「風にそよぐ草」

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 名画座での新春最初に観た映画は、岩波ホールで去年やっていたフランス映画「風にそよぐ草」でした。 いかにも岩波ホールがセレクトしたといった感じのフランス映画。この映画を撮った時にすでに86歳だったというアラン・レネ監督の作品です。

 フランス映画独特の男と女の恋の話です。

 女性マルグリットは、歯科医で独身。ある日、パリの高級な靴屋で衝動的に靴を買い、その帰りにショルダーバッグをひったくられる。そのときに盗まれた財布が男性ジョルジュが買い物に来た車の駐車場に落ちていたのを見つける。財布の中には、現金はもちろんなかったけれども、写真付きの小型飛行機操縦免許証が入っていた。すべてはここから始めるのだが、やはり恋というのは、心に刺さるものがなければ始まらない。ジョルジュは、飛行機オタクのようなところがあり、免許はもっていないが空を飛ぶことには関心が強い。そこに女性で、しかも操縦免許をもった人である。どうしたって興味津津。

 警察に届け相手からお礼の電話がかかってくるのだが、ただのお礼の言葉だけでがっかりして、「ほかに会いたいとかいう言葉はないのか。」と余計なことを言ってしまう。そのことで、またいらいらして、おわびの手紙を出したり、電話をかけたり。留守電ばかりのマルグリットに業を煮やし、自宅の前に停めてある車のタイヤを切ってしまう。

 ストーカー的な行為に恐怖を持ち、警察に相手にストーカー的な行為をやめるよう話をしてもらうことにする。ジョルジュは、妻も結婚した娘もいる家庭を持った男性でもあり、それ以来関係を持とうとはしない。

 ところが、マルグリットは、何も言ってこないジョルジュのことが気になってきて、自分から会いに行こうとする。いらいらして歯科医の仕事にも支障が出てくる。

 最後は、ジョルジュと奥さんを自分の飛行機に招待し、乗せて飛行する。ジョルジュに飛行機の操縦をさせひやひや。後は下から見上げる映像しかない。飛行機は宙返りし大きな岩の陰に墜落したのだが・・・・・結果は見えない。

 飛んでいる飛行機を見ながら、畑にいる農夫が「おかしいな。あの飛行機は危険飛行をしている。」

 女の子が、「猫のえさを食べれば猫になれるの?」とお母さんらしい人に聞いている。

 そして映画は終わる。

 最後の終わり方がちょっと分かりづらい映画です。

 ジョルジュの妄想的な恋、それにストーカー的なことをされても好きになってしまうというマルグリット、ジョルジュの妻が電話を取るシーンがあるのですが、そこでも大きな問題にはならない。フランス的といったらいいのでしょうか。

 映像が鮮烈で素敵だったのは、始まりの部分。決して、彼女の顔を取らず、歩いている足、後姿、歩いている時の音・・・・・、一体今から何が起こるのだろうかと思うミステリアスなどきどき感と、ふわふわとした浮遊感を感じました。

 映画のところどころにアスファルトの割れ目から生えている雑草の映像が出てきます。割れ目があれば、雑草のように恋は生まれてくるとでもいいたいのか象徴的に出てくるのが印象に残ります。