「Tara Books」の本

 ずいぶん前の話になります。

 11月の末に学生時代の友人から、同じくクラスメートだった方の娘さんがインドの出版社「Tara Books」から本(日本版が11月1日)を出版したのでその出版記念の展示に行かないかとのお誘いがありました。

 2001年だったか私もインドのチェンナイに息子が出張していたのを利用して結構長く滞在していたことがあったのを覚えていてくれたので関心があるのではないかと思ってくれたようです。

 出版された本は、「南インド・キッチンの旅」といいます。

 旅人にとって一番見えなくて遠いのはキッチンではないかという発想から、3か月間キッチンを取材し、見取り図から料理のレシピまでを丁寧にまとめた本です。

 著者の斎藤名穂さんは、建築家でありデザイナーでもある方で、板橋区の美術館で行われた「Tara Books」の展覧会の展示デザインなども手掛けられたそうです。

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 その出版記念展示があったのは、「Books and Modern」、六本木から乃木坂に下ったところにあります。マンションの2階部分で、知る人ぞ知るというユニークな本を集めている本屋さんのようでした。

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 ディスプレイされていたのは カレーリーフの木、調理器具、食器、カレーに使われているスパイス類です。インドの映画「スタンリーのお弁当箱」「めぐり逢わせのお弁当」にも出てきたようにインドで使われている食器は、ステンレスが多いです。理由はよくわかりませんが、歴史的なことが関係しているのではないかと思います。

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 あとは、壁に描かれたおそらくキッチンのトビラの絵とチャイの写真だけがディスプレイであとは、キッチンと料理するご婦人のようすがプロジェクターで映し出されていました。展示がこれだけというのはなんだか物足りない気がしました。あとは、本を購入して見てほしいということなのでしょう。

 どうしようかと迷っていたら、その本のそばに「Tara Books」から出版されている絵本があるのを見つけてしまいました。

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 その中の1冊がこの「世界のはじまり」という本です。バッジュ・シャームは中央インドのゴンド地方に住む代表的なアーティストだそうです。もともとゴンドの人たちは代々口承で話をつたえてきた森の民。家の壁などにその世界観を絵で表わしていたものをギーダー・ヴォルフが絵本にまとめることを提案してできたのがこの本。

 どの民族にもある創生の話です。が、日本の神話のように神様は出てきません。表紙は水の泡の中に生まれる前の魚、やがて創生主が大気を送り込み・・・と話が続いていきます。短い言葉と圧倒的な絵柄で想像性をくすぐります。

 

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 短時間でひきつけられた理由の一つは、紙の質感。凸凹があってほっと安らぎます。 材料は、木綿や麻の手すきの紙です。

 次に印刷は、シルクスクリーン、一枚一枚が手刷りです。左から裏表紙、ちらっと本文。

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 そして糸を使って綴じてあるのがお分かりいただけるでしょうか。

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 版画にあるように1さつ1さつにナンバーが付いている。

 1179冊目の本を私は購入しました。この工程を考えると3600円(+税)もそんなに高いと思いません。

 この本をはじめ「Tara Books」の本は、イタリアのボローニャで賞を取ってからは日本でも大手の出版社が名乗りを上げてきたが、一番初めから注目していたタムラ堂を優先的に考えてくれたというのもいい話だと思ったしだい。

 2冊は買えないので、斎藤さんのキッチンの本は、友人に貸してもらうことにしました。こんな本がまだこの世の中に出ていることが奇跡的なことのように思うのはわたしだけでしょうか。

 

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帰りにミッドタウンでお茶を飲んで帰ったのですが、こんなツリーがありました。サンタクロースのオンパレードです。左上にそりに乗ってお出かけ中のサンタもいました。

*近頃目もめっきり悪くなり、後から読み返すと誤字が多いのにびっくりします。大変申し訳ないのですが、お許しいただけるとありがたいです。)