再び北海道浜中へ4 きりたっぷ岬編

 前回のブログの続きです。 

霧多布灯台

 灯台のちょっと手前から海霧が流れてきた。霧が出てきたときに、白一色では存在

が消えてしまうので、この辺りの灯台には赤い色が使われていることが多い。

 去年は、道に迷って時間が計れなかったので、この灯台のところまできて折り返した

が、今回は自分の足でどれくらいかかるか分かったので、この先まで進む。

きりたっぷ岬

 名前の通り、霧がたっぷりの岬である。本当の名前は、「湯沸岬(とうふつ岬)」

アイヌの言葉で、ト・プッ 沼や海の入口を意味する)だが、近頃では町の名前が霧

多布町なので、きりたっぷ岬と呼ばれるようになったようだ。

 まだ突端まで続く道があるので、期待しながら前へと進む。

エゾカンゾウゼンテイカ)が花盛り

 右も左も断崖の斜面は、オレンジ色のエゾカンゾウが花開き、海の青、草原の緑を従

えて岬を輝かせてくれている。

 ニッコウキスゲは、標高の高いところにしか存在しない植物だと思っていたが、数年

前に南三陸町石巻市の境にある神割埼(かみわりざき)に行ったときに、ニッコウキ

スゲが咲いていたので条件さえ合えば海でも咲くんだと驚いたことがあった。

 海からの冷たい風のことを「山背」と呼ぶが、東北や北海道の太平洋側で「山背」が

吹くところでは昔からコメを作るのに苦労したのもうなづける。

岬の突端から

 これ以上は、柵ができていて前へ行くことはできない。もう少し先にも小島が見える

のだが、押し寄せる霧でこれ以上は見えない。何ともロマンを感じさせる岬だ。

 途中の道で大きな望遠レンズのカメラを持っていた人が通ったので、

「ラッコはいましたか?」 

と、聞いたところ、

「いましたよ。」

と、返ってきたので期待していたのだが、だいぶ離れた霧でかすむ海の真ん中あたりだ

というので、肉眼でも双眼鏡でも見ることは叶わなかった。

 ここを訪ねる目的の一つがラッコを見ることなので、今年はとても残念で仕方ない。

 ( 昨年は、灯台よりも手前の左側の断崖の下あたりにいたので、肉眼でもお母さんと子どもラッコが見えたのだ。)

灯台は霧の中

 だんだん海霧は深くなり、とうとう灯台も姿が消えてしまった。きりたっぷ岬に別れ

を告げるにはにはぴったりかもしれない。

 

 帰る道で写した植物たちを紹介。

エゾカンゾウ

 (何回も出てくるので、新鮮味はないが)今年はエゾカンゾウの当たり年のようで    

数が多い。本当に生まれたての花は美しい。一日花だけれどもたくさんのつぼみがある

のでしばらくは楽しめる。

アスチルベ?トリアシショウマ?

 名前がわからない。アゼチの岬ではあまり見かけなかったがこの辺りではずいぶんた

くさん見ることができた。この花も今が盛りだ。

 

オドリコソウ

 霧多布で初めて撮れた。都会でも見かけるヒメオドリコソウは明治時代に帰化した外

来種でどこにでも生える草として扱われるが、オドリコソウは若い葉は食用になり、根

や茎は薬用になる有用なもので、北海道では結構ポピュラーな植物のようだ。

ノビタキ

 飛んでいる野鳥は撮れないが、停まっている野鳥なら私にも撮れる。きっ

と私を待ってくれていたのだろう。

 ノビタキのオスだ。写真を撮ってからよく見ると口に虫を銜えていたようだ。

ノビタキのメスかなと思ったが

 まもなくもう一羽茶色の鳥が停まった。ノビタキのオスのそばに寄っていくし、ノビ

タキのオスも意地悪をしないので、たぶんノビタキのメスなのかなと思っていたが、宿

でオオジシギのついでにこの写真も見せて聞いたところノビタキの幼鳥だとのこと。

 教えてもらったからだと思うが、写真をゆっくりと見るとくちばしのところが黄色い

し何となく幼い感じが伝わってくる。

ドサンコの馬

 アゼチの岬に行く途中には、乳牛が放牧されていたが、霧多布の方には次ごう4頭の

馬が放牧されていた。

 どこかお腹がでっぷりしていて短足、力がありそうな馬だ。名前がわからないので、

ドサンコとしておく。

 馬も日がな一日この草原の草を食む。けれども馬は、毒がありそうな草は食べない。

よく草地にヒオウギアヤメが残っているのは、アヤメには猛毒があるかららしい。

 

