信州の旅その3ー戸隠から上田、無言館へ

 宿坊の庭の木々の紅葉は今一つとの話でしたが、ツタの赤が燃え下草のシラネアオイ

の実がはじけていました。宿のおかみさんが、「来年の春また来てください。庭一面ピ

ンクのシラネアオイの花が咲いてきれいですよ。」と別れ際に話してくれました。

 環境が整わないと消えてしまうデリケートな花なので、庭の具合がちょうど生育環境

に適しているのだと思います。

 また見てみたいなあ。

 これはそば玉と言います。

 よく日本酒の新酒ができると蔵元では、大きな杉玉をつるしますが、それと同じよう

に新そばになるとこの鼓のような竹籠にそばの茎を入れて店の軒先につるすようです。

 もう新そばが始まっているのではないかと思っていたのですが、茎の色が茶色なので

まだのようです。

 

 ニュースで先日11月の1日に「献納祭」が行われたと聞きました。そば職人が打っ

たそばを中社に奉納する儀式です。今頃は、どこの蕎麦屋さんのそば玉も緑色に変わっ

ていることでしょう。

 

 宿のネット情報では、夕食にそばが出ると書いてあったので、昼も食べずにいたのに

結局そばは出なかったので、蕎麦屋だらけの戸隠でそばは食べられなかったという残念

な落ちが付いたところで戸隠を後にしました。

 

 中社前からバスで長野駅まで戻り、しなの鉄道で上田まで普通電車で行きまし

た。上田からは上田電鉄別所線に乗り換えました。

 上田電鉄の車両は、いろんな種類があってこの電車は、「自然と友だち1号」という

名前で原田泰司さんのデザインのラッピング電車だそうです。

 

 一番後ろの車両に乗りました。電車が出る間際にたくさん荷物を持った女性職員が

乗ってきました。制服がスタイリッシュなのが目を引きました。写真がなくて残念です

が、ベージュに茶で縁取りされたパンツスーツ。細めのパンツに短めのジャケットなの

で、ご本人も言っていらっしゃいましたが、この制服が着こなせなくなったら辞めるつ

もりでいつも気を引き締めているのだそうです。ちょっと見、宝塚歌劇団男装の麗人

という感じでした。

 

 団体さんの予約が入ると電車で昔の童謡をハーモニカで演奏する仕事もやり、下之郷

という駅の駅長の仕事もやるのだとか。銀のハーモニカペンダントを下げているのが彼

女の目印です。

 

 下之郷という駅で下車し、そこからレイラインという名のバスに乗り「無言館」へ

行く予定でいましたが、1時間ほど間があったので、駅から5分ほどのところにある

「手島足島(テシマタルシマ)神社」へ行ってみました。

 朱色が鮮やかなので、近頃塗り替えたばかりのようです。月曜日でしたが、着飾った

親子が七五三のお参りに来ているのに出会いました。

 境内に懐かしい菊人形が飾られていました。六文銭の兜をかぶった真田幸村というと

ころがさすが上田です。

 時間のころ合いを見て駅前へ戻りました。そこからレイラインバスに乗り、「無言

館」で下車しました。以前から一度は「無言館」へ行って来なくてはと思いつつ、長野

は近いからいつでも行けると思って自分の中では延ばし延ばしになっていたところで

す。

 夏に、図書館から借りた「無言館の庭から」という館長の著作を読み、一度窪島さん

にお会いしたいなと思っていたのです。

 無言館の方では写真を取り損ねたので、下ってきたとことにあった「第2展示館」の

建物の写真です。どちらもコンクリート打ちっぱなしの簡素な外観です。この日は、観

光で来た団体さんや道徳の授業ノートを持ってまわっていた中学生もたくさん来ていま

したし、結構にぎわっていました。

 

 出征前のわずかな時間を使って描いた絵画や彫刻、それに戦地から送られてきたスケ

ッチや手紙類などおびただしい数の遺品が展示されていました。

 

 一人一人が対峙する時間は無言となります。すべての感覚を研ぎ澄ませて彼らが作品

に残したものを感じ取ろうとした貴重な時間でした。

 

 ほとんどの若者は20歳そこそこの年齢です。

 その何倍も生きてきた自分はいったい何をなしてきたのかと思うと、情けない気がし

てきます。今からでも少しずつでいいから何かをなしていきたいとここでは確かに考え

ましたが、すぐに忘れてしまうところがまたまた情けないところです。

 

 窪島館長は、土曜、日曜、月曜は、ちょっとはなれたところにある「残照館」と名付

けた展示館におられるはずでしたが、事前にこの3日間は不在だと知っていたので、と

ても残念に思いました。

 「無言館」のバス停近くの公園から眼下の塩田平を望む風景です。ちょっと歩くと分

かりますが、山が多い長野県でもこの辺りは、田んぼも畑も広がり肥沃な土地柄がよく

わかります。

 また先ほどのレイラインバスに乗り、終点の別所温泉へ向かいました。だんだんと雲

が厚くなり、別所温泉に着いたときは、今年の秋一番の風の冷たさをを感じました。

 (つづく)