前回のブログの続きです。
灯台のちょっと手前から海霧が流れてきた。霧が出てきたときに、白一色では存在
が消えてしまうので、この辺りの灯台には赤い色が使われていることが多い。
去年は、道に迷って時間が計れなかったので、この灯台のところまできて折り返した
が、今回は自分の足でどれくらいかかるか分かったので、この先まで進む。
名前の通り、霧がたっぷりの岬である。本当の名前は、「湯沸岬(とうふつ岬)」
(アイヌの言葉で、ト・プッ 沼や海の入口を意味する)だが、近頃では町の名前が霧
多布町なので、きりたっぷ岬と呼ばれるようになったようだ。
まだ突端まで続く道があるので、期待しながら前へと進む。
右も左も断崖の斜面は、オレンジ色のエゾカンゾウが花開き、海の青、草原の緑を従
えて岬を輝かせてくれている。
ニッコウキスゲは、標高の高いところにしか存在しない植物だと思っていたが、数年
前に南三陸町と石巻市の境にある神割埼(かみわりざき)に行ったときに、ニッコウキ
スゲが咲いていたので条件さえ合えば海でも咲くんだと驚いたことがあった。
海からの冷たい風のことを「山背」と呼ぶが、東北や北海道の太平洋側で「山背」が
吹くところでは昔からコメを作るのに苦労したのもうなづける。
これ以上は、柵ができていて前へ行くことはできない。もう少し先にも小島が見える
のだが、押し寄せる霧でこれ以上は見えない。何ともロマンを感じさせる岬だ。
途中の道で大きな望遠レンズのカメラを持っていた人が通ったので、
「ラッコはいましたか?」
と、聞いたところ、
「いましたよ。」
と、返ってきたので期待していたのだが、だいぶ離れた霧でかすむ海の真ん中あたりだ
というので、肉眼でも双眼鏡でも見ることは叶わなかった。
ここを訪ねる目的の一つがラッコを見ることなので、今年はとても残念で仕方ない。
( 昨年は、灯台よりも手前の左側の断崖の下あたりにいたので、肉眼でもお母さんと子どもラッコが見えたのだ。)
だんだん海霧は深くなり、とうとう灯台も姿が消えてしまった。きりたっぷ岬に別れ
を告げるにはにはぴったりかもしれない。
帰る道で写した植物たちを紹介。
(何回も出てくるので、新鮮味はないが)今年はエゾカンゾウの当たり年のようで
数が多い。本当に生まれたての花は美しい。一日花だけれどもたくさんのつぼみがある
のでしばらくは楽しめる。
名前がわからない。アゼチの岬ではあまり見かけなかったがこの辺りではずいぶんた
くさん見ることができた。この花も今が盛りだ。
霧多布で初めて撮れた。都会でも見かけるヒメオドリコソウは明治時代に帰化した外
来種でどこにでも生える草として扱われるが、オドリコソウは若い葉は食用になり、根
や茎は薬用になる有用なもので、北海道では結構ポピュラーな植物のようだ。
飛んでいる野鳥は撮れないが、停まっている野鳥なら私にも撮れる。きっ
と私を待ってくれていたのだろう。
ノビタキのオスだ。写真を撮ってからよく見ると口に虫を銜えていたようだ。
まもなくもう一羽茶色の鳥が停まった。ノビタキのオスのそばに寄っていくし、ノビ
タキのオスも意地悪をしないので、たぶんノビタキのメスなのかなと思っていたが、宿
でオオジシギのついでにこの写真も見せて聞いたところノビタキの幼鳥だとのこと。
教えてもらったからだと思うが、写真をゆっくりと見るとくちばしのところが黄色い
し何となく幼い感じが伝わってくる。
アゼチの岬に行く途中には、乳牛が放牧されていたが、霧多布の方には次ごう4頭の
馬が放牧されていた。
どこかお腹がでっぷりしていて短足、力がありそうな馬だ。名前がわからないので、
ドサンコとしておく。
馬も日がな一日この草原の草を食む。けれども馬は、毒がありそうな草は食べない。
よく草地にヒオウギアヤメが残っているのは、アヤメには猛毒があるかららしい。
(つづく)