再び北海道浜中へ3 オオジシギ編

 3日目は、お天気が良さそうなので、霧多布岬へ行くことにして

いつものように新川十字路まで送ってもらい、バスで「ゆうゆ」へ向かう。

新川十字路

 バス停から霧多布岬方面へ行くには水色の鉄橋を渡り丘へ上って行く。

 丘の上の2つ建物のうち、右側は浜中町役場、左側のやや尖った屋根が真ん中にある

のが「ゆうゆ」だ。

 

 バスを待っているときに次ごう2度薄茶の動物が車道を横切るのを見た。一度目は猫

かなと思ったが、2度目は、きつね色でしっぽが結構りっぱなのでキタキツネのような

気がした。

 浜中町は、タンチョウヅルもエゾシカもキタキツネも湿原に出入りする。自然と人間

の関係がかなり近いところだと改めて思った。

丘の上からの眺め

 ゆうゆの建物の裏から下を見た。新川十字路から渡ってきた水色の鉄橋も見えるし、

右の端には泊まった民宿も見える。町の北側は小高い森になっていてクマも出没するら

しい。手前の低地のほとんどは湿原で、住宅はそれを埋め立てて造られたものだろう。

 

 久しぶりの青空と白い雲。晴れただけで気持ちが爽快だ。去年は岬へ行くのに道を間

違えて大回りをしたが、今年は、大丈夫。岬への道をひたすらまっすぐに歩く。

○○シギ

 空気は冷たいが陽の光を浴びて歩くと汗ばんでくる。

 さえぎるもののない道の反対側の杭の上で鳥がさえずっているのに出逢った。

 大きさはちょうどハトよりちょっと小さめ。

 

 パッと見たところくちばしが長い。タシギの仲間だろうということまではわか

ったが、名前がわからない。

 それでもそこで立ち止まってしばらくその声に耳を傾ける。

 囀っているときは、「ジープ ジープ ジープ 」といった調子で鳴き、最後にグチ

ョピチュグチョグチョと複雑な鳴き声でさえずりを閉める。今まで聞いたことがないユ

ニークな鳴き方だ。何回か同じことを繰り返し、こちら側の草むらに飛び込むようにし

て消えた。

オオジシギ

 道東に毎年渡ってくるシギにオオジシギというのがいると書いてあるものを見たこと

があったので、そうかなと思ったがよくわからない。

 

 ところが、運よくその日の夕飯時に食堂の隣の席に座った方が野鳥の専門家だと伺

い、渡りに船とばかりにこの写真を見てもらい名前を教えてもらうことができた。

 「オオジシギです。」と 即答を得た。

 

 専門家なので名前のほかにもオオジシギのことをいろいろ教えてもらえた。

 

 この鳥は、名前から単純に推察して、王子様のシギという意味なのかと思ってしまっ

たのだが、ジシギの仲間の中では大きい方なので「オオジシギ」という名前がついたの

だとか。

 

 日本で見られるほかのシギは、もっと北のシベリア方面まで北上して繁殖するので、

日本はそのシギたちの中継地に過ぎないが、このオオジシギは唯一日本国内で繁殖す

る希少なシギだ。

 繁殖地ではディスプレイ(メスにアピールする)のために空高く舞い上がり、あたり

を旋回してから急に降下する。その時に尾羽を震わせて轟音を出すので別名カミナリシ

と呼ばれているということも面白いと思った。

 地味な鳥なのにかなり強烈なディスプレイなのでぜひその雷音を聞いてみたいと

興味津々である。

 

 北海道やサハリンで繁殖して、9月になるとオーストラリア東部やタスマニア島を目

指して飛んでいくといわれている。

 数が減っている絶滅危惧種になっているので、オーストラリアと日本の研究者の間

で鳥に発信機を装着して具体的にどういう経路を通って渡り、到着地はどこなのかなど

解明を進めているそうだ

 

 2016年の発信機を付けた調査では、太平洋上を途中休まずに7日間でまっすぐに

パプアニューギニア島まで飛行したという記録が取れているそうだ。その距離、約60

00キロを一気に飛ぶという信じられないパワーがあの小さな鳥のどこに秘められてい

るのか、とにかく驚いた。

 

 オオジシギに捕まってしまったので、この先の霧多布岬は次回にします。

  (つづく)

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