 (つづく)

再び北海道浜中へ3 オオジシギ編

 3日目は、お天気が良さそうなので、霧多布岬へ行くことにして

いつものように新川十字路まで送ってもらい、バスで「ゆうゆ」へ向かう。

新川十字路

 バス停から霧多布岬方面へ行くには水色の鉄橋を渡り丘へ上って行く。

 丘の上の2つ建物のうち、右側は浜中町役場、左側のやや尖った屋根が真ん中にある

のが「ゆうゆ」だ。

 

 バスを待っているときに次ごう2度薄茶の動物が車道を横切るのを見た。一度目は猫

かなと思ったが、2度目は、きつね色でしっぽが結構りっぱなのでキタキツネのような

気がした。

 浜中町は、タンチョウヅルもエゾシカもキタキツネも湿原に出入りする。自然と人間

の関係がかなり近いところだと改めて思った。

丘の上からの眺め

 ゆうゆの建物の裏から下を見た。新川十字路から渡ってきた水色の鉄橋も見えるし、

右の端には泊まった民宿も見える。町の北側は小高い森になっていてクマも出没するら

しい。手前の低地のほとんどは湿原で、住宅はそれを埋め立てて造られたものだろう。

 

 久しぶりの青空と白い雲。晴れただけで気持ちが爽快だ。去年は岬へ行くのに道を間

違えて大回りをしたが、今年は、大丈夫。岬への道をひたすらまっすぐに歩く。

○○シギ

 空気は冷たいが陽の光を浴びて歩くと汗ばんでくる。

 さえぎるもののない道の反対側の杭の上で鳥がさえずっているのに出逢った。

 大きさはちょうどハトよりちょっと小さめ。

 

 パッと見たところくちばしが長い。タシギの仲間だろうということまではわか

ったが、名前がわからない。

 それでもそこで立ち止まってしばらくその声に耳を傾ける。

 囀っているときは、「ジープ ジープ ジープ 」といった調子で鳴き、最後にグチ

ョピチュグチョグチョと複雑な鳴き声でさえずりを閉める。今まで聞いたことがないユ

ニークな鳴き方だ。何回か同じことを繰り返し、こちら側の草むらに飛び込むようにし

て消えた。

オオジシギ

 道東に毎年渡ってくるシギにオオジシギというのがいると書いてあるものを見たこと

があったので、そうかなと思ったがよくわからない。

 

 ところが、運よくその日の夕飯時に食堂の隣の席に座った方が野鳥の専門家だと伺

い、渡りに船とばかりにこの写真を見てもらい名前を教えてもらうことができた。

 「オオジシギです。」と 即答を得た。

 

 専門家なので名前のほかにもオオジシギのことをいろいろ教えてもらえた。

 

 この鳥は、名前から単純に推察して、王子様のシギという意味なのかと思ってしまっ

たのだが、ジシギの仲間の中では大きい方なので「オオジシギ」という名前がついたの

だとか。

 

 日本で見られるほかのシギは、もっと北のシベリア方面まで北上して繁殖するので、

日本はそのシギたちの中継地に過ぎないが、このオオジシギは唯一日本国内で繁殖す

る希少なシギだ。

 繁殖地ではディスプレイ(メスにアピールする)のために空高く舞い上がり、あたり

を旋回してから急に降下する。その時に尾羽を震わせて轟音を出すので別名カミナリシ

と呼ばれているということも面白いと思った。

 地味な鳥なのにかなり強烈なディスプレイなのでぜひその雷音を聞いてみたいと

興味津々である。

 

