英国最大のスキャンダル ”児童移民”

 オレンジと太陽

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 岩波ホールでやっていたこの映画がようやく横浜のJack&Bettyで公開された。(7月27日まで)

 ノッティンガムでソーシャルワーカーとして働いていた主人公の女性は、ある日、見も知らぬ女性から「私が誰なのか調べてほしい」と訴えられる。4歳の時にノッテインガムの施設からたくさんの子供たちと船でオーストラリアに送られ、自分がどこで生まれ、母親は誰で、どこにいるのか判らないという。そのことをきっかけにマーガレットは、調査を始める。

 オーストラリアでの調査をしていく中で、たくさんの同じような状況の人たちがいて同じように調査をしてほしいと行列をつくることになる。

 19世紀から1970年代まで、イギリスの児童移民が行われていたことを明らかにした実在の女性マーガレット・ハンフリーズの事実に基づく映画。

 児童移民の数、なんと13万人。しかも、障害を持つ子ども、有色人種は除外。”白き白人のイギリスの備蓄(good,white British stock)を移植するという民族的統一の維持もあったとされる。 保護者に知らされないままに施設に預けられた子供たちを福祉の名の下にオーストラリアやニュージーランドへ送っていた。子供たちを待っていたのは、福祉でもなんでもなく、過酷な労働と虐待。  

 この女性は、1987年に児童移民トラストを設立し、その児童移民の家族と家族を結び合わせる活動を続けている。なかなか政府の関与を認めなかった政府が、この映画の撮影中、2009年にはオーストラリア首相が、2010年にはイギリス首相が正式に謝罪したとのことです。

 監督は、ジム・ローチ。ケン・ローチ監督の息子で、テレビのドラマやドキュメンタリーを手がけてきた新鋭の監督です。(映画のちらしより)

 予告では内容を知っていましたが、権力を持つと、こんなことまでするのかと恐ろしくなりました。政府だけでなく、宗教団体も大きな役割を果たしていたことにも衝撃を受けました。だれが、何のためにこんな非情なことをやってのけるのだろうか。

 そして、マーガレットがこの活動をやっていることをよく思わない人、暴かれることを恐れる人からの再三の脅しがあったにもかかわらず、精神的に病みながら、最後まで毅然とやり続けた彼女の勇気にただただ心打たれました。

 今の日本にも我々には知らされずにひそかに行われていることがあるんだよと教えてくれているような・・・・・重い映画でした。皆さんは、ご存知でしたか?

 ある日、男の人が来て、言った。

 「君のママは死んだんだ。だから、海の向こうの美しい国へ行くんだよ。そこでは毎日、太陽が輝き、そして、オレンジをもいで食べるんだ。」

 元児童移民が思い出して話した言葉です。