青森の旅3

 遙々青森までやってきたので、もう一か所どこかへ行こうと思って今回は、前から行ってみたかった青荷温泉へ行くことにしました。

 近頃やたらに温泉に入りたくなってきたのです。昔は旅へ出たら、歩き回ることしか頭になかったのに・・・・老体が要求しているのだろうと思います。

 

 地図では酸ヶ湯から車で下ってくれば、おそらく2時間もあれば辿り着けるところだと思いましたが、電車とバスを乗り継いでぐるっと回っていくので、時間がかかります。

 酸ヶ湯温泉の宿のバスに乗り青森駅まで出ましたが、弘前方面の出発時刻まではだいぶあったので、駅の周辺を歩いてみました。

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 右手にワラッセというねぶたの展示館がありましたが、ゆっくり見ている時間もなさそうなので、左手にあるAファクトリーという白い建物に入りました。

 そのファクトリーは青森のリンゴを使って作るお酒、アップルシードルを醸造するところでした。今風の佇まいで中には工房のほかカフェや土産物売り場があり、おしゃれなものも売っているので若い人に受けそうな場所だなと思いました。

 国内を旅していると駅前の通りのお店のシャッターが閉まっていたㇼ、古びていてお客さんもまばらなんていうところをたくさん見てきているので、青森にもこんなに都会的な建物があるんだなとちょっと驚いてしまいました。

 道の反対側に植えてあった姫リンゴの実もナナカマドに負けないくらい赤く色づいていました。

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 時間になったので東北線のホームへ行くとリンゴ型の箱が柱についています。おそらく発車ベルを鳴らしたりするものが収められているのだと思いますが、地域の活性化を図ろうとJRも工夫をしているのだと思いました。

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 見苦しい写真ですみません。

 弘前までの車窓から見た岩木山です。富士山のようにすそ野を長く引くスケールの大きな山だと思いました。ちょうど稲刈りの時期に重なっていたようで、黄金色の稲の穂先が重く垂れていました。電車に乗れば、弘前までは45分です。 

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 弘前で弘南電車に乗り換えです。この電車で終点の黒石まで行きます。

 昼頃だったのに高校生が乗っていて意外に思いましたが、途中に高校などいくつか学校があったのでこの電車も何とかやっていけるのかと思いました。

 約36分で到着です。冬になると雪も降るので、弘南電車にも「ラッセルくん」というお相撲さんキャラのラッセル車が出動するそうです。先ほどホームページを見てびっくりしたところです。

 黒石には古くからのお店が集まっている「こみせ通り」というのがあるのですが、駅からのバスも間遠です。インフォメーションで地図をもらい重い荷物を担いできょろきょろしながら30分以上歩いて行きました。

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 こみせ通りです。こみせというのは、新潟など雪国の「がんぎ」と同じ屋根付きの歩道のことです。屋根付きの歩道は、かつては雨の日も雪の日も濡れないで買い物ができた優れものだったはずですが、200mくらいで切れてしまうので、ずいぶんあっけない通りだなとちょっとがっかりでした。

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 この通りに2軒の酒造がありました。そのうちの1軒。中村亀吉酒造さんです。今まで見た中で一番大きな杉玉が吊るされていました。あまりに巨大でびっくりです。観光客もまばらで閑散としたこみせ通りでした。

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 黒石で有名なのが、いつぞやB級グルメでグランプリをとったことがあるという「黒石つけ焼きそば」。お昼にはそれを食べてみようと思ってきたのですが、その筋で有名なお店はその日お休みだということで、通りにあった「蔵」という名の喫茶店に入って作ってもらいました。

 それは、焼きそばに汁をかけてあるという感じのものです。蔵の女主人に聞くと、スープを何で取るか、具材に何を入れるかで店の違いが出てくるのだそうです。麺も焼きそばにしては太くて、この地域独特なんだと聞きました。

 

 この旅であまり人と話をしていなかったので、ほかに誰もお客さんはいないし、30分くらい話し込んでしまいました。

 私よりいくつか年上の女主人は、若い人がこの土地から出ていくことで地域に活気がなくなってきたんだとしみじみ話されていました。

 

 店の壁にかかっていた長い柱時計がボーンボーンと低い音で時を告げました。ふと「大きなのっぽの古時計」の歌を思い出しながら店を後にしました。

 

(つづく)