 北海道やサハリンで繁殖して、9月になるとオーストラリア東部やタスマニア島を目

指して飛んでいくといわれている。

 数が減っている絶滅危惧種になっているので、オーストラリアと日本の研究者の間

で鳥に発信機を装着して具体的にどういう経路を通って渡り、到着地はどこなのかなど

解明を進めているそうだ

 

 2016年の発信機を付けた調査では、太平洋上を途中休まずに7日間でまっすぐに

パプアニューギニア島まで飛行したという記録が取れているそうだ。その距離、約60

00キロを一気に飛ぶという信じられないパワーがあの小さな鳥のどこに秘められてい

るのか、とにかく驚いた。

 

 オオジシギに捕まってしまったので、この先の霧多布岬は次回にします。

  (つづく)

 。

 

 

再び北海道浜中へ2 アゼチの岬編

2日目、天気は曇り。

朝食を取りながら、宿主と今日の日程について相談。

やはり最初は、霧多布湿原センターへ行って「やちぼうず木道」を散策し、

去年は行かなかった「アゼチの岬」へ回ることにした。

 いつものように新川十字路まで送ってもらい、町内バスに乗る。

霧多布湿原センター入口

 バスを降りるとアキタブキの前に大きな看板があった。今、持続可能な社会を作

るためにとSDGsと盛んに叫ばれている。ここ浜中町は元々漁業が盛んな町なので、海の

資源を守るためにも背後の森や湿原を含めて町全体で自然環境を守ってい行こうという

機運が感じられる。

2階のカフェの窓から見た湿原とその先の海

 曇っているので、空も海も湿原もどよーんとしている。

 左側の半島の右端がこの後で行くことにしていた「アゼチの岬」。

 

 センター内を一回りして、下の「やちぼうず木道」を歩いてみた。

大きなヤチボウズ

 今年も大きなヤチボウズ(釧路湿原など道東の湿原で多く見られる)にご挨拶。

 去年とほぼ同じ季節なのに、今年は花の咲くのが早かったのか、お目当てのクロユ

リもとっくに終わり、見られたのは、フタマタイチゲとワスレナグサと終わ

りかけのクシロハナシノブのみでちょっと寂しかった。

フタマタイチゲ

 カフェでクラムチャウダーとパンのセットとデザートアイスを食べ、12時半のバス

で岬を目指した。

 「アゼチの岬」は、🚌の終点の「ゆうゆ」(浜中温浴施設)から、右の道を辿って約

30分歩く。

 

広大な草地に放牧された乳牛たち

 すぐに乳牛が見えだす。

 牛たちは日がな一日ここで草を食む。

 ここは、海からの潮風と海霧を受けたミネラル分の豊富な草地なので、牛乳の栄

養価もぐっと高いそうだ。

 昨年から宿主さんに聞かされていた「小松牛乳」さんの牧場だ。

 

 ここで出しているのは、ふつうの牛乳とコーヒー牛乳とフルーツ牛乳のみ。

 今は、手を拡げてバターやチーズ、クリームやヨーグルトなどいろんなものを

生産する多角的な牧場が多い中、家族経営ということもあるのだろうが、あくまで牛乳

のみ、そのシンプルさに惹かれる。

 

 「小松牛乳のコーヒーは、ちゃんと抽出したコーヒーだし、フルーツもリンゴジュー

スが入っているんだから。」

 と、宿主さんが自慢ぽく話していたのが耳に残っていたので、ぜひ試してみたいと思

っていたのだが、入口がわからず、時間もなくって帰ってから宿の冷蔵庫から出しても

らったもので試した。

 コーヒー牛乳だったが、甘すぎずおいしかった。

 このビン牛乳は、宿だと1本100円で分けてくれるが、湿原センターだと110

円、温浴施設だと150円。

 浜中町内のみの出荷なので、浜中でしか飲めない牛乳だ。

エゾフウロ

シコタンキンポウゲ

ヒオウギアヤメ

エゾノハナウド

 岬へたどる道の両側には、エゾフウロ、シコタンキンポウゲ、ヒオウギアヤメ、エゾ

ノハナウドが咲いていた。特に多かったのがヒオウギアヤメとエゾノハナウド。

 ハクサンフウロかエゾフウロか、まだよく見分けられないし、ミヤマキンポウゲかシ

コタンキンポウゲなのか、これもよくわからない。勉強しなくっちゃ!

