ソーダ水のあわ -山手ドルフィンー

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 根岸森林公園の上から見ると、新緑が鮮やかです。

 いつの間にか押し寄せてきていた春の波に驚きました。

 馬の博物館から森林公園を抜けて、

馬見所のスタンドのあるところまで行こうとしたのですが、

 進んだ方向が間違っていたようで、

米軍の根岸ハイツの方へ来てしまってたどり着けませんでした。

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 広場では、お母さんが小さな子どもを遊ばせたり、犬が散歩をしていたり、

高校生が集まってランニングやストレッチをしたり・・・

 公園の草地は、向こうの景色が見えないほど広いです。

 1866年から1942年に幕が下ろされるまで、ここが競馬場であったのも頷けます。

 ここは、横浜の桜の名所。

 左側のピンクになったところは、花が散った後の桜の木々です。

 公園を出て、根岸駅まで歩くことにしました。

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 この辺にあるはずだと思っていましたが、

坂の降り口にありました、ありました。

 あの「ドルフィン」です。

 あの といっても、若い方は、ご存じないかもしれませんが、

ユーミン荒井由美だったころの歌、

”海を見ていた午後” の歌詞に出てくる「ドルフィン」です。

 はるか30年以上前、ラジオから流れてくる

けだるいスローなメロディーと

”ソーダ水の中を貨物船が通る‥‥”という歌詞に

 いつかそこへ行って、ソーダ水を飲もうと

心秘かに思っていたのです。

 私自身多分にミーハーなのですが、

人にそう思われるのも恥ずかしく、

他人に言ったことはありません。

 もちろん、他人とは行きません。

 ここは、歌詞にあるように 

”ひとり来てしまった” ところなんです。

 

 お店に入ると、

「お一人ですか?」

と聞かれました。

 ここへ来るのは、やはりカップルが多いのでしょう。

 先客は、中年のカップル、二組でした。

 平日のこの時間は空いていて、

二階の大きな窓辺の席に案内してくれました。

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 ユーミンが歌を作った頃は、窓からはしっかりと海が見えたのでしょうが、

今は、すぐ下にマンションの’建物があって、視界を塞いでいます。

 それでも、左側には本牧の埠頭や三渓園のある三之谷の山、

そして海に浮かぶ船も見えました。

 右手には、”三浦岬も見える” という歌詞にあるように

うっすらと三浦半島が見えています。

 店内には、ピアノの自動演奏が静かに流れていましたが、

静かなレストランです。

 私のソーダ水がテーブルに運ばれると

それ目当ててきていることを察して(ここはそういう客が多い)

ユーミンの ”海を見ていた午後” を 流してくれました。

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 ソーダ水の中を暫く覗いていましたが、

泡が浮かんでは消え、浮かんでは消えするだけで

貨物船は、一隻も通りません。

ソーダ水の甘やかさが じゅわっと心にしみました。

 それが想像力だとわかってはいましたが、

私の長年秘めていたミーハーな夢も

ソーダ水のあわと一緒に消えていきました。

 

 下りの階段で左ひざの痛みという、とんだお土産までかかえて

帰ることになりました。

 たった1万歩歩いただけだというのに。

 ああっ、年は取りたくない!

 

*参考 「海を見ていた午後」 歌詞

 あなたを思い出す この店へ来るたび

 坂を上って、きょうもひとり来てしまった

 山手のドルフィンは 静かなレストラン

 晴れた午後には 遠く三浦岬も見える

 ソーダ水の中を貨物船がとおる

 小さなアワも恋のように 消えていった

二番省略