続きです。
翌日4日は、土湯温泉の見学でした。夜は温泉にしっかりと浸かり、翌朝もしっかり温泉を楽しみ、朝食もしっかりといただいて見学にのぞみました。泊まったお宿は、「向瀧旅館」というかなり大きなお宿でした。朝起きて窓を開け下を見ると荒川の流れる音が聞こえ、木々の紅葉が見えました。
土湯温泉は、福島駅からバスで40分くらい吾妻連峰の方へ登ったところにあります。 古くから開かれた歴史ある温泉場ですので、土湯系といわれるこけしでも有名です。
東日本大震災の時に建物にも被害が出た旅館もあり、それ以来風評被害でお客さんの数も少なくなって、廃業に追い込まれた旅館もあるということです。町としてこれからのことを真剣に考えざるを得なかったのだと思います。
そこで地域が一岩となり「元気アップつちゆ」という組織を設立していくことになりました。良質でしかも豊かな湯量を誇る温泉を使かった「バイナリー発電」と東鵜川(荒川の支流)の豊富な水を利用した「小水力発電」の二つを基本に据えることにしたそうです。
まず、そのバイナリー発電を見学するために車と徒歩で荒川の上流を目指して山道を進んで行きます。
対岸に見えたのは、いくつもある源泉のうち2号源泉と呼ばれるものです。
さらに登って行くと16号源泉「バイナリー発電」がありました。まわりを囲む階段を上り、上から全体が眺められるようになっています。この設備は、イスラエルの会社のものとききました。ここの温泉は、温度が130度以上あり、混じりけがなくて日本の温泉の中でも10本の指に入るくらいの高品質な温泉であること、使った後も旅館へ温度も質も問題なく送ることができる発電装置であることなどいろんな条件が整ってやっとこぎつけられたということだけはわかりました。
詳しい発電の仕組みは案内板をご覧ください。
上流方向を見たところです。小さな滝が落ちています。この川は、日本の清流の中で水質2年連続で1位だそうですから、それも温泉に寄与しているのだろうと思いました。
日陰なのも手伝って美しく撮れていませんが、今回は紅葉のことは頭になかったので、赤や黄色やオレンジに染まる木々の紅葉を見ることができたのは、望外な喜びでした。
下って行く途中に温泉熱を使って海老の養殖という興味深いものを見せてもらいました。
「オニテナガエビ」別名アジアンブルーロブスターといいます。長い手が濃いブルーなのがお判りでしょうか。このエビは、熱帯性のものなので、1年中水温を25度くらいにしておくことが条件だそうで、温泉熱をうまく調整すれば、電気を頼むことなくクリアーできるというのです。大体6か月くらいで親となり、15センチ以上に成長するようです。
これを使って町の方で、45分で3匹1000円でという観光エビ釣りをしています。 釣り上げたエビは、店の奥の電気コンロで焼いて食べられます。街へ戻って覗いたら、たくさんの子どもたちが挑戦していました。
これもこの会社の事業の一つです。
もう一つの小水力発電です。東鵜川へ移動してまた登って行きます。ここには昔この地域で水力発電をやっていた歴史があったと聞きました。
この写真は、取水口のある3号堰堤ではなく下の方にあった堰堤ですが、この川には、治水・砂防事業として24もの堰堤があるそうです。今回の発電は、その中の3号堰堤の落差を利用してやることになったそうです。取水口まで行く予定でしたが、時間が押していて残念ながらそこまで行くことが叶わず、直接発電をしているところへ行きました。
上の写真が発電機です。
この川には、イワナのような生物も生息しています。冬の間川の水量が少なくなるため、生息するのに必要な15cmの深さを確保するために取水口のところにある沈砂池水槽から水を流す工夫もされているとのこと。土砂崩れの心配がないこと、鳥獣保護区を含んでいないなど、再生可能エネルギーとして生物多様性にも配慮されているところはさすがだなと思いました。
ここへ来て小さな水力発電だからできることが今要求されているのではないかと思いました。
ここが排水口です。右の管から水が排水されています。
北海道の今回のブラックアウトの時も北の方で小水力発電をしていた町は、停電から免れたとニュースで聞いた記憶があります。
「元気アップつちゆ」では、発電のようすを実際に見て学べるような施設にして行くために整備して、観光の一つとしていこうと取り組んでいるようです。
街の電気を確保し、雇用を生み、我々のように宿泊してくれるお客さんを増やすきっかけにもなるという、経済の循環を創出するために頑張っていることが伝わってきます。
私たちを案内してくださった方は、朝早くからの温泉のようすを見回る仕事、エビの養殖場の見回りやエサやりもやっているのだと言っていましたから、日々大変なことだと思いましたが、とても生き生きと仕事をされているなと思いました。
利益を街に還元することも忘れていません。高校生の通学定期代、車を運転免許を持っていない70才から74才の方へのバスの定期代、それに小学生の給食費と教材費を全額負担をやっているとのことです。
自分たちの街が元気で住みやすい街になるようにという地元への熱い思いを感じつつ、午後は飯館村へ移動しました。
続く