宮沢賢治のふるさと花巻市(旅の続き)

 秋田の話もまだあるのだけれど、今年も終わってしまうので今回は花巻市です。宮沢賢治のお話が好きなので、賢治がどんなところで生まれてどんなふうに暮らしてきたか・・・・興味があるのです。

 といっても、今回は1泊するだけなので、下見だと思ってざっと回っただけ。角館から盛岡まで出てここからは新幹線でなく在来線の東北本線花巻駅へ下りたちました。古い町並みは在来線の花巻の方にあるからです。

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 この日は、日曜日でしたが、駅前は閑散としています。ロータリーにお店はあるのですが、人がいません。

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 ロータリーの真ん中に「風の鳴る林」というステンレス製の棒が21本立っています。風が吹くとポールの上にある羽がくるくる回るようになっていて、決まった時間になると音楽も流れる仕組みになっているようですが、運悪く聞けませんでした。

 インフォメーションで、花巻温泉に行くバスの時間と停留所を聞き、地図を頂いて行動を開始しました。もう昼の一時を回っていたので、急いで「やぶ屋」という蕎麦屋さんを探しました。駅から10分くらい歩いた商店街にありました。街には人影がないのにこのお店にはたくさんのお客さんがいたので驚きました。

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 宮沢賢治は、玄米とみそ汁と漬物というような質素な食生活だったのかとずっと思っていましたが、若い頃は、好奇心が強い人で、学校の農場でも新しい野菜を手掛け、東京へ出ると新しい洋食なども食べ、その辺りは私とそっくりな人のようです。

 学校の先生になってからは給料が入ると学生やら同僚を誘い、「ブッシュ」(英語でやぶ)へ行こうと「やぶ屋」さんへよく通ったそうです。賢治が頼んだのは、もっぱら天ぷらそばとサイダー。

 「やぶ屋さん」で賢治が食べたという天ぷらそばとサイダーをセットにした「賢治セット」というメニューがあるので、それを頼みました。

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 その頃は、サイダーなんて言うのはとってもハイカラな飲み物だったに違いありません。次に来たのは、来る途中見つけておいた「照井菓子店」。だんごや大福を売る和菓子屋さんです。そこでだんごを買って帰りました。このだんごやさんのご主人は、「今日中に食べないんだったら売らないよ。」というらしい。おもしろいおじさんだなと思って行ってみたのです。

 

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 このだんごやさんが建っているところは、銀河鉄道の夜に出てくるジョバンニがアルバイトをしていたという活版処のモデルになった跡地だということで、このお店も訪れる人が多いのだと思います。

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 最後に賢治の弟さんの孫がやっている「林風舎」へ。

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 中は、賢治ゆかりのお土産物を売っていて、二階はちょっとしたコンサートもできるカフェになっているとのこと。私は、バスの時間が気になっていたので、1階で賢治が描いた絵のポストカードを買っただけで二階へは行きませんでした。

 三時半に花巻温泉に行くバスがロータリーの所から出るというので、停留所に並びました。乗る時に温泉の名前を言い、座ります。花巻温泉郷の手前の温泉から順番にお客さんを下していきます。賢治がよく行ったという「大沢温泉」の湯治部へ泊りたかったのですが、この日はもういっぱいでしたので、もう少し奥の方に位置する「鉛温泉」の「藤三旅館」の湯治部に泊まりました。デラックスな旅館と湯治部と普通の旅館と三つの部分が廊下で横に繋がっていました。

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 湯治部玄関脇の帳場です。着いた時には手前にあるソファに座ってここの旅館の使い方などをレクチャーしてもらい、それから部屋に案内されます。神棚もあり、いろんなものが雑然と置いてあって、いきなりはるか昔にタイムスリップしたような気になりました。

 この旅館には、有名な立湯(たちゆ)というのがあって、廊下からかなり階段を下りて深い穴のようなところに入ります。洗い場とかはなく、ただ湯穴に浸かるだけです。深いので立っているしかないので、そんなに長くはいられません。普段は、混浴らしいですが、今は時間を限って女性専用になります。

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 湯治部というのは、農閑期の骨休めにうちから米や野菜などを持ち込んで、自分たちで煮炊きしながら何日も逗留するところなのです。私は、前から泊まりたいと思っていましたが、今回初めて泊まることができました。

 秋田から比べるとまだこちらは紅葉も始まったばかりで、部屋の外の赤くなり始めたもみじが見えました。

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 湯治部に興味津津で探検して歩きました。あるお部屋に台車に乗せた冷蔵庫を運び込んでいるスタッフがいたので、廊下の端っこへ行ってみると白い布を被った小さな冷蔵庫とそれに石油ストーブも置いてありました。まだそれほど寒くはないものの朝晩は冷えるので、私の部屋にはストーブが置いてありました。私の場合は、一晩ですし食事も二食ついて浴衣やアメニティも全部含んだ料金で申し込んでいるので、ストーブも付いていたのだと思いました。

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 廊下の反対側には、台所がありました。ガスコンロが使えます。木の箱のところがガスの装置が入っているようで、箱の上部の投入口にお金を入れると10円で7分ガスが使える仕組みになっているのだとか。こういうのを見るとやたらやってみたくなりますが、今回はがまんがまん。

 台所には、鍋ややかんなどの調理器具もそろっているし、食器棚には食器もそろっています。食材さえ持ってくれば調理して食べられるということがわかりました。隣の洗い場には洗濯機もあって二百円投入すると動くようになっていました。

 

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 これが夕食です。目がいやしいので出たものは残さず食べてしまうのでおかずの量もこれくらいがいいと思いました。どれも美味しくできていますが一番のご馳走は、赤いお椀に入ったご飯でした。ぴかぴかしていてとても美味しく炊けていたのです。

 うなぎの寝床のように川に沿って建物が廊下で横につながっているので、4つ泉質の違う温泉のどこへも入ることができますし、私のように全部含んだ料金を払えば部屋が古いのは別として普通の旅館のように過ごせます。

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 もう一つびっくりしたのが、灰皿と一緒にマッチが置いてあったことです。(ぼけた写真ですみません)今ではもうマッチも死語になりつつあるのではないかと思いますが、この旅館ではまだ生きているのです。 この旅館の名前は「藤三(ふじさん)旅館」といいます。

(続く)