「きこえなかったあの日」

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 先週の日曜日に、シネマリンで「きこえなかったあの日」を観てきた。

 8日から上映していたのだが、14日にはこの映画の監督をされた「今村彩子」さん

が映画への思いを語ってくださるトークがあるというので日曜日に行ったのだが、会場

はほぼ埋まっていた。

 緊急事態宣言が出ている最中なので、映画館も座席が1つおきになっているため、

通常の半分、50人ほどの定員だが、朝10時からの映画にしてはその期待度が大きか

ったのだと思われる。

 

 今村監督さんは、ろう者である。

 監督さんは、「耳の聞こえない人たちが置かれている状況を知ってほしい」という思

いから東日本大震災直後に宮城県を訪れたそうだ。ろう者の被害者の数は聞こえている

人の2倍だそうである。

 

 映画の中に出てきた男性は、一人暮らし。道を歩いていた時にちょうど通りかかった

人に車に乗せてもらって津波に飲み込まれずに避難所まで連れて行ってもらえたそうだ。

 何も聞えなくて何が起こっているのかわからなかったと言っていた。

 避難所でもマイクで情報が流されていてもわからず、人が並び始めたのでそれを見て

付いて行くことで初めておにぎりがもらえることがわかったりするのだそうだ。

 

 脚が不自由な人、目が見えない人・・・・外見で配慮できることが可能な人もいる

が、ろう者は一見助けを必要としている人とは思えないことが多いと思う。

 ちょうど、この男性が住んでいる町の役所には毎週水曜日に耳が聞こえない人のため

に手話通訳者がいたため、日常の困りごとを聞いてもらえることができたが、

こういう人はすごく幸運だったのかもしれないなと映画を観ながら思ったものだ。

 避難所での表示の工夫、日常的な交流など課題はたくさんある。

 

 東北大震災を契機に2013年に鳥取県で全国初の手話言語条例が成立し、現在29

道府県にて制定されているという。この映画を撮った宮城県ではあと一歩で条例が制定

されると聞いた。

 

 東北の大震災以外の熊本地震西日本豪雨の際も現地に入り耳が聞こえない人が置か

れている状況を取材しカメラに収めている。

 耳が聞こえない人は、守られる立場の人だと思い込んでいたが、西日本豪雨の被災地

では、耳の聞こえない人のためのボランティアセンターを立ち上げ、たくさんの体が元

気な方々が通ってきていることも知って、それぞれができるところで助け合うことの素

晴らしさをこの映画で教えてもらった。

 

 昨日も宮城県沖を震源とした大きな地震があったが、地震の揺れは感知できるが津波

危険情報というのはきっとわからなかったはずである。私もテレビがないので、パソコ

ンでニュースの画面で見ていたが、果たして耳が聞こえない方々が情報を知りえたか心

配になった。

 手話通訳の人は気象庁の会見のようなセットされたものには付いているが、地域でサ

イレンが鳴らされ防災無線で呼びかけられた情報には何のことかきっとわからなかった

はずである。

 

 今まで何本か震災関連のドキュメンタリーを観てきたが、今まで気が付けなかった新

しい視点を突きつけられた気がした。

 監督さんは昨日もどこかへ飛んで行っているのではないだろうか。