南三陸のへ旅2(ラムサール湿地登録地・志津川湾ーコクガンを訪ねて)

 26日朝

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 朝 宿の障子を開けて外を見ると、雪景色でした。高校生の頃仙台に2年ばかり住んだことがあるので、東北でも太平洋側は雪がほとんど降らないと思っていました。ところがこんな海の近くで積もるなんてちょっと驚きました。積もっているといっても5cmほどでしたが、宿の方は「ふだんだと海からの横風でほとんど積もらないのに。」と言って玄関前の雪かきをしていました。

 

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 坂道を上って下りたところにこの「海のビジターセンター」がありました。グレーのモダンな感じの建物です。これは正面でなくテラスのある海側から写したものです。雪が止んだ午後に写したものなので雪もだいぶ解けています。「海のビジターセンター」と名付けたのは、もう一つ石巻の北上エリアに「川のビジターセンター」というのがあるからだと思います。館長は兼任です。

 

 思ったより早めについたので、申し込みの電話やメールの時からお世話になった女性職員に「今日コクガンは来ていますか?」と思わず聞いてしまいました。すると、朝2羽やってきているのを見つけたので大丈夫です。」との返事。ほっとしました。鳥というのは気ままですからいつも同じ場所にやってくるものではないので、果たしてこの日この時間に来ているのか、主催者でもないのに秘かに心配していました。

 

 9時半、玄関ロビーで今日の主催者宮城県の担当の方、それに南三陸ネイチャーセンター友の会の会長さん、伊豆沼・内沼環境保全財団 総括研究員の方からご挨拶がありました。参加者は、ざっと40人くらい。ほとんどは県内の方とお見受けしました。

 

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 さっそく2階のテラスに上りました。朝方は雪もちらちら降って曇り空だったのに、この時間になって雲間から陽が射し海が青く見え始めました。最高の舞台設定にちょっと感動してしまいました。志津川の街の方を眺めた風景です。湾のあちこちに養殖いかだが点在しています。

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 次にビジターセンターの外の防潮堤に上り観察をしました。私のコンデジですから、一生懸命望遠仕様にしてもこれが限界。でも、2羽のコクガンを写すことができました。

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 もう少し大きく写せたのがこれです。首から背中にかけて黒く、首には首輪のような白い模様が入っているのが特徴です。マガンに比べると黒と白のコントラストがはっきりしていてちょっとおしゃれな感じがします。

 ここで、県の職員から面白い話を聞きました。コクガンは潜って海草を取ることができないので、横を泳ぐオオバン(やっぱり羽の色は真っ黒)が潜ってくわえてきた海草をさっと横取りするのだそうです。なんだかオオバンが気の毒なような気がしますが、コクガンにとってはそれも生きる知恵の一つなんでしょう。でも、オオバンの唖然とした表情を思い浮かべちょっと笑ってしまいました。

 

 次は、レクチャールームでの講演です。お一人目の方は、この地域で志津川湾の恵みをこれからもずっと受け取るためにというテーマをもって活動していらっしゃる方です。

 志津川湾は、寒流の親潮、暖流の黒潮(一部対馬海流津軽海峡を通り抜けてやってくる)がちょうどこの辺りを潤す環境にあり、海の中に寒流系の昆布、暖流系のアラメ、浅瀬の海に生えるアマモ類が森を形成しているように生えています。海草や海藻をゆりかごにしていろんな魚たちが集まります。まさに生物多様性が担保された海なのです。

 コクガンは、この湾に生えているアマモなどの海草やアオサなどの海藻を餌としているため冬シベリア方面から渡ってくるのです。内陸には来ないので、海の草や藻じゃないとダメなのでしょう。

 このほかにこの地域では、イヌワシの保存にも力を入れているのだそうです。かつては町鳥・イヌワシと呼ばれるほど確認されていた鳥ですが、今は山の手入れがなされなくなって成育に適した環境にないためすごく心配な現状だそうです。

 次の講演は、このコクガンの渡りのルートがまだわからないため、それを明らかにして保存につなげようとしている研究の話です。

 冬期北海道の野付半島辺りにやってくるコクガンは、そこから三陸沿岸へもやってきているのですが、春の渡りの個体数と秋の渡りの個体数に大きな違いがあること、それに野付からシベリア方面の繁殖地にどのルートを通ってどこで繁殖しているのかもまだ解明されていない鳥で、ドキドキワクワクする研究に違いないと思いました。

 今は、捕まえて衛星通信機をつけて個体の飛行経路を確かめるという便利な方法が使われます。伊豆沼のカモやハクチョウたちは餌付けされているので、割合エサで集めて捕まえることが容易ですが、コクガンは用心深いしエサではおびき寄せることができません。そこで、よくコクガンが現れるところにインターバルカメラを設置して観察を続けたそうです。その結果、毎朝早く海岸に流れ込む小さな川の河口に決まって現れることがわかったそうです。コクガンも、真水を飲みにやってくるのです。そこで集まった9羽のコクガンに網をかけ捕獲し、そのうちの5羽に通信機をつけて放したそうです。

 2015年6月、9羽のうちの1羽がシベリアのレナ川近くで撃たれて回収された情報が届き、おそらく北海道や国後島で越冬したコクガンは、シベリアのレナ川河口付近のデルタへ渡るのが1つのルートであることがわかったそうです。

 

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 お昼は、一番近いコンビニまで8キロ歩かなくてはならないというので、民宿の方にお願いして届けてもらったお弁当を食べました。そろそろ帰ろうかと外へ出たら、たくさんの群れが泳いでいるのを見つけました。コクガンかと期待しましたが、残念ながら遠目にも頭が茶色いのがわかりました。ヒドリガモです。(ごめんなさいヒドリガモ

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 浜に下りていっても、ガンのように素早く逃げていくことはなく、結構近づいても驚かないので、びっくりするほど大きく撮れました。

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 天然羽毛をいっぱい膨らませ、砂浜に打ち上げられている茶色い藻をつまんでいるところでした。オスばかりに見えますが、1羽だけ地味なメスが混じっていました。

 続きます。