岬への最後のアプローチ

 ようやく、岬が見えそうな所へやってきた。いよいよフィナーレへ向かう花道。ヒロ

インになった気持ちで前へと進む。どこからか音楽も聞こえてきそう。

アゼチの岬

 霧がかかっていなかったので、半島や島がよく見えて素晴らしい風景だった。

 夕日が沈むときは さぞ感動的だろう。

 

 7月のはじめ、右後ろ側の港から出港したコンブ漁の小型の船が、大きなエンジンを

うならせてすぐ下の海を通って岬の左側へ回り、最良の漁場を取るために競艇さながら

のレースを毎年繰り広げるのだ。

 去年から一度見てみたいものだと思いながら、今年は竿前(さおまえ)昆布(間引

きする昆布)漁は、中止だというのでがっかりだ。

 

 3月中旬、20数年ぶりに知床半島根室納沙布岬を超えて太平洋まで流氷が押し

寄せ、浜中へも接岸した。

 というわけで、養殖のものや昆布に被害が出たらしい。自然の脅威には人間はなすす

べがない。

 

 今年はコンブ漁はできるのかどうか私にはよくわからないが、流氷に

よって海は清掃され、運ばれてきた豊富なプランクトンによって、来年は昆布もほかの

漁もきっとうまくいくということだ。

エゾカンゾウ

 エゾカンゾウが咲き始め、岬は華やかに彩られる。

ミウとカモメ

 くちばしのところがよく見えていないので、カワウかウミウかわからないが、場所が

場所なので、ウミウということにしておく。岬の岩の一番突端で繁殖しているに違いな 

い。

この日の夕食の海鮮丼。
キングサーモン、トキシラズ、サクラマス、ミズダコ、オヒョウ、カレイ、ホッキ、クジラ

 地のものをたっぷりのせた海鮮丼でお腹はいっぱい。特に私が好きなのは、トキシラ

ズとサクラマス、脂がのっていてこってりしている。オヒョウは、すごく大きいので解

体するのがとても大変だそうだ。昔学校給食でオヒョウのフライを食べたことがあるが

オヒョウも刺身で食べられることを初めて知った。

 (つづく)

再び北海道浜中町へ (4泊5日の旅)

 

浜中駅(帰りの日の朝撮りました。)

 去年のちょうど同じ頃(6月28日~7月2日)北海道浜中町を旅しました。

 八幡平から帰って体が次の旅に耐えられそうかどうか 様子をみていましたが、

何とかなりそうだなと思えたので、今年も大人の休日クラブの期間限定の割安切符を使

って、同じ所へ行ってきました。 

 

 鉄路を使ってその日のうちに宿まで辿り着くのにちょうどギリギリの場所だという

こともありますが、やっぱりあるがままの自然を楽しめるところが気に入っています。

 

 私の旅ではおなじみ、東京駅発6時半の「はやぶさ1号」に乗り、「特急北斗」「特

急おおぞら」、釧路から1両の花咲線の普通電車に乗り、浜中駅に20時半に到着で

す。

 

 今年は、昨年のように海底トンネル内での信号トラブルもなく、エゾシカと衝突事故

もなく、順調に来られました。

 

 想定外の出来事は、唯一構内で弁当が買える南千歳駅であてにしていた弁当は売

り切れ、駅構内のコンビニは3月に閉店していて、結局次の乗り継ぎの釧路まで何も買

えなかったことです。

 

 夕方の6時半の釧路駅では弁当もおにぎりも店が閉まっていて、唯一あったのがパン

屋さんの残りわずかな菓子パンでした。お菓子やおにぎりをぱくつく育ち盛りの高校生

に混じって、電車の中で菓子パンを食べました。

 北海道を旅行するときは、食べるものの確保も大事です。

帰りに南千歳で買った弁当 これも最後の一つでした。

 

