ナガール・ホーパル氷河
この日は、フンザと川を挟んで反対側のナガール村へジープに分乗してのドライブ。
対岸といっても、谷筋が別になるので、フンザからは山が立ちふさがっているので見ることはできない。
ナガールは、今でこそ橋があるので簡単に行けるが、その昔は川向こうといっても橋があったのかどうなのか。しかもナガールは、フンザとは別のミール(藩主)が治めていた隣の国だったのである。
宗教的にもフンザと異なり、シーア派が優勢な地域、今はパキスタン共通のウルドゥー語が使えるが、昔は、使っている言葉もフンザ(ブルシャスキー語)とは違う言葉(シイナ語)だそうで、お互いの交流は少なかったのだろうと思われる。
しかも、ナガールとフンザは、土地をめぐり戦いが絶えなかったということで、隣同士とはいえ仲が悪かったらしい。こんな山深いところなのに、なぜ平和には暮らせなかったかという思いが残る。
ナガールの里は、フンザより標高が少し高く2700mくらいだそうで、その分まだアンズの花がきれいに咲き誇り、再びお花見気分を味わうことができた。
前回アップしたディラン(7257m)への遠征隊は、この村からアタックを開始したのである。
村のあちこちからやってきたポーターを180人も雇い、2日間かけてベースキャンプまで荷上げしたそうだ。
一人22kg、日当は9ルピー、自給自足生活のこの辺りの人にとっては、現金収入を得る数少ない機会であったため、素足に動物の皮を巻きつけただけの足元で(中には素足で)遠くからもやって来ていたそうである。
この小説は、50年も前の話だが・・・・
更に奥へと小一時間ほどジープを走らせ、ホーバル村を通り、ホーバル氷河へと進む。
村を抜けるとまもなくモレーン(堆石)が眼下に見える。
氷河の力は巨大である。これだけのものを削り取り押し流してくるのだから。
ホーパル氷河 モレーン
山の上から30分下ってやっとモレーンの上に立つ。
巨大な力、悠久な時間に思いを馳せる。
その日のお昼は、フンザエンバシーホテルのシェフの自宅の庭でアンズの花を見ながらのランチ。
メニューは、ナガール料理。
名前を覚えているのは、ムル。
小麦粉とバターが入ったカスタードクリームのようなとろんとしたもので、砂糖を加えて食べる。産後などに供されるとのこと。
名前は?
ほうれん草など野菜を細かくいため、カレー味にした具を挟んだチャパティー。
仕上げにアンズの油をかけてある。小麦でなく大麦の粉を使っていると記憶している。
とても食べやすくおいしい。
アンズジュース、サラダ数種、スープ、野菜コロッケ、マトンとじゃがいものスープ煮込み、野菜の炒め物、骨付きチキン、野菜やチキンの入ったいためご飯、プレーンチャパティ、プレーンナン・・・・山ほどの歓待のご馳走が出された。
デザートは数種出たが、私が一番気に入ったのは、ドライフルーツのケーキ。
シェフのお母さんが作って下さったとのこと。
この地方で取れる杏、りんご、クルミ、クワのドライをすり鉢状のものですりつぶして、形を整え、上にかぼちゃの種やクワの実やくるみを飾ってできあがりだとか。ドライフルーツの甘味だけの自然のやさしい味だ。
お茶は、クルミをすりつぶして沸かしたもので、塩をちょっと加えて飲む。
ドライフルーツケーキ(写真がナイフのせいで90度回転してしまって見難い)
言葉が違えば料理もフンザとは少し違うらしいが、フンザは、コーカサスなどと並び世界三大長寿の里の一つだと言われているので、ナガールの料理の中にもそのヒントがあるかもしれない。
花曇りの空が晴れ、お庭はアンズの花びらが時々はらはら・・・・、日差しがまぶしいがのどかな時間が過ごせた。
近くのアンズの木の風景