

 自分も彼女たちと同じような年となった。

 彼女たちのように何か一途にやれるものを決めて残りの人生を終えたいものだと思っている。

ドーバーばばぁ (新潮文庫)

ドーバーばばぁ (新潮文庫)