 浜中町には霧多布高校というのがありますが、途中の厚岸(あっけし)町には高校が

ないらしく、1時間かけて釧路まで通っている生徒さんがたくさんいました。

 浜中駅で降りたのは私一人だけ。駅の周りは人家が少しあるだけです。もちろん駅員

もいない駅です。

 

(つづく)

八幡平ハイキング その4

 2日目は、午後雨が降るとの予報でしたので、午前中は回れると思い、バスに乗って

頂上の停留場まで行きました。

 歩き始めはまだ薄日もさしていましたが、だんだん雲が厚くなり風も強くなってきま

した。

起き上がれていないアオモリトドマツ

 昨日と違って歩く人も少なくて、どんよりした山道です。周りを見渡すと今まで雪の

下にうずもれていた痛んだトドマツの下の方が見えてきています。

 前日、ガイドさんは、曲がった幹を触って

 「頑張って起き上がるんだよ。」

と話しかけていましたが、本当にしゃん‘伸びあがってほしいなと思いました。

 

ピンクのテープのついた竹竿

 この先の方で逆方向からやってきた管理員さんたちに会いました。雪の深さを調

べて竿を立てる位置を直したり、急な斜面になっているところは雪を切って階段状にし

たり、安全に歩けるよう点検整備して下さっていました。

 仕事とはいえ、悪天候の日もあり毎日の点検は大変だなと思います。

 

 頂上を通り過ぎたあたりから本当に風が強くなり、風よけになるものもないので吹き

飛ばされるかと思ってしまいました。

ムラサキヤシオとガマ沼

 前日は気づかなかったムラサキヤシオです。初めて見ました。紫といってもピンクに

近い色でとても愛らしい感じのツツジでした。

ショウジョウバカマ

 ムラサキヤシオとよく似た色の花でした。雪が解けるとすぐに湿原に彩を添えてくれ

ます。

色違いのショウジョウバカマ

 紫の方は、雄しべの葯の色が黒いのに、赤い方は、白いのです。まるでコーディネー

トされたみたいだなと感心しました。こちらは湿原ではなく、割と乾燥した山道の端に

すらっと伸びていました。

 同じ花でも背の高さ、花の色、葯の色、生える場所など、違いがあるんだなと

思いました。

 

 雨が降り始めたので、12時過ぎの下りのバスに乗り、宿まで帰ってきました。宿の

周りを歩いてみるといろいろ発見がありました。

山の斜面の残雪

 雪が大きな塊になってずいぶんと残っているのを見ました。ダケカンバが雪の重さで

折れ曲がっています。少しずつ雪が解けて周りの植物たちが目を覚まし始めています。

シナノキンバイ

オオバキスミレ

ツクシ

斜面に生えるミズバショウ

 黄色い花が咲いていました。車が通る脇なのにと驚いていると、スギナが生えている

のを見つけました。それなら近くにツクシも生えているだろうと思ってみたら、ありま

した。ここは、まだ平地の3月です。6月になってもう一度早春気分に浸ることができ

ました。

 

 斜面の上の方にある雪のかたまりから少しずつ水がしみだしているのでしょう。湿原

に咲くミズバショウが山の斜面にぽつぽつと出ているのを見つけ驚きました。水が豊富

だとこんな山の斜面にも育つんですね。

藤七温泉露天風呂

 バスの窓から藤七温泉の露天風呂が見えていたので、霧で入っている人も見えないの

で写真を撮りました。ここは、湯舟は木で囲われていますが、下は砂地というか土がそ

のままで、下からぼこぼこと温泉が湧き出ているのです。一応、女性用というのもある

のですが、ほとんどの浴槽は混浴なので、夜の一時間を除くと女性は湯あみ着をつけて

入っているようです。因みに私は、夜の時間だけで昼間は内風呂に入ったので混浴体験

はしていません。バスの窓からのぞけますが、だれなのかそんなところまではわかりま

せん。露天風呂というより野天風呂といった風情です。

藤七温泉前のバス停

イワカガミ

 霧で何も見えませんが、バス停の向こう側にはこのイワカガミが群生しています。バ

スを降りると、イワカガミに迎えられるのです。そんなバス停にお目にかかったことが

ないので、なんだかとても気分が上がりました。

 

