奥多摩の春 その1

 4月に入ってから、2度奥多摩へ行った。

 標高が高い奥多摩も、今年の春は進み方が早くてヤマザクラも散り、山の芽吹きはとっくに終わりすでに青葉若葉がまぶしく輝いていた。

 青空に白い雲、どこまでも新緑の緑が続き深呼吸をしたくなる。

 

 

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 この日は、奥多摩街道から右に折れ、日原街道を進む。途中、何だか音がするので見上げると鉄橋の上をトロッコが行き来するのが見えた。以前通った時には気がつかなかったわけだ。車を停めて後ろを振り返らなければ見えない。奥多摩の駅近くに工場の建物がある。おそらく山から切り出した石灰石を積んで運ぶためのトロッコだろう。両側の木々の緑の幕から突如出てくる姿を目で追うだけでも楽しい。子どもにでもなった気分だ。

 

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 鍾乳洞よりも2キロ程手前にある森林館を訪ねてみた。ウイークデーなので入った時は、われわれだけだった。

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 子ども向けに工夫された木の名前を書いた扉がある。例えば、「きはだ」の扉を開けると中には、樹形、木肌、この木の用途などが説明されたものが現れる。

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 動物や鳥のはく製も並んでいる。左側は、シカの子ども、人形かと思ったくらい愛らしいバンビ。右側は、「俺もいるぞー」と言わんばかりのニホンカモシカ。フクロウやワシなど山に生息する生き物がたくさん陳列されている。

 そのほかにも、巨樹巨木の位置を示す地図や日本全国を回って巨樹巨木を描いている画家「平岡忠夫氏」が描いた絵も展示されている。

 ここで知ったことは、日原地区は、巨樹巨木の本数が日本一ということ。街道に近くてたやすく見ることができる巨木もあるらしいが、ちゃんとした登山の装備をしてガイドさんに案内してもらわなくてはいけない巨木もあるという。

 大きな樹は、人間よりもずっと長く生きている。大切にしなくてはならないものは何なのか、自然破壊をしても経済さえ良ければいいのかと問うてみたい気がした。

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 学校の建物だが、お昼過ぎの時間だというのに子ども声が聞こえない。不思議に思っていたが、廃校になった校舎だそうだ。今は、診療所などに使われている。天気がいいので、山の上にある日原でも午後の日差しは強い。白い校舎に影を映すモミジの緑が鮮やかだ。

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 森林館から下の道を歩くと斜面に家が建っているので、屋根の上が顔の高さに見える。もう瓦屋根ではないけれども鬼瓦には、屋号だろうか、文字が描かれている。

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 道の脇に、「万寿の水」という水場があった。説明を読むと、この地域は夏場水が枯れて困ったそうである。そこで、対岸の鷹巣山の沢から水を引いてきてようやく生活に困らなくなったそうである。とてもまろやかで美味しい水なので、通る人はみなペットボトルに入れて持ち帰るのだとか。

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 この集落の標高は、600mを超える。高尾山よりも高い。街道を覆うように唯一の八重桜が花盛りを迎えていた。