気仙沼4 大島編 

 この日は木曜日、薄曇りで時折日が差す天気でした。

 みちびき地蔵を後にして、そのまま南端にある龍舞崎を目指して歩いて行きます。

 振り返ると、昨晩宿からマイクロバスで登った「亀山」が見えました。大島で一番高

い山です。この辺りから道が上りとなって、峠を越えると今度は下り、次の浜へ出まし

た。

 「小田(こだ)の浜」です。ちょうど前に小さな島があるので波が穏やかでとても人

気の海水浴場らしいです。ちょっと離れたところに何件か民宿が建っていますから、海

水浴シーズンには、たくさんのお客さんが来るのだろうと思いました。トイレやシャワ

ー室の新しいのもできていました。トイレをお借りしましたが、ちゃんとシャワートイ

レで、昔の海水浴場では考えられないような快適さでびっくりしました。

 浜の様子はそっちのけで、私が撮っていたのは、かなり離れたところにいたカモで

す。遠いので、名前がわかりません。普通は、繁殖のために北へ帰っているはずなの

に、今頃何をしているのでしょう。一羽で漁港の方へ向かって泳いでいきました。

 道中、それぞれが心に残したいことをとどめようと写真を撮っていましたが、これは

ブタナと呼ばれる草がちょっとした群落を作っている人の庭です。

 

 畑の近くを通ると農作業をしている女性が手を休めて汗をふきふき、私たちの方へ近

づいて、「どこへ行くの。」と聞いてきます。平日の昼間、車もめったに通らないし人

の歩く姿も見えません。リュックを背負った年取った女性が4人何をしているんだろう

と思ったのだと思います。 

 人の家の庭先を通るときに、手入れの行き届いた花が咲いていると、こちらも思わず

「きれいに咲いてますね。」と声が出ます。すると、「見て行ってよ。」と誘ってくだ

さる方もいます。

 そんなやり取りをしながら、岬へ通じるバスの終点に到着です。

 

 

 バス停から遊歩道に入りますが、ちょっとしたアップダウンがある道です。天気がい

まいちでしたので、海が青く見えなかったのは残念ですが、新緑の緑が美しかったで

す。

 

 灯台の名前は、「陸前大島灯台」というのが正式らしいですが、ここが龍舞崎(た

つまいざき)という場所なので、ふつうは、龍舞崎灯台と呼ばれているようです。

 

 灯台のそばから見える岩がこの岬の最南端。波が荒いとこの辺りの岩に打ち付けられ

た波がまるで龍が舞い上がるように見えるということで、この名前が付けられたという

ことです。津波がやってきたときは、どうだったのだろうかと思いました。

 

 西側に回って対岸に目を移すと、白い灯台が見えます。たぶん「岩井崎灯台」だろう

と見当をつけましたが、その通りでした。翌日行く予定になっている「気仙沼震災遺

構」があるのは、岩井崎のちょっと右側です。

 一周して戻ってくると、ここにも咲いていました。ニッコウキスゲです。オレンジ色

の花を見ると、ぽっと気持ちが明るくなるから不思議です。この時期本当に有難い花で

す。

 結局一周する間、だれとも会うこともありませんでした。土、日などは、駐車場も広

く取ってあるしたくさんの人が見えるのでしょうが、平日は、閑古鳥しか鳴いていない

ので、一軒だけある食堂も閉まっていて、あるのは自動販売機のみ。

 

 昼ご飯を食べてないので、バスで浦の浜まで行こうと思っていましたが、バスが来る

のはもうしばらく時間がかかるというので、少し先へ進んで、道端の縁石に座っていま

した。すると、見覚えのあるマイクロバスが停まってくれるではないですか。

 「休暇村のバスだ!」

 

 運転席から降りてきたのは、今朝散歩の案内をしてくれたお兄さんでした。

 「今から気仙沼駅にお客さんを迎えに行くのですが、乗って行きますか。」

との嬉しい声かけ。有難く浦の浜まで、乗せてもらい下車して折り返しでこちらにくる

ので、また拾ってくれることになりました。

 

 こういう不便なところに来ると、人の親切が身に沁みます。バスのお迎えを待ってい

る間、サンドウィッチなど思い思いのものを注文して待っていたのですが、結局時間が

なくてテイクアウトにしてもらいました。

 2時過ぎの遅い昼食でしたが、なんとか昼食にありつくことはできました。

 私は、ゆずデザートセットを頼んだので、ゆずソース入りソフトクリームとゆずシフ

ォンケーキにゆず紅茶。ゆずづくしは美味しかったです。(大島は、ゆず栽培の北限と

聞いていたので、注文しましたが、北限は、もっと北へ移ったようです。)

(続きます)