 3日目、いよいよ下山です。

 下へ降りるバスは12時半までないので、10時にチェックアウトをしてから、スト

ーブのある部屋で2時間以上待ちました。待ちながら、棚の上に飾ってある造花を眺め

ては風情がないなと思っていたところ

 「この宿だけは、国立公園内に立っているので、自然の物は一切取ってはいけない

ことになっているのよ。」

と、一緒に待っていた方が教えて下さいました。

 私以外の3人の方は、ツアーのお客さんで近辺にあるほかの温泉のお客さんも含め観

光バスがチャーターされていて、私より1時間早く帰られました。

 

 12時半のバスは、八幡平の麓のホテルまでしか行かないのでそこからまた盛岡行の

バスに乗り継ぎます。このバスは往きのような特別なバスではなく普通の路線バスなの

で、学校帰りの小学生が大勢乗ってきたりもします。

 都会からすれば不便この上ないですが、公共交通機関を使った地方旅をするというこ

とは、この不便さを楽しむ余裕を持たなければならないなと思うようにしています。

 

 イワカガミ咲く特別なバス停からイワカガミに見送られてたった一人バスに乗り、

藤七温泉を後にしました。

 

 (八幡平の旅はこれで終わりです。ありがとうございました。)

八幡平ハイキング その3

 頂上から見えた八幡沼。この辺りの沼では一番大きな沼です。青空を映して美しく青

い水面でした。左側の岸に山小屋がありますが、そこで昼食休憩を取りました。

八幡沼

 雪渓が残っている下り道なので、めったに使わないストックを持って歩きましたが、

一度バランスを崩して転びました。

タケシマラン

 小屋のすぐそばには、タケシマランが生えているのをガイドさんが教えてくれまし

た。上から眺めると上にかぶさっている葉っぱに隠れていて小さな花が釣り下がってい

るのが見えません。一人で歩いていたら、きっと見逃しただろうと思います。かがんで

覗き込むようにして撮った写真です。(オオタケシマランかもしれません。)

イワナ

 初めて知った植物です。名前からするときっと梨のような実がつくのだろうなと想像

していましたが、調べるとやっぱり実は梨のような味がすると書いてあります。食べる

といってもほんの僅かでしょうが、食べられるのだそうです。

広い湿原

 小屋の裏手に回ると木道がついた道がありました。ようやく雪が解けたばかりの湿原

は、まだ枯草で覆われています。

ミズバショウ

 湿原の女王様と言われるミズバショウ

 関東ではもうとっくに終わっていますし、八幡平へ来る途中の標高800mくらいの

芭蕉沼といわれるところでも大きな葉ばかりが目立っていてこの白い苞は見られません

でした。北東北の1600m付近では真っ白な苞がまだ出たばかり、体を持ち上げるよ

うに咲くミズバショウは元気印です。

ヒナザクラ

 東北の高山帯のお姫様にふさわしいのは、ヒナザクラ。

 雪解けを待っていち早く花を咲かせます。水の中からつぼみと一緒に生え出している

姿を見ると、可憐ながら強さを宿した花だなと感心します。

 八幡平のパークボランティアのマスコットになっているそうです。

チングルマ

 木道ですれ違った人が、

 「木道わきにたった1本だけが咲いているから気を付けて見て。グループで歩いてい

ると見逃してしまうかもしれないから。」

 と教えてくださったのが、このチングルマ。秋田駒が岳ではムーミン谷一面に咲いて

いたチングルマのイメージからすると、たった1本と思いましたが、本当にこの1本だ

けしか見ることはありませんでした。(だいぶぼけてますが、写真もこれ1枚しかとっ

てませんでした、)

