宮沢賢治のふるさと 花巻市 その2

 花巻では、大沢温泉に宿を取りました。

 大沢温泉は、宮沢賢治がよく泊まったことがあると言われ、写真も残っています。

 前回は、宿が空いていなくてもう少し奥にある鉛温泉の藤三旅館の湯治部に泊りまし

た。どちらの宿も今はごちそうが出るデラックスな部屋を用意した旅館を持っています

が、体をゆっくり休めるために長い期間湯治ができるように安く泊まれる部屋を用意し

ているのです。

 湯治部の玄関

 玄関のところは2階建てになっていますが、私が泊った部屋は3階建ての2階部分で

した。築200年の木造建築です。窓側に廊下が続いていて、部屋は障子戸で開け閉め

します。

 部屋へ入ったところです。廊下を廻っていくと広い調理室があるのですが、ここは部

屋でも簡単な煮炊きができるようになっていました。部屋を案内してくれた方が、「昔

はこの部屋でも5人くらい泊っていたのですよ。」と言われたので、私は、ずいぶん贅

沢をしているのだと思いました。部屋には冷蔵庫とテレビが備え付けられて、座布団と

寝具、それにお茶セットがありました。まだまだ花巻も暑かった時期でしたので、扇風

機も使えるよう用意がしてありました。布団込の値段で一人素泊まりで3860円、そ

れに浴衣と扇風機を付けてもらったので、220円と330円を上乗せして、さらに入

湯税が70円プラスされて合計4480円。

 

 食事は、材料を持ってきて自炊できますが、私にはそんな元気もなくて中にある食堂

で食べました。

 予約をしておけば、「やはぎ定食」という刺身と天ぷら、茶わん蒸しなどが付いたも

のが食べられたのですが、していなかったので大沢温泉の周りで収穫した蕎麦の「十割

り蕎麦」の夕食となりました。朝食も予約しておけば食べられるのですが、近頃朝抜き

を習慣にしているので、あえて朝食は無しにしました。

 

 温泉は、豊平川に沿って4つあります。混浴になっている露天風呂には入りませんで

したが、2種類の温泉に入りました。もう一泊位できたらいいなと思いましたが、窓が

あっても廊下との間が障子戸だけですので、開けっ放しというわけにもいきません。

 うちでもエアコンをつけることはめったにない生活をしていますが、窓は、風が通る

ように開けているのでこんなに暑い夜を過ごしたのは久々でした。よく眠れなかったの

で、この暑い時期は何泊もするのは無理だと思いました。宮沢賢治が生きていたころ

は、もっと夏も過ごしやすかったのだろうと思います。

 チェックアウトする前に、ようやく改修された茅葺の菊水舘で「鈴木敏夫ジブリ

展」を開催していたので、見てきました。特にジブリに思い入れがあるわけではありま

せんが会場をどう使っているのか興味がありました。

 中身は、鈴木敏夫さんが愛した風景写真が主な内容で、タイのカンヤダという女性の

カメラウーマンが写した風景写真が多く展示されていました。書いてある文字が鈴木さ

んの毛筆だということに驚きました。プロデューサーとしての能力のほかにもいろんな

ことができる人なのだなと感心しました。

 

 ジブリというと子どもにも人気があるので、おまけという感もありますが。いくつか

周りのものに同化した人形も展示してありました。

マックロクロスケ

庭の池のそばにいたトトロ。

 

 鈴木さんは、この大沢温泉が気に入ってプライベートでよく来ていたという話で

このコラボ企画ができたのだそうです。

 

 ここから新花巻までバスで送ってくれるので、そこから最後に前回行けなかった「童

話村」へ歩いて行きました。歩いてやはり20分くらいかかります。

 真ん中の草地に太陽の光を反射するオブジェがあります。周りの森にも野草園があっ

たり自然をうまく使った賢治の世界が広がっていましたが、一番奥にある「賢治の学

校」と向かって左側にある「賢治の教室」がメインの展示になっています。 

 夕暮れからライトアップされるので、このオブジェが暗闇に浮かび上がるようになっ

ています。

 出口の近くで見つけたのが、この木です。たぶん「やまなし」だろうと、周りに落ち

ていた茶色い実を拾って匂いを嗅いでみたら、なしの甘い香りが鼻をくすぐりました。

 宮沢賢治の「やまなし」がこの旅のフィナーレを飾ってくれたようで満ち足りた気持

ちで新花巻への道を辿りました。