母の身終い

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 今日は、工事が午前中はないということで、

名画座ジャック&ベティへと出かけた。

 時間帯によって実に10本の映画が上映されるのに、

この映画を選んだのは、言わずもがな、

自分がそろそろ人生の終わりに近づいているからだろう。

 

 脚本・監督は、ステファヌ・プリゼ、フランス映画だ。

この監督の映画は、初めてだが、作風に小津安二郎ロベール・ブレッソンアキ・カウリスマキなどの味わいを感じさせるとの解説にも 興味を覚えた。

 48歳になる息子のアランは、トラックの運転手をやっていたのだが、出来心から麻薬の密売に手を出し、服役し出所してきた。

 母のイヴェットの家に身を寄せ、再出発しようとするが、仕事も順調にみつからないし、長年の深い確執があり、二人の心は解け合わない。

 そんな母親が脳腫瘍に冒され死期が間近いことを知る。

 薬を見つけようと母の引き出しを探しているうちに、書類を見つけてしまう。

 ”尊厳死の表明” ”スイスの施設で尊厳死” ”人生の終え方を選択する”といった文章が書かれ、母のサインがあった。

 母親は、自分らしく最後を迎えたいと思っていたのだ。

それを知ったアランは、激しく心を揺さぶられる。

 残った時間はわずか。

 二人の心は解け合うのだろうか。

 映画の中で、この尊厳死の協会の人と面談をする場面がある。

「人生は、楽しかったですか。」

という質問に

イヴェットは、

「さあ・・・人生は人生ですから・・・」

と、答え、楽しかったとも苦しかったなどという答えは返ってこなかった。

 苦しいこともあり、悲しいこともあり、嬉しいこともあり・・・・そしてそれが人生ということなんだろう。

 この作品は、高齢化社会核家族化の中での、介護問題や終末医療の是非などが問題となる現代において、どう最後を迎えたいのかを提起する一つのケースを紹介している。

 原題がどんな言葉で表わされているかわからないが、日本語のタイトルをつけた人は、すばらしい。

 「身終い(みじまい)」

最後を自分らしく終わっていく という感じがその響きの中に感じられる。

この映画、1月31日までの上映だそうだ。