ワタスゲの花

 ボケた写真ついでに、こちらはこれからというよりこれが最後かもしれないという花

ワタスゲです。ワタスゲというと、白い綿毛の姿が浮かぶので花を見たのはこれが初

めてです。もう枯れかかった花なので、ちょっと茶色がかっていますが、きれいに咲い

ているのは薄黄緑色です。花が終わると白い綿毛のワタスゲが広がって初夏の湿原を彩

ります。

森の向こうに見えるのは岩手山

 この写真ではよくわかりませんが、この季節の八幡平の森は、常緑樹のアオモリトド

マツ(オオシラビソ)とシラカバの黄緑色の新緑がツートンで美しいです。

 盛岡市内から見る岩手山を表に見立てると、こちらは裏手に当たるので、裾野の広が

り方が反対に見えます。裏は、大変山肌が荒れていてぼこぼことしています。岩手山

火山だったのかと思いました。

アオモリトドマツの葉芽

 今日の締めは、ボランティアガイドの女性が

 「花じゃないけどかわいくて大好きなんです。」

とおっしゃっていたアオモリトドマツの葉芽です。この赤い芽が膨らんで、徐々に薄黄

緑の葉っぱを拡げるのでしょう。赤いものには力が秘められているような気がします。

 

(つづく)

八幡平ハイキング その2

 八幡平の頂上へガイドさんと歩きながら見つけた植物たちです。ガイドの女性は、1

週間に一度はボランティアガイドを引き受けているそうなので、どこに何が出てきてい

るのか承知しているので、個人では見つけられない植物をたくさん教えてくださり有難

く思いました。

 

ミツバオウレン

 このミツバオウレンは、私の宿の部屋の名前になっていた花で、今回しっかりと覚え

ました。

キヌガサソウ

 衣笠とは、帝や公家の行列にかざした絹張の長柄の傘のことだそうです。おもしろい

のは、周りを囲む葉の数と中の白い花弁がほぼ同数で開く日本固有種だそうです。この

花の場合は7枚ですが、8枚ずつというのもありました。

ベニバナイチゴ

まだつぼみのものも合わせると登山道の両脇にずいぶんとたくさん生えていました。

イチゴの実はクマの好物だそうで、子熊が夢中になって食べている間に親熊は子別れを

するとガイドさんが話されていました。

ハクサンチドリ

 まだ咲き始めで数は少ないのですが、咲きそろうとかなり壮観な感じがしました。中

には、白い花のもあるそうです。

シラネアオイ

 秋田駒ケ岳で群落になっているのを見たことがありましたが、花の開花期が割と短く

早い時期に咲き終わってしまうので、これで2回目です。歩いているときは、見つから

ず最後に駐車場の展望台わきに咲いているのを幸運にも見つけたのです。高山植物とし

ては花が大柄で華やかなので、人気の花です。

コミヤマカタバミ

 ガイドさんが、名前をど忘れしていたようなので、

「ミヤマカタバミに似ていますが」と私が話すと、

「コミヤマカタバミです。」と名前を思い出してくださいました。

 私が箱根の山中で見つけたのは、もっと花が大きかったけれども、これは花が小さい

のでコミヤマカタバミなのかと納得した花です。

サンカヨウ

これも秋田駒ケ岳で見たきりですが、二枚の葉の間から咲く白い花は雨に打たれるとそ

の水滴で透き通って見えるさまを愛でる方が多いです。名前の由来は、葉の形から蓮

(荷葉)に似ているというので、山の蓮「山荷葉(さんかよう)」になったそうです。

ムシカリ(別名オオカメノキ)

前回の小川村のブログにこの植物に似たケナシヤブデマリの写真を上げましたが、それ

とよく似たオオカメノキがここにありました。今が盛りで、アジサイに似た白い花をつ

けています。やはり名前の由来は、葉の形が亀の甲羅に似ているからということのよ

うです。天気が良かったので、下から見上げると青い空にとても映えました。

 

八幡平頂上
 

 途中雪渓が残っているところがあり滑らないように注意して歩いたり、植物の説明を

聞いたりしていたので本当は30分くらいで歩けるところなんでしょうが、小一時間か

かりました。

 展望台から北の方を見ると、左に「岩木山」、右に「八甲田山」が望めました。

 どちらの山も2年前の秋、青森を旅したときの記憶と重なりなんだかとっても懐か

しい気がしました。

岩木山

八甲田山

